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75歳超ドライバー「今年は平成22年…」高齢者講習の現場で、教習所指導員が直面した“想像以上の光景”

  • 2026.9.27
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

75歳以上のドライバーには、免許更新のたびに「認知機能検査」と「高齢者講習」の受講が義務づけられています。高齢者講習は、座学や実車指導などを通じて運転技能を確認する講習です。警察庁の統計では、75歳以上の免許保有者は全国で約790万人(令和6年末時点)。認知機能検査は記憶力や判断力を確かめるものですが、教習所の現場で出会うのは、想定以上の衰えを感じさせる受講者の方たちです。

本記事のテーマは、高齢者講習の現場で指導員が向き合う実態。あわせて、運転が続いてしまう制度上の課題と、身分証の不安を解消する選択肢を解説します。

見当識の設問で前の元号を答える人の事例

認知機能検査の柱となるのは、記憶力を測る「手がかり再生」と、時間の感覚を測る「見当識」という2項目。見当識で答えるのは、検査時点の年月日や曜日、時間です。

指導員として現場に立ち会うと、見当識の設問に「平成22年…」など何年もずれた答えを口にする受講者が時々います。手がかり再生でも、直前に見たはずの絵をひとつも思い出せない人がいます。

驚くのは、こうした状態の人が自分で車を運転して会場まで来ることです。講習が終わっても、帰りはまた自分の運転です。街中で見かける高齢運転者標識の車の中にも、同じような状態のドライバーがいるかもしれません。

気になる点があっても、指導員に運転中止を強く求める権限はなく、対応の難しさが残ります。伝えられるのは、あくまで検査結果や講習中に気づいた様子だけです。

なぜ運転を続けられてしまうのか 制度が抱えるジレンマ

認知機能検査(講習予備検査)で「認知症のおそれがある」と判定されると、専門医による臨時適性検査の受検か、診断書の提出を求められます。その結果次第では、免許取り消しや停止に至ることもあるのです。

警察庁によると、2017年の法改正から1年間で、この判定を受けた75歳以上は57,099人。実際に診断を受けたのは16,470人で、免許取り消し・停止に至ったのは1,892人でした。判定者全体で見ると約3%ですが、診断を受けた人に限ると、その割合は1割強に上ります。ただし、制度導入初年度のデータのため、現在の数値とは差が生じている可能性もあるでしょう。

取り消しに至らない場合は、通常の高齢者講習を経て更新できるのが実情です。検査当日にその場で運転を制限する法的な強制力もありません。運転を続けるのが厳しいと感じられる人でも、その日のうちに車を運転して帰ることになってしまうのです。

なお、過去3年以内に一定の違反歴がある75歳以上の方に義務づけられているのが、実際の運転技能を確認する「運転技能検査」。違反歴がなければ、この検査の対象にはなりません。

免許返納だけが答えではない 広がる選択肢

免許を返納しない理由としてよく聞かれるのが、「身分証明書として使えなくなる」という不安です。返納から5年以内に申請すれば「運転経歴証明書」が交付され、運転免許証と同様に公的な身分証明書として使えます。証明書自体に有効期限はなく、更新の手間もありません。提示すればタクシー運賃や買い物などの優遇が受けられる、協力店舗のある地域も。

運転を完全にやめるのではなく、条件付きで続ける道もあります。自動ブレーキやペダル踏み間違い防止装置を搭載した車に限って運転できる、その名も「サポートカー限定免許」。2022年の法改正で導入されました。

自治体によっては、乗合タクシーなど運転に代わる移動手段を用意しているところも。こうしたサービスを組み合わせれば、車がなくても生活の負担を減らせるのです。

「高齢者講習に通えているから安心」「更新できたから大丈夫」とは限りません。制度が運転の可否をすべて判断してくれるわけではないのです。返納か継続かの二択ではなく、いくつかの選択肢を組み合わせながら、家族で話し合うことが大切になります。

検査や講習を通過できたという事実だけで、安心してしまうのは早計でしょう。日常のちょっとした変化に、家族が気づけるかどうかが分かれ目になります。運転をやめる決断は、本人にとって簡単なものではありません。

家族にとっても、説得は大きなハードル。そうした選択肢を示しながら話し合うことが、きっかけになるはずです。


参考:
認知機能検査について(警察庁)
改正道路交通法の施行状況【高齢運転者対策】(警察庁)
サポートカー限定免許について(警察庁)
運転経歴証明書とは(青森県警察)


ライター:ちだてつし
自動車教習所の指導員・技能検定員として、23年間にわたり現場で安全運転の指導・検定を担当。現在はその専門知識と現場での実務経験を活かし、安全運転やドライブテクニックに関するWebライターとして活動中。また、ペーパードライバーや外免切り替えの事業を展開し、運転に自信のないライダーを対象に、実践的なツーリングを通して運転技術を身につける「日本ツーリングサポート協会」を設立・運営。「安全で楽しいカー&バイクライフ」を伝える発信を行っている。日本二輪車普及安全協会の二輪安全運転指導員として活躍中。


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