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「もったいないか今回は使う」長年無事故だった60代女性→縁石に接触し10万円の損害も…待ち受けていた“思わぬ誤算”

  • 2026.9.27
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

「長いこと保険料を納めてきたのに、一度も保険を使っていないんです。もったいないから、今回は使ってみようと思って」

自動車保険は事故に遭わなければ、使う機会はほとんどありません。何年も保険料を払い続け、一度も使わないまま更新を重ねていると、「せっかくなら一度くらい」と感じる方も少なくないのではないでしょうか。

以前、損害保険会社で事故対応を担当していた私が受け持ったAさん(60代・女性)も、そう話していました。

ところが契約を確認すると、そこにはAさん自身が過去に選んだ、ある設定が記載されていました。これは車両保険の免責金額が何を意味するのか、改めて考えさせられたお話です。

長年無事故だった契約者の初めての事故

Aさんは運転中に縁石に接触しました。損傷したのはバンパー、左フロントフェンダー、左フロントホイールの3か所。損害額は概算で10万円です。

Aさんにとっては、これが初めての事故だったそうです。

「車両保険には入っていますよね。今回は使いたいと思っています」

Aさんの契約は、補償範囲の広い一般型の車両保険です。単独事故も補償の対象に含まれるため、問題なく使用できるように思えました。

証券に記載されていた「10-10」

車両保険では、免責金額(事故のときに契約者が自己負担する額)の設定が可能です。事故での損害額が免責金額を上回った場合、その差額が保険金として支払われます。免責金額を設定することで、設定しない場合などと比べて保険料を抑えられることも特徴です。

Aさんの契約を確認すると、車両免責金額は事故1回目10万円・2回目以降10万円。何回目の事故であっても自己負担額が変わらない設定でした。

今回の損害額は、10万円をわずかに超える程度。免責金額とほぼ同じ額です。車両保険を使っても、支払われる保険金はわずか数千円だったのです。

そう伝えると、Aさんは少し間を置いて聞き返しました。

「じゃあ、ほとんど保険からは出ないってことですか」

使えば翌年からの保険料が上がる

Aさんに伝えなければならないことは、もう一つありました。

車両保険をはじめとする自動車保険は、原則として使うと翌年の等級(事故の有無に応じて保険料の割引・割増を決める区分)が下がり、保険料も上がる仕組みです。縁石への接触のような単独事故で車両保険を使った場合は3等級ダウン事故の扱いとなり、さらにその後の3年間は保険料が割高になる期間が適用されます。

受け取れる保険金がごくわずかな今回のケースでは、等級が下がって増える保険料のほうが明らかに大きくなります。「もったいないから使う」はずの保険が、使うことでかえって負担が増えてしまう状況でした。

「保険を使ったほうが高くつくなんて、あまり考えたことはなかったです」

最終的にAさんは、今回は車両保険を使わず、修理費を自己負担することに決めました。

保険料が抑えられていたワケ

話をするなかで、Aさんはこう振り返っています。

「今まで事故に遭ったことがなかったので、契約内容もあまり見ていなかったんです。保険料が安ければいいと思って決めていました」

免責金額を高く設定すれば、そのぶん保険料は抑えられます。長年無事故だと忘れがちですが、Aさんの保険料が抑えられていた背景には、まさにこの設定がありました。

一方で、免責金額を高く設定するほど、車両保険は「大きな損害に備え、小さな損害は自己負担する」という保険に近づいていきます。設定の仕方ひとつで、車両保険の性質そのものが変わってくるのです。

Aさんが損をしたとは必ずしもいえません。車両保険を使わず、自己負担することによって等級ダウンを避けられたという面も確かにありました。

ただ、これまで支払ってきた保険料に見合う備え方ができていたかというと、そうとは言い切れない部分が残ります。

免責金額を決めるときに確かめたいこと

車両保険の免責金額は、保険料の安さだけで決めるものではありません。

契約するときや保険を見直すときには、次のポイントを確認しておきましょう。

  • 免責金額の表記:「10-10万円」「5-10万円」など、1回目と2回目以降の事故でそれぞれいくら自己負担するのか確認する
  • 自己負担できる金額:「どのくらいの損害までなら自分で払えるか」を考えて免責金額を設定する
  • 保険を使いたい場面:小さな損害でも保険を使いたいのか、それとも大きな損害のみに備えられればよいのかを考える

なお、車が全損になった場合は、免責金額が設定されていても差し引かれず、車両保険金額の全額が支払われるのが一般的です。

免責金額を高くすれば保険料を抑えられる一方、そのぶん事故が起きたときの自己負担は大きくなります。「どこまでの損害を自分で負担するのか」まで考えて選択しましょう。

安さのなかに含まれていなかったもの

免責金額を高く設定することは、保険料を抑えるうえで有効です。

Aさんのケースで言えば、これまで無事故だったため、免責金額を高く設定したことによる「保険料が抑えられる」という恩恵のみを結果的に受けていました。

しかし、自分が「保険を使いたい」と思ったときに、免責金額の設定によってほとんど保険金を受け取れないのであれば、それは自分が想定していた備え方とはいえないかもしれません。

免責金額は、いくらに設定するかだけでなく、それがどんな備え方を意味するのかまでを把握し、自分が納得できる形に整えておくことが大切です。


ライター:スライカズヤ
保険・自動車分野を専門とするライター。損害保険会社で事案担当者として10年間、示談交渉・損害査定・自動車修理の協定業務に携わり、数多くの事故対応の現場に立ってきた。初級技術アジャスター、3級ファイナンシャル・プランニング技能士、損害保険事業総合研究所 本科講座修了。専門性の高い知識を、正確に、分かりやすく伝えることを信条とし、「当事者にならないとわからない」事故と保険のリアルを読者に届ける。


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