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「今年は雨が多いね」何度も顔を合わせる年配のお客さん。だが、帰り際にくれた心温まる一言とは

  • 2026.8.27
「今年は雨が多いね」何度も顔を合わせる年配のお客さん。だが、帰り際にくれた心温まる一言とは

用件だけを短く聞くお客さんだった

若いころ、接客の仕事をしていた。売り場に立ち、レジを打ち、お客さんから聞かれたことに答える毎日だった。もうずいぶん昔の話になる。

その売り場に、何度も顔を合わせる年配のお客さんがいた。だいたい同じ時間帯に現れ、商品を手にするとレジへやってくる。

世間話をする人ではなかった。口を開くのは、何か聞きたいことがあるときくらいだった。

「これ、いくら」

「これは、さっき見たのと何が違うんだ」

こちらが説明すると、最後に「わかった」とだけ言って帰っていく。

最初のころ、私は店員と余計な話をするのが好きではない人なのだろうと思っていた。買い物に来ているのだから、それでも何も問題はない。

ただ、商品を見比べながら考えているときも、答えが出るまで少し待つ。それだけは意識していた。

何度かやりとりを重ねるうちに、その人から聞かれることが少しずつ増えていった。

やがて商品とは関係のないことも、たまに口にするようになった。

「今年は雨が多いね」

それでも会話はほんの数往復だ。用が済めば、その人はいつものように帰っていった。

帰りかけたところで、振り返った

ある日も、いつものように会計を済ませた。

釣り銭と商品を渡し、私が「ありがとうございました」と頭を下げる。その人もそのまま出口へ向かうのだと思っていた。

ところが数歩進んだところで足を止め、こちらを振り返った。

「レジにあなたがいると、いつも聞きやすくて助かるよ」

突然のことで、私はすぐに返事ができなかった。

それまで、その人からそんなふうに思われているとは考えたこともなかったからだ。

「ありがとうございます」

ようやくそう返すと、その人は少しうなずき、今度こそ店を出ていった。

隣のレジにいた同僚が、その後でぽつりと言った。

「あの人、あなたのレジによく並んでますよね」

言われてみれば、ほかのレジが空いていても、私のところへ来ることがあったような気がした。

私は特別な接客をしたつもりはなかった。気の利いた話ができるわけでもなく、難しい質問に何でも答えられたわけでもない。

ただ、話し始めたら最後まで聞き、考えているときには急かさない。それを続けていただけだった。

あの日以来、接客でも普段の会話でも、相手が言葉を探しているときに少し待つことを意識するようになった。

短い一言だったが、今でもあの帰り際の声を覚えている。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた60代以上男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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