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退職して収入ゼロに→「保険料も安くなる」はずが…突然、国保から高額請求が。多くの人が陥る“申告の盲点”【1級FPが解説】

  • 2026.9.4
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

退職後に無収入になったにもかかわらず、届いた国民健康保険(国保)の保険料が高額で驚いた、という経験はありませんか?

「仕事も辞めて収入がないのだから、保険料も安くなるはず」。そう考えていた人にとって、突然届く高額な請求書は大きな負担であり、深い疑問を抱かせるものです。

なぜ、現在の収入がゼロなのに高額な保険料を支払わなければならないのでしょうか。その裏には、国保の保険料が計算される仕組みと、多くの人が陥りがちな「申告」に関する盲点がありました。

そこで今回は、国保の保険料が高くなってしまう原因と、知っておくべき負担軽減の手続きについて、1級ファイナンシャル・プランニング技能士の中川佳人さんに分かりやすく解説していただきます。

なぜ無収入なのに高額?国保の保険料が決まる「タイムラグ」の仕組み

---退職して無収入になったのに、国保の保険料が高額になってしまうのはなぜでしょうか?何か特別な理由があるのですか?

中川 佳人さん:

「退職・育休後に無収入となったにもかかわらず国保の保険料が高額になってしまうのは、国保の保険料が『今の収入』ではなく『前年の所得』をもとに計算される仕組みだからです。

国保の保険料は、主に前年1月〜12月の所得に応じて決まる「所得割」と、加入者の人数に応じてかかる「均等割」などで構成されます。保険料の年度は毎年4月に切り替わりますが、そのとき使われるのはあくまで前年の所得です。つまり退職時期によっては、退職した年の翌年度まで在職中の所得が保険料に反映されるため、現在の収入がゼロでも高額な請求が届く、というタイムラグが生じます。

なお育児休業中の会社員の方は、勤務先の健康保険に加入したまま、勤務先を通じた申出により保険料が免除されるため、国保のこの問題は直接は起きません。高額請求に直面しやすいのは、退職して会社の健康保険を抜け、国保に切り替えた方です。

もう一つ重要なのが所得申告の有無です。国保には所得が少ない世帯向けに保険料を自動的に軽減する仕組みがありますが、その判定は市区町村が把握している所得情報がもとになります。申告がなく所得が不明の状態だと、本来受けられる軽減がされず、割高な保険料のままになってしまいます。

「収入ゼロだから申告不要」は間違い?未申告がもたらす思わぬリスク

---「現在の収入がゼロなら所得の申告をしなくてもいいのでは」と思いがちですが、なぜ申告をしないと割高になってしまうのでしょうか?

中川 佳人さん:

「『収入がゼロだから申告は不要』と考えてしまうと、国保では思わぬ負担につながることがあります。未申告のままだと、所得が『ゼロ』ではなく『不明』として扱われ、保険料を軽減する仕組みの対象から外れてしまう可能性があるためです。

国保には、世帯の前年所得が一定以下の場合に、均等割などを7割・5割・2割軽減する制度があります。原則として申請は不要で自動的に適用されますが、判定には世帯全員の所得情報が必要です。市区町村が未申告の方の所得を確認できない場合、世帯に所得不明の方がいることで軽減を受けられないことがあります。たとえば2026年度(令和8年度)の基準では、世帯の前年所得合計が43万円以下であれば均等割が7割軽減されます(世帯に給与所得者等が複数いる場合は基準額が上がります)。収入がゼロで世帯全体の所得も基準以下という方は、本来であれば最大幅の軽減に該当するにもかかわらず、申告していないことで満額に近い保険料が請求されることもあるのです。

さらに、所得の申告がないと非課税証明書などを発行できない場合があり、医療費が高額になった際の高額療養費で自己負担上限が高い区分として扱われる可能性があります。そのほか、各種給付や保育料などの判定に影響することもあるのです。

会社で年末調整を受けていた方や、退職後に確定申告をした方などは、改めて住民税の申告が不要な場合があります。一方、いずれにも該当しない場合は、収入がなくても住民税の申告や、自治体によっては国保の所得申告を行っておくことが大切です。」

負担を減らすために今すぐできる対策とは?窓口で使える2つの制度

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

---実際に国保の保険料が高くて困っている場合、私たちは明日から具体的にどのような行動をとればよいのでしょうか?

中川 佳人さん:

「最も効果的な最初の一歩は、離職や出産の状況が分かる書類を持って市区町村の国保窓口へ行き、『保険料の軽減や免除に該当するか確認してください』と伝えることです。国保の軽減・免除には届出が必要なものが多く、窓口で該当確認を求めることで、使える制度をまとめて確認しやすくなります。

特に効果が大きいのが、倒産・解雇・雇止めなど会社都合等で離職した方向けの「非自発的失業者の軽減」です。ハローワークで発行される雇用保険受給資格者証(または雇用保険受給資格通知)の離職理由コードが11・12・21・22・23・31・32・33・34のいずれかで、離職時に65歳未満の方が対象です。届け出ると、前年の給与所得を100分の30に圧縮して保険料を計算し直してもらえ、対象期間は離職日の翌日の属する月から翌年度末までと長期に及びます。受給資格者証などの書類を持参してください。

また出産される方には、産前産後期間の保険料免除があります。単胎で4か月分、双子以上なら6か月分の所得割・均等割が免除され、出産予定日の6か月前から届出できます。

あわせて、収入がない場合の住民税の申告(または国保の所得申告)が必要かどうかも、その場で確認しておくとスムーズです。制度の名称や様式は自治体により多少異なるため、お住まいの市区町村の案内に沿ってご確認ください。」

無収入のときこそ国保の手続きを!まずは窓口で確認しよう

国保の保険料は「今の収入」ではなく「前年の所得」で決まる仕組みだからこそ、退職等で無収入になったときに大きな負担となってしまいます。

しかし、収入がないからと放置せず、住民税や国保の所得申告を適切に行うことで、自動的な保険料軽減が受けられるようになります。さらに「非自発的失業者の軽減」や「産前産後期間の免除」といった制度を正しく申請すれば、保険料負担を大幅に抑えることが可能です。

「無収入だから関係ない」と思わずに、まずは離職や出産がわかる書類を持って、市区町村の国保窓口で相談してみましょう。


監修者:中川 佳人
金融機関勤務の現役マネージャー。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。20年にわたり、資産形成や家計管理・住宅ローンなどの実務に携わってきた経験を活かし、記事の監修や執筆を行っている。専門的な内容を、誰にでもわかりやすく伝えることをモットーとしている。

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