1. トップ
  2. 住まい
  3. 撤去と新設で「計約90万円」の出費に…実家のブロック塀を放置した30代女性が直面した“恐ろしいリスク”【一級建築士は見た】

撤去と新設で「計約90万円」の出費に…実家のブロック塀を放置した30代女性が直面した“恐ろしいリスク”【一級建築士は見た】

  • 2026.9.21
undefined
出典:photoAC(※画像はイメージです)

「実家の塀に、ひびが入っていて…。前に帰ったときは気づかなかったのに、道路側に傾いて見えたんです」

そう話すのは、車で1時間のところにある実家に帰省したRさん(30代女性、夫と子ども1人の3人暮らし)です。

実家は、両親が約40年前に建てた一戸建て(築40年・4LDK・延床約99㎡/土地約200㎡)。父は数年前に亡くなり、いまは母が一人で暮らしています。

帰省した日、Rさんが家の前に車を止めて塀を見ると、道路沿いのブロック塀(高さ約1.8m・長さ約15m)に横向きのひびが走り、上のほうがわずかに道路側へ傾いていました。母に伝えると、「40年倒れていないから」と気にしていない様子です。2018年の大阪北部地震のあと、市からブロック塀の点検のお知らせが届いていましたが、母はそのままにしていました。

倒れた塀の責任は、持ち主に

ブロック塀には建築基準法の決まりがあり、国土交通省が点検のチェックポイントを示しています。

まず、高さは2.2m以下であること。厚さは10cm以上で、高さが2mを超える場合は15cm以上あること。高さが1.2mを超える塀には、3.4m以下の間隔で控え壁(塀を横から支える突き出し部分)があること。塀の下にコンクリートの基礎があること。傾きやひび割れがないこと。そして、内部に鉄筋が入っていることです。

古い塀には、控え壁や鉄筋が足りないものが少なくありません。倒れて通行人にけがをさせれば、持ち主の責任が問われることがあります。民法第717条は、塀のような工作物の設置や保存に欠陥があって他人に損害を与えたとき、占有者や所有者が賠償責任を負うと定めています。

とくに道路沿いの塀は、倒れたときの被害者が家族ではなく、通行人など第三者になる可能性が高いのです。

夏の雨と、40年の重み

実家の塀は高さ1.8mで控え壁がなく、根元の土が夏の豪雨で流れて、傾きが進んでいました。ひびから入る雨水は内部の鉄筋をさびさせ、さびは膨らんでひびをさらに広げます。

母の言う「40年倒れていない」は、これから倒れない理由にはなりません。秋の台風シーズンの前は、塀を見直す最後の機会でもあります。

撤去して、軽いフェンスに

Rさんはまず、市の窓口で補助制度を確かめました。撤去費の補助は自治体によって有無も上限額も異なります。実家がある自治体の制度では、撤去費の半額(上限20万円)が補助され、工事前の申請が条件でした。

次に業者の点検結果を母と一緒に聞くと、控え壁がなく鉄筋も足りず、補強より撤去が妥当との判断でした。倒れたときの責任の話を聞いて、母も納得しました。

古い塀は全て撤去し、新しくブロックを2段積んで、その上をアルミのフェンスに。撤去費用の約30万円と新設費用の約60万円、計約90万円から補助金を引いた金額は、年金暮らしの母には負担が大きいため、Rさんが半分を出しています。

実家の塀は、帰省の目で

塀は40年、家と庭を守ってきました。基準を満たす塀は残せますし、撤去や改修に補助のある自治体もあります。一方で、倒れたときに被害に遭うのが通行人だからこそ、親の「大丈夫」を子の目で確かめることが欠かせません。

・高さ2.2m以下か、控え壁と基礎はあるか、傾きやひびはないか。国交省のチェックポイントで確認する
・倒れれば持ち主の責任(民法第717条)。道路沿いの塀は、被害者が通行人など第三者になりやすい
・撤去や改修の補助は自治体で有無や上限額が異なる。工事の前に市区町村の窓口へ
・押したり登ったりせず、点検は業者に頼む。すぐ直せないなら注意の表示を出す

シルバーウィークに帰省する方もいるでしょう。帰省して車を降りたら、玄関より先に塀を一度見てみてください。

参考:
補強コンクリートブロック塀等の点検について(さいたま市)
コンクリートブロック塀等の安全点検について(千葉県)


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
行政で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している


【エピソード募集】日常のちょっとした体験、TRILLでシェアしませんか?【2分で完了・匿名】

の記事をもっとみる

注目コンテンツ