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路上で『逆走』しかけた68歳教習生→補助ブレーキで間一髪回避も…後日、別教官に漏らした“不満”にあ然…

  • 2026.9.26
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出典元:PIXTA(画像はイメージです)

近年、生活環境の変化や介護の必要から、シニア世代になって初めて免許取得に挑む人が増えています。新しい挑戦自体は、素晴らしいことです。ただ、加齢による空間認識能力や認知機能の低下が、教習の現場で重大な危険を招くこともあります。

国土交通省の資料によると、逆走に気づかないまま走行した「認識なし」のケースは、65歳以上が約9割を占め、75歳以上だけでも約8割にのぼります。NEXCO西日本の集計(2024年上半期)でも、高速道路における逆走事案は、65歳以上が約7割にのぼりました。年齢が上がるほど、その割合はさらに高まる傾向にあります。

教習所指導員として、教習や高齢者講習に立ち会ってきた中から、ある事例を紹介します。本人はなぜ危険なのか理解できないまま免許を取得し、事故を重ねて運転を断念するに至りました。本記事では、その認知のメカニズムと、重大事故の前に運転を断念すべき客観的なサインを解説します。

右折で対向車線へ 指摘の言葉が届かなかった瞬間

68歳で、初めて普通自動車免許の取得に挑んでいた教習生・Aさんの事例を紹介します。路上教習中、片側2車線で中央分離帯のある交差点に差し掛かりました。Aさんは右折しようとした瞬間、中央分離帯の内側、つまり対向車線へハンドルを切り込もうとしたのです。そのまま進めば、正面衝突事故につながる完全な「逆走」の軌道でした。

私はとっさに補助ブレーキを踏み込み、ハンドルも修正して、間一髪で危険を回避できました。ところがAさん本人は、「なぜ止められたのか」「何が危険だったのか」を理解できていない様子でした。逆走しようとしていたという自覚も、まったくなかったようです。

それどころか、後日別の指導員には「前の指導員の説明はおかしい」「不当にブレーキを踏まれた」と不満を漏らし、その後、私を担当から外すよう要求してきました。この方は、最終的には規定の教習時間を大幅に超えながらも卒業し、免許は取得できました。しかし路上に出てからは交通事故が相次ぎ、ほどなく自ら運転を断念しています。

なぜ誤りに気づけないのか? プロが見る2つの認知メカニズム

一つ目は、空間認識能力の低下です。交差点全体の立体的な構造や、車線の位置関係を総合的に把握する力が衰えると、「目の前に見えている空いた空間」だけに意識が吸い寄せられがちです。

先ほどの事例では、信号や標識、その先にある正しい進行車線が視界から抜け落ちていました。その結果、中央分離帯よりも手前側にしか道路がないように錯覚してしまったのです。

二つ目は、メタ認知、つまり自己客観化の欠如です。人は通常、「自分の認知や判断、操作が正しいか」を常に客観視しながら運転しています。ところが認知機能が衰えると、「間違っているかもしれない」と疑う力そのものが低下してしまうことがあります。

危険を指摘されても、自分のミスとして受け止められないケースが少なくありません。

返納や運転断念を見極める客観的サイン

高齢者の免許返納を考えるべきタイミングには、さまざまなサインがあります。

もっとも分かりやすいのは、車についた傷やへこみが増えていることです。Aさんのような初心者をはじめ、以前は運転が上手だった人でも、車体の傷やへこみが目立ち始めたら注意しましょう。厳密に言えば、擦り傷やへこみができるほどの接触は、れっきとした交通事故です。他人の車や所有物、最悪の場合は人や自転車と接触しながら、そのまま走り去ってしまっている可能性も否定できません。

また、外出の際に一度、駐車場で見送りをしながら運転の様子を確認してみるのもよい方法です。衰えが出ていれば、以前の運転との違いに気づけるでしょう。

・ 運転操作のフラつきが目立つ
・ 明らかに安全な状況でもなかなか発進しない、あるいは加速が極端に遅い(または速い)など、普段と違う動きをしている

こうした兆候は、専門家でなくても気づきやすいポイントです。

ほかにも、次のような様子が見られたら注意しましょう。

・ 認知機能の衰えが見られる
・ 視力の衰えが見られる
・ 体の動きや反応など、身体的機能の低下が著しい

ご本人の様子を見て、ご家族がこうした変化を感じているのであれば、免許返納を本格的に検討すべき段階といえます。免許返納についての具体的なポイントは、また別の機会に詳しくお話しします。しかし、ひとたび交通事故を起こしてしまえば、周囲にもご本人にも大きな影響が及びます。これを機に、ご本人の様子を一度確認してみてはいかがでしょうか。


参考:
逆走発生の詳細分析(国土交通省)
高速道路における逆走の発生状況(NEXCO西日本)


ライター:ちだてつし
自動車教習所の指導員・技能検定員として、23年間にわたり現場で安全運転の指導・検定を担当。現在はその専門知識と現場での実務経験を活かし、安全運転やドライブテクニックに関するWebライターとして活動中。また、ペーパードライバーや外免切り替えの事業を展開し、運転に自信のないライダーを対象に、実践的なツーリングを通して運転技術を身につける「日本ツーリングサポート協会」を設立・運営。「安全で楽しいカー&バイクライフ」を伝える発信を行っている。日本二輪車普及安全協会の二輪安全運転指導員として活躍中。「ココナラ」でバイクのライディングに関する質問を受け付け中。


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