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かつて、ガンダム主題歌でデビューした14歳の歌姫「末恐ろしい18歳」と山下達郎が舌を巻いた20年後

  • 2026.10.3
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2006年9月、舞台「スウィート・チャリティ」にて主演をつとめた玉置成実(C)SANKEI

20年前の2006年9月、東京・ル テアトル銀座で、ブロードウェイの名作ミュージカル『スウィート・チャリティ』日本語版が幕を開けた。その初日、主演の玉置成実がシルクハットを落とした。

当時、彼女はまだ18歳。しかもこれが人生初の舞台である。並の新人なら頭が真っ白になって取り乱してもおかしくない場面だ。だが玉置は、舞台の進行をこわさないよう、さりげなく帽子を拾い上げた。その拾い上げ方には、貫禄すらあった。

初日のミスを自分から数える肝っ玉

見事なリカバリー以上に痛快だったのは、終演後の彼女の態度だった。

初日を終えた玉置は、「初日だし緊張しました!」と言いながらも、ミスは1か所口ごもりそうになったのと「シルクハットを落としたことかな」と振り返った。あとはなかったと思う、とも付け加えている。

普通なら隠したい、あるいは触れられたくないはずの失敗を、自ら数え上げて「かな」と軽く片づけてしまう。看板を背負った初主演女優の、このけた外れの肝の据わり方。客席でその初日を目撃していた山下達郎は、初舞台であれだけできれば上出来だとしたうえで、末恐ろしい18歳だと舌を巻いた。その逸話にも、深く納得させられる。

演じたのは、ニューヨークのダンスホールで働きながら、傷ついても何度でも恋に飛び込んでいくヒロイン・チャリティ。共演陣には、岡田浩暉や石井一孝、元宝塚の樹里咲穂に初風緑、DJの赤坂泰彦といった実力派がずらりと顔を揃えていた。18歳の初舞台としてはプレッシャーに押しつぶされそうになっても不思議ではない布陣だ。

だが玉置は、幼少期から本格的なダンスレッスンを重ね、14歳で『機動戦士ガンダムSEED』の主題歌『Believe』でデビューを飾った人だ。初日から満員の観客の前で、歌とダンスを披露した。チャリティは、まるで玉置自身なのではと思えるほどのはまり役だとも評された。

アルバム首位と映画と初主演が重なった高校最後の年

この2006年という時期、彼女のキャリアはひときわ勢いに乗っていた。開幕の2か月前には、3枚目のアルバム『Speciality』が週間ランキングで1位を獲得。同じ7月には映画『ラブ★コン』が公開されてスクリーンにも顔を出し、高校卒業を控えた秋には初のシングルベスト盤の発売も決まった。

アルバム首位、映画出演、そして高校最後の年に挑む大型ミュージカルの初主演。常人なら目を回しそうな過密日程のなか、8月に行われた顔合わせと本読みの現場では、まだ演出がつく前から、初主演とは思えない堂々たる歌とセリフを聞かせていた。制作スタッフが公式ブログにそう書き残している。

純真なチャリティから20年を経て演じる悪女へ

あれから20年。玉置成実はその後も『ハイスクール・ミュージカル』のガブリエラ役や『キンキーブーツ』のニコラ役などで、ミュージカルの舞台に立ち続けてきた。所属事務所の公式プロフィールは、主な出演作に今も『スウィート・チャリティ』のチャリティ役を挙げている。

もちろん、本業であるシンガーとしての活動も続いている。2026年にはアジア5都市を巡るツアーを敢行し、9月のクアラルンプールから11月の東京・浅草花劇場まで駆け抜ける。

そして2027年の年明けには、ミュージカル『三銃士:Reborn』(大阪・SkyシアターMBS、東京・新橋演舞場)の舞台に立つことも決まっている。

演じるのは、三銃士の宿敵となる女スパイ、ミレディ。アトスのかつての恋人で、ダルタニャンの愛するコンスタンスを連れ去る役どころだ。出演にあたり「身が引き締まる思い」とコメントを寄せた玉置が挑むのは、あの日の無邪気なチャリティとは正反対のダークヒロインだ。

20年前のあの日、落としたシルクハットを何気なく拾い上げ、一瞬も舞台を止めなかった18歳。幾多のステージを踏んできた彼女が、劇場の闇の中でどんなミレディを立ち上がらせるのか。その進化を、ぜひ客席で確かめてみたい。


※記事は執筆時点の情報です

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