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「人生観覧車」の頂点を過ぎたら。40代からの「不安」の正体を精神科医Tomy先生が解説

  • 2026.8.31

何かあったわけでもないのに、心が晴れずに気持ちが重くモヤモヤする。考えるほどに深みにハマり鬱々としてしまう「不安感」の正体を、精神科医Tomy先生が説き明かす。

話を伺った人...
トミー(TOMY)
: 精神保健指定医、日本精神神経学会認定専門医。1978年生まれ、名古屋大学医学部卒業。生きづらい人に寄り添うSNSのメッセージが人気で、Xのフォロワーは39万人超え。最新刊『人生迷子 立ち止まったときの処方箋』(ワニブックス) など著書多数。

見えない「不安」のメカニズム

xijian / Getty Images

昔はアップダウンはありつつも毎日が楽しいと思えたのに、いつからか心のモヤモヤが晴れず、隙あらば「不安」が忍び込む。そんな「不安」のメカニズムについて、精神科医Tomy先生が解説。

「具体的なデータはありませんが、20代より成熟世代、男性より女性のほうがクリニックを受診する人は多いようです。その背景にはいくつかの理由が。まずは体力的な衰え。これは性別にかかわらず自信喪失の大きな要因になるでしょう。そして、女性は更年期という明らかなホルモンの変化もあります。じわじわ下がる男性と違い、女性はホルモン分泌が急降下するので、倦怠感やホットフラッシュなどの体調不良、自律神経が乱れメンタル不調も大きくなる。そこに重なるのが、子育て、介護、責任ある仕事のストレス。ライフステージに伴うマインドの変化は、多かれ少なかれ誰にも起こる現象といえます」

季節や環境も関係? 不安を感じやすくなるタイミングとは

絶好調ではなくなるフィジカルは心の陰りの入り口に。さらに環境的な要素もあるという。「新しい環境に適応しようとがんばり疲労が一気に出る5月、季節の変わり目、急に暑くなる時季、夏から秋に変わり日が短くなるタイミングも気分が不安定になりがちです」。

そして、こんな属性も。「忙しくてもやることがいっぱい!という場合は不安を感じる隙もないのですが、“頭がお暇”で自分を振り返る時間がたっぷりある人は余計なことまで考えて今後の不安を感じやすい傾向が。孤独な人も同様。社会的なつながりは不安を軽減してくれるもの。一人で憂鬱を抱え込むと抜け出すのが難しくなります」。

それらは後天的な要素だが、一方で、遺伝的に物事に過敏に反応し不安を感じやすい人もいる。「不安や落ち込みは誰にでもあるものですが、意欲がない、眠れない、仕事に行けない、休日も元気が出ないなどの症状が2週間以上続くようなら、うつ病や不安障害など神経疾患の可能性があるので、安心するためにも早めに専門医を受診して」

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受診のボーダーラインは?

□ 日常生活に支障をきたしている

不眠や食欲減退はもちろん、不安すぎて遅刻、仕事に戻れないなど日常生活に困難がある。

□ 夜は、晩酌をしないと眠れない

お酒の力を借りないと眠れない生活が続くと酒量が増えてアルコール依存のリスクあり。

□ 食事量が急に減った、または増えた

食事量の急激な変化、それに伴う急な体重の増減に心当たりがあれば受診を。

□ 受診すべきか自分で判断できない

迷っているなら、自己判断より専門家を頼る。大丈夫と言われて安心することが特効薬に。

ゆらぐ大人の現在地と向き合う

これまで生きてきた人生より、この先の人生のほうが短く感じる世代は、心がざわつき、気持ちがグレイッシュに傾きやすい。自分の現在地を把握すると、ゆらぎの輪郭がくっきり見える。

“観覧車”の頂点から見える人生後半の景色

Alberto Menendez Cervero / Getty Images

毎日がキラキラして、希望に満ちていた20代。仕事にプライベートに忙しく疲れてはいても、まだ人生に貪欲だった30代。ところが40代も半ばを過ぎると、特に何かあったわけでもないのに毎日が曇りガラスのようになる。それはある意味、自然なことだとTomy先生は説明。

「人生の折り返しである40代後半は、残り時間をカウントし始めるタイミング。私はこれを“人生観覧車理論”と名付けたのですが、上がっているときは今より高い景色が見える。肉体的にも能力的にも、がんばれば明日の自分のほうが上手にできると思える年代です。でも観覧車がトップに達した40代からは、今より低い景色しか見えません。今がピークであとは下がるだけ、残り時間も見えてくる。“がんばればできる”から“できることが減ってくる”に意識が変わり、“いつまでこれができるんだろう”と、虚しくなったり、意欲を失ったり」。不安が増大する人生の下り坂。ではどう考えたらいいのか?「若いときと同じようにやろうと思うからしんどいんです。がんばれないのを逆手にとり、できないことに執着せず、できることにフォーカスを」

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大人をゆさぶる3つの不安

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ミッドライフ・クライシスと「自分軸」

第二の思春期とも呼ばれる40〜50代のミッドライフ・クライシス。「一生懸命走り続けてふと立ち止まったときに、他人と比べて自分がダメだと思ったり、将来に不安を覚えたり。人生観覧車の頂点を過ぎたタイミング。心身の老いを自覚する年代です」。さらにダブルパンチなのがライフステージの変化だ。妊娠・出産の可能性が減り、転職や独立の最後のチャンス。親の介護が現実的になり、子どもは自立。「抱えるもの、やるべきことが多いのに、体力に自信がない。特に女性にとって子どもが自分から離れていくときの喪失感は大きいようです。そこに更年期も重なるので、コントロール不能な状態に」

ここで大切なのが、自分軸を取り戻すこと。「人に嫌われたくない、いい評価を受けたい、不機嫌にさせたくない。それを優先し、やりたいことは我慢して、やりたくないことを渋々やる。これが他人軸。でも残りの人生は、自分で納得して行動を選択する“自分軸”で生きるべき。結果、人生を自分に最適化でき、いろいろなことが幸せな方向に動く。子育てが終わると自分軸に移行しやすいはず」。実は50代を過ぎると、また幸福感が上がる、というデータも。「すべてにおいて執着が減り、いい意味で諦めがつく。誰もがいつかは老化するわけだし、動けるうちに楽しもう、と考えられる。そもそも若いからといって明日が幸せである保証なんてない。年齢にかかわらず今しかないのです」。不安を消そうと必死になるより、全力で今日を楽しもう。

From Harper's BAZAAR September 2026

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