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「なんで?」交通事故で10.5万円を自己負担した30代女性→元損保社員が見せた“13年前の自賠責保険料”に驚愕…

  • 2026.9.9
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

自動車保険の保険料は、年々上がっている。

そう感じている方は、多いかもしれません。一方で、交通事故そのものは減っているとも言われます。

事故が減っているのに、なぜ値段だけが上がるのか。

以前に損害保険会社で事故対応を担当していた私も、契約者の方から同じことを聞かれたことがあります。

過失は3割、それでも10万5,000円

契約者のAさん(30代・女性)が直進していたところ、Bさん(60代・女性)の車が車線を変えてきて接触しました。過失割合は30:70(Aさん:Bさん)です。

損害額はAさんの車がおよそ25万円、Bさんの車がおよそ10万円でした。

Aさんは車両保険に加入していなかったため、自分の車の修理費のうち3割にあたる7万5,000円を自分で負担します。加えて、Bさんへの賠償として3割、およそ3万円を支払うことになります。

「相手の車まで、私が払うんですか」

Aさんはそう言います。

合計10万5,000円。過失が大きいのは相手なのに、これだけの金額がAさんの負担となったのです。

3万円を保険で払うとどうなるか

「保険料を払ってるんだから、使わないと損ですよね」

Aさんはそう言いました。しかし、本当に対物賠償責任保険を使ってしまっていいのでしょうか。

確かに賠償分の3万円は、保険を使えばまかなえます。ただ、保険を使うと翌年度の等級が3等級下がり、事故があった契約に適用される割増の係数も加わります。

等級や年齢条件で結果は変わるので、あくまでもこれはAさんの場合ですが、保険の使用の有無による保険料の差は3年間の累計でおよそ15万円です。

自分で払えば10万5,000円。保険を使えば、3年でおよそ15万円増え、自分の車の修理費7万5,000円は変わらず自己負担。一般的には使わない方がいいケースです。

私が試算結果を伝えると、Aさんも保険を使わないという判断をしました。

「今回は使わない方がいいことは、よくわかりました」

そう言ったあと、Aさんは続けました。

「でも、保険って年々高くなってますけど、なんでですか?」

13年前より1万円近く安い

私はまず、自賠責保険の金額をお伝えしました。車検のときに払う、あの強制加入の保険です。

自家用乗用車の2年契約でみると、2013年は2万7,840円でした。それが2023年には1万7,650円まで下がっています。そして2026年11月から、1万8,560円に上がります。

ただし、910円という値上げ幅は、直近の2023年と比べた場合の話です。

2013年と比べれば、実は1万円近く安い金額でもあるのです。

「そうなんですか?上がる一方だと思っていました」

安かったのは、貯金を取り崩していたから

自賠責保険には、過去の契約で余ったお金が積み上がっています。値下げが続いていたのは、この余りを取り崩して保険料に充ててきたからです。コロナ禍で事故が減り、余剰が増えたことも重なりました。

もっとも、取り崩せば残高は減ります。損害保険料率算出機構によると、積み上げたお金は近年になって大きく減少しました。

理由はもうひとつあります。自賠責保険が支払うのは、事故でケガをした方の治療費や慰謝料です。

治療にかかる費用が上がっていることも、値上げの理由のひとつです。あわせて、物価高騰のあおりを受け、契約の管理や損害の調査にかかる経費も上がっています。

自賠責保険は、利益も損失も出さない「ノーロス・ノープロフィット」を原則に保険料の金額を決めています。支払うお金が増えれば、集めるお金も増やさざるを得ません。

「じゃあ、事故がもっと減ったら安くなるんですか?」

任意保険が上がる理由

その質問には、任意保険の話で答えることができます。

2026年6月、損害保険料率算出機構は、各社が保険料を計算する基礎となる数値を、平均14.4%引き上げる届出を行いました。

こちらも物価上昇の影響は共通しています。ただ、自賠責と決定的に違うのは、上がっているものの中身です。

今回の引き上げの理由として挙げられているのは、相手の所有物を壊したときの賠償費用と、自分の車の修理にかかる費用の上昇です。

そして、修理費が上がっています。相手の車を壊したときの1件あたりの修理費は、2022年度のおよそ33万6,000円から、2024年度にはおよそ38万6,000円へ。センサーを積んだ高性能な部品は高くなり、修理に時間がかかれば代車の費用もかさみます。

一方で、事故そのものは増えているわけではありません。衝突被害軽減ブレーキなどの車の高性能化にともなって、緩やかに減っているとされています。

車の高性能化によって事故は減っても、事故1件あたりが高くなる。だから合計は減りません。

「苦しいですね」

Aさんはそう言って、自分に何かできることはあるのかと尋ねました。

自分に合った保険を自分で選ぶ

まず、車両保険です。すべての損害を補償するタイプでなくても、相手のいる事故や自然災害などに範囲を絞ったタイプがあり、「車対車+A」や「エコノミー型」などと呼ばれています。保険料は抑えられます。ただし、どこまで補償されるのかという点は、契約する前に確認しておきたいところです。

それから、これは損害保険会社にいた頃には大きな声で言えなかったことですが、保険会社そのものを比べ直すという方法もあります。代理店を通さずに契約するダイレクト型や、走行距離や運転の仕方をもとに保険料が決まるテレマティクス型など、選択肢は以前より増えました。

ただ、安ければいいという話ではありません。保険料を削った結果、いざというときに備えられないのであれば、本末転倒です。

代理店を介することで、適切な保険選びのアドバイスや事故のときにはサポートを受けられるメリットもあります。

大事なのは、自分に合った補償を自分で選ぶこと。

自分にとっての適正な保険料は、必ずあるはずです。

事故の前にできること

Aさんが負担した10万5,000円の中身を、もう一度見てみます。

相手への賠償にあたる3万円には、対物賠償責任保険という手段がありました。使うか使わないかを、Aさんは選ぶことができました。

一方、自分の車の修理費にあたる7万5,000円には、その選択肢がありません。車両保険に加入していなければ、使うかどうかを考える場面にもならないからです。

もっとも、仮に加入していたとしても、今回の金額であれば使わない判断になっていたかもしれません。1回の事故で下がる等級は、いくつの保険を使っても3等級までです。ただ、損害がもっと大きければ、使う判断もあり得ました。加入していなければ、その比較すらできません。

事故が起きた後にできるのは、持っている選択肢の中から選ぶことだけです。その選択肢をそろえておけるのは、事故が起きる前だけに限られます。

値上げそのものを、契約者が止めることはできません。ただ、その保険料でどう備えるかは、あらかじめ自分が決めています。

保険商品は、つかみどころのない値段に見えます。しかし、その先には「誰かの治療費」と「誰かの所有物や車の修理費」、そして「自分への補償」があるのです。


ライター:スライカズヤ
保険・自動車分野を専門とするライター。損害保険会社で事案担当者として10年間、示談交渉・損害査定・自動車修理の協定業務に携わり、数多くの事故対応の現場に立ってきた。初級技術アジャスター、3級ファイナンシャル・プランニング技能士、損害保険事業総合研究所 本科講座修了。専門性の高い知識を、正確に、分かりやすく伝えることを信条とし、「当事者にならないとわからない」事故と保険のリアルを読者に届ける。


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