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「急いでるんで」バス待ちの列に割り込んだ男性。だが、運転手が静かに伝えた言葉

  • 2026.9.1

「あの……みんな並んでいるんですけど」

平日の朝、いつものバス停でバスを待っていました。

二十人近くいたと思います。

毎朝ほとんど同じ時間に集まる人たちですが、特に会話をするわけではありません。それでも、来た順に並んでバスを待つ。それが自然な流れになっていました。

ところが、バスが見えてきたときでした。

列の横に立っていた男性が、腕時計をちらちら見ながら前へ進み、そのまま先頭に入ったのです。

「え……」

後ろのほうから、小さな声が聞こえました。

先頭にいた女性も戸惑ったようでしたが、少し迷ってから男性に声をかけました。

「あの……すみません。みんな、ここに並んでいるんですけど」

男性は一度だけ女性のほうを見ました。

「急いでるんで」

それだけ言うと、扉が開くなり先にバスへ乗り込んでしまいました。

女性はそれ以上何も言いませんでした。私も、周りにいた人たちも黙ったままです。

もちろん納得したわけではありません。ただ、朝から知らない人ともめるのも怖くて、誰も次の言葉を出せなかったのだと思います。

運転手が、男性を見ていた

ところが、同じようなことはその後も何度かありました。

そして次の週のある朝。バスが停留所へ入ってきたとき、またその男性が列の横から前へ出ようとしました。

その日は、ちょうど運転席からその様子が見えていたようです。

扉が開く前に、運転手が車内マイクを使わず、窓越しにこちらへ声をかけました。

「おはようございます。すみません、列にお並びのお客様から順番にお願いしますね」

強い言い方ではありませんでした。

それでも、前へ出ようとしていた男性は一瞬足を止めました。

周囲を見回したあと、「……はい」と小さく答え、そのまま列の後ろへ歩いていきました。

運転手はそれを確認すると、

「ありがとうございます。お待たせしました」

と言って扉を開けました。

その朝は、みんながいつも通りの順番でバスに乗りました。

「これなら、誰も言わなくて済むね」

数日後、バス停の柱に白い案内が貼られていました。

「乗車は列の順にお願いします」

書かれていたのは、それだけです。

それを見た後ろの男性が、少し笑いながら言いました。

「ああ、これなら分かりやすいね。いちいち誰かが言わなくても済むし」

私も、心の中で同じことを思いました。

最初に声をかけた女性は、きっとかなり勇気が必要だったはずです。それでも、一人で知らない相手に注意し続けるのは簡単なことではありません。

誰かが我慢して注意するのではなく、みんなが分かる形でルールを示す。

それから、そのバス停では朝になると、以前と同じように自然と一列ができるようになりました。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた40代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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