1. トップ
  2. エピソード
  3. 「もう一回。次は絶対勝つから」正月の花札で負け続けてムキになった私。だが、祖母が教えてくれた大切なこと

「もう一回。次は絶対勝つから」正月の花札で負け続けてムキになった私。だが、祖母が教えてくれた大切なこと

  • 2026.8.30
「もう一回。次は絶対勝つから」正月の花札で負け続けてムキになった私。だが、祖母が教えてくれた大切なこと

我が家の正月は、羽根つきでもカルタでもなかった

子どものころ、お正月は必ず母方の祖父母の家に集まっていました。

親戚が十人ほど集まり、毎年恒例の花札をします。

羽根つきでもカルタでもなく、我が家の正月といえば花札でした。

なかでも祖母は勝負ごとが大好きでした。札の並べ方も役の数え方も、私は祖母から教わりました。

ただ、子どもたちには点数を数えるのが少し難しかったので、祖母が用意してくれたのが、小さなおはじきでした。

勝ったら相手から一つもらう。負けたら一つ渡す。

赤や青のおはじきを小皿に入れて、誰が一番たくさん残せるかを競うのです。

子どもの私は、それが楽しくて仕方ありませんでした。

ところが、ある年の正月。私は朝から何度も負け続けていました。

最初は笑っていたのに、小皿のおはじきが減ってくると、だんだん悔しくなってきます。

「もう一回。次は絶対勝つから」

負けるたびにそう言って、私は札を配り直していました。

また負けると、今度は思わず声が大きくなりました。

「もう一回やる!」

すると、こたつの向こうに座っていた祖母が私を見ました。

祖母は笑わず、私の小皿を見た

祖母は怒るでもなく、私の小皿に残ったおはじきを見ながら言いました。

「ずいぶん熱くなってるねえ」

「だって、ずっと負けてるんだもん」

私がむっとして答えると、祖母は少し笑いました。

「悔しいよね。そりゃ、負けたら悔しいよ」

てっきり「もうやめなさい」と言われると思っていたので、私は黙って祖母の顔を見ました。

すると祖母は、自分の札をそろえながら続けました。

「でもね、負けたからって『次こそ、次こそ』ってムキになると、余計に周りが見えなくなるんだよ」

「じゃあ、どうするの?」

「今日はだめだなって思ったら、一回やめるの」

祖母はそう言って、私の小皿を指さしました。

「まだおはじき、残ってるでしょう。それで十分」

私は納得できないまま、残っていたおはじきを数えました。

すると隣にいた親戚が笑いながら言いました。

「ばあちゃん、自分が勝ってるから余裕なんじゃない?」

祖母はすぐに、その人のほうを向きました。

「何言ってるの。私だってさっき三回続けて負けたよ」

その言い方がおかしくて、こたつの周りに笑いが広がりました。

私も少しだけ気持ちがほどけて、「じゃあ、お菓子食べてからもう一回やる」と席を立ちました。

祖母は「それくらいがちょうどいいよ」と笑っていました。

祖母は九十代まで、正月になるとこたつの向こうに座っていました。

最後のほうは札が見えにくくなり、私が札を確認することも増えました。

花札の勝ち方は、結局あまり覚えていません。

それでも、何かが思いどおりにならず、「もう一回やれば取り返せる」と熱くなったとき、祖母の言葉をふと思い出します。

「今日はだめだなって思ったら、一回やめるの」

正月になると、今でもあのこたつと、小皿の中でおはじきが触れ合う音を思い出します。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ