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「この本の汚れはダメだろ」毎日のように粗を探してくる客。だが、店長が見せた記録とは

  • 2026.8.28

指摘には対応しても、そのあとが長かった

書店で働いていた頃、ほとんど毎日のように顔を出すお客さんがいました。

売り場をよく見ている方で、本についた汚れや、違う棚に置かれている本を見つけると、そのたびにレジまで知らせに来ます。

「レジの前で言うのもなんだが、この本の汚れは雑すぎる」

実際に本が汚れていれば、「申し訳ありません。こちらは売り場から下げます」と対応しました。棚の場所が違っているときも、「ありがとうございます。確認して戻しておきます」と伝えます。

指摘されたことを放っておいたわけではありません。必要な対応は、その都度していました。

ただ、その方の場合はそこで話が終わりませんでした。

「こういうところから店の印象が悪くなるんだよ」

「俺はこの店が好きだからこそ言っているんだ。分かるよね」

こちらが「ご指摘ありがとうございます。気をつけます」と答えても、似た話がしばらく続きます。

声を荒らげるわけでも、値引きなどを要求するわけでもありません。

だからこそ、途中で話を切り上げるのも難しかったのです。

レジが混んでいれば、私は会計をしながら相づちを打ち、売り場の確認は別のスタッフに頼みます。それでも一人が長く対応していれば、そのぶん品出しや問い合わせへの対応が遅れます。

店のために言ってくれていることは分かる。それでも毎日のように続くと、スタッフも対応に困るようになっていました。

店長が見せたのは、スタッフ用の記録用紙だった

ある日のことです。その方がいつものようにレジで話し始めると、近くにいた店長がやってきました。

店長はまず、本の状態を確認しました。

「教えていただいてありがとうございます。これはこちらで下げておきます」

そこまでは、いつもの対応と同じでした。

ところが、その方がさらに話を続けようとすると、店長はレジの内側から一枚の紙を取り出しました。

そこには日付と、指摘された場所や内容を簡単に残せる欄がありました。スタッフ同士で共有するための記録用紙です。

店長はその日の内容を書きながら言いました。

「今後、気になることがありましたら、まず内容を伺って、こちらに残すようにします。必要なものはこちらで確認して対応しますので」

お客さんに何かを書かせるのではなく、店側で要点を記録して、スタッフ間で確認する形にしたのです。

その方は紙を見て、「ちゃんと店の中で共有されるなら、それでいい」とうなずきました。

それからは、何か指摘があっても、スタッフが内容を確認して記録すると、その場でやり取りを終えられることが増えました。

以前のようにレジの前で長く話が続くことは、少しずつ減っていきました。

しばらくすると、その方がレジで聞いてきました。

「この作家の新刊、もう入ってる?」

私は入荷を確認して、棚まで案内しました。

店長はその方を責めたわけでも、指摘をやめてほしいと言ったわけでもありません。

必要な意見はきちんと受け取る。ただし、そのあとの確認や改善は店側の仕事として引き取る。その線引きを一枚の紙で見える形にしただけでした。

それからは、私たちも以前ほど身構えずに、その方と接することができるようになりました。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた40代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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