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「あと2日で戻ってきますかね?」連休前に100%過失の追突事故→連休明け、50代女性を襲った誤算

  • 2026.9.26
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

「まだ修理は始まらないんですか?」

損害保険会社で事故対応を担当していた私にそう言ったのは、連休をまたいで車の修理を待っていたBさん(50代・女性)でした。

事故で車が壊れたとき、修理工場で見積もりさえ出てしまえば、あとは直るのを待つだけ。そう考える人も多いのではないでしょうか。

ところが、事故で損傷した車を修理する場合、見積もりと修理の間に“もう一つの工程”が加わることがあります。

今回は実際の事例をもとに、見積もりが出てもすぐに修理が始まるとは限らない理由をお話しします。

連休前に出なかった見積もり

私が担当していたのは、契約者のAさん(50代・女性)側に100%の過失がある追突事故です。私は相手方のBさんに対し、全面賠償の対応をしていました。

事故があったのは連休前。修理工場は連休に入る直前にBさんの自宅まで出向き、車を確認してくれました。しかし、返ってきたのは次のような言葉だったそうです。

「内部まで損傷が及んでいる可能性があり、車の中を見てみないと正確な見積もりは出せません」

Bさんの車はひとまず修理工場が管理する場所で預かってもらい、詳細な見積もりは連休後に出すことで話がまとまったとのことでした。

このとき、私はBさんに代車を手配していましたが、Bさんはなるべく早く修理を進めたいと話しています。

「やっぱり自分の車のほうが落ち着くので」

入庫日が決まったという電話

連休明け、最初に電話をくれたのはBさんでした。

「明日保管場所から工場に運んで見積もりをするそうです。あと2日くらいで車は戻ってきますかね?」

私は、こう答えるしかありませんでした。

「いえ、まだ修理は始まりません」

さらに、私は続けて言います。

「修理工場が先に修理を始めて、あとで保険会社に『これだけかかりました』と請求するという流れは、一般的にはとらないんです」

修理より先に確かめなければならないこと

「でも、修理する金額は工場が見積もってくれるんですよね?」

Bさんはそう言いました。実際、修理費そのものを見積もるのは修理工場です。しかし、事故の賠償ではその見積額をそのまま保険会社が賠償するとは限りません。

ここで問題になるのが、車の「時価」です。

時価額とは、同じ車種・年式・走行距離などの車を事故の時点で買い直すとしたらいくらになるかという金額です。一般的には、年式が古く走行距離が長い車ほど、時価額は低くなります。

車の修理費が時価額を上回るケースでは、原則として修理費の全額を相手に賠償してもらうことはできません。その場合、超えた分は修理を依頼したBさん自身の負担になってしまう可能性があります。先に修理を済ませてしまうと、あとから「その分は賠償できません」ということにもなりかねないのです。

こうした事態を避けるため保険会社は、事故直後の写真が残っていないかを契約者と相手の双方に確認し、写真や事故の状況から、ある程度の損害の大きさを見立てていきます。修理工場と事前に時価額について確認・協議を重ねていることも少なくありません。

なお、相手の保険に対物超過修理費用特約が付いていれば、時価額を超える修理費について、一般的には50万円を時価額に加算して賠償を受けられる場合があります。

修理工場で行われる「立会調査」

では、Bさんの車はいつ修理に移れるのでしょうか。私がBさんに説明した流れは、次のようなものでした。

  1. Bさんの車が修理工場へ入庫する
  2. 保険会社の技術アジャスター(自動車の損害を専門に調べる調査員)が立会い、修理工場と損傷箇所や修理内容、修理費の見込みを確認する
  3. 修理費と時価額を照らし合わせ、修理を進められるか確認する
  4. 修理工場が修理に取りかかる
  5. 修理完了後、Bさんに納車される

入庫はあくまでスタート地点であり、そこから修理が始まるまでに、もう一段階の確認が必要となります。私が一通り説明を終えると、Bさんはこう口にしました。

「見積もりが出たら、もう修理に入るものだと思っていました。車が戻ってくるのはまだ先なんですね…」

見積もりが出てもすぐに修理が始まるとは限らない

Bさんの車のように、外から見ただけでは損傷の範囲が分からないケースでは、車を修理工場に入庫してから詳しい損害額を確認することがあります。その後、損害調査員の立会いが入ることがあると知っておけば、待ち時間の見通しは立てやすくなります。

今回のケースでは、立会調査を経て修理費などを確認した結果、Bさんの車は修理を進めることになりました。また、契約者のAさんは対物超過修理費用特約を付けており、時価額を超えた修理費も特約の補償範囲に収まりました。

交通事故では、自分が加害者になる可能性もあります。相手への賠償をスムーズに進めるためにも、対物超過修理費用特約が自分の契約に付いているかどうかを確認しておきましょう。

事故後は一日でも早く車を直してほしいと思うものです。しかし、修理までの時間には、適切な賠償額を確認するための時間も含まれています。

連休を挟む場合はこうした工程も後ろにずれるため、修理にはある程度の時間がかかることも想定しておきましょう。


ライター:スライカズヤ
保険・自動車分野を専門とするライター。損害保険会社で事案担当者として10年間、示談交渉・損害査定・自動車修理の協定業務に携わり、数多くの事故対応の現場に立ってきた。初級技術アジャスター、3級ファイナンシャル・プランニング技能士、損害保険事業総合研究所 本科講座修了。専門性の高い知識を、正確に、分かりやすく伝えることを信条とし、「当事者にならないとわからない」事故と保険のリアルを読者に届ける。


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