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堺雅人と映画で共演を果たした【パチンコ好き芸人】黒の網タイツ姿で弓を引いた15年前

  • 2026.9.29
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2012年2月、短編映画「益子日和」のクランクイン記者会見に出席した椿鬼奴(C)SANKEI

15年前の2011年9月、ハリウッド映画『プリースト』の公開直前イベントのステージに現れた椿鬼奴の姿は、なかなかに強烈だった。

赤のレザージャケットに黒の網タイツ、上からマントを羽織って額には十字架という、劇中のヴァンパイアハンターになりきった姿だ。舞台上で弓矢を持った彼女は、パネルに描かれた3体のヴァンパイアを真剣な眼差しで見据えた。

放った矢は5本で、倒したのは2体だった。なんともリアクションに困る戦績だが、鬼奴は、弓道なら4本中2本当たれば2回戦に進めるとして「1回戦は突破したかな」と、清々しい表情を浮かべた。

中学・高校と5年間、部活で続けた弓道の腕前を披露する、という触れ込みだったはずが、本人は「もともと弓道は好きじゃない」と言い切り、5年続けたのも惰性だったと明かして、はしごを外してみせた。的を外したことについても、自分のたがが外れてお客さんに当たったらどうしようという強迫観念があったと、苦笑しながら打ち明けた。

せっかく用意された見せ場を、自ら鮮やかにしぼませていく。だが、その自虐にはトゲも卑屈さもない。どこか品の良さと飄々とした余裕が漂っていた。

パチンコと洋楽だけは譲らない

この日のイベントで痛快だったのは、特技をいとも簡単に投げ出す一方で、別の話題になったとたん、異様な熱量を放ち始めたことだ。

今の特技を聞かれると、パチンコ、後はスロットだと断言した。パチンコ版の『牙狼〈GARO〉』に登場する俳優・小西遼生がすてきだと明かし、実際には会ったことがないけれど「液晶では何度もお会いしています」とラブコールを送った。

さらに、この映画がシリーズになったらハリウッドに進出してPRキャラクターを務めたいと、突拍子もない野望を語り出す。英語はできないけれど習いたいと続け、「洋楽は好きなので、発音にこだわっていきたい」と展望を語った。

冗談交じりの放言かと思いきや、「発音」というピンポイントな細部へのこだわりは、やけに本気に聞こえる。5年間続けた弓道は「惰性」と言い切るのに、英語は発音にはこだわりたいと言う。得意なことは軽やかに笑い飛ばすくせに、自分が心底惹かれるカルチャーに対しては妥協しない。

当時の彼女は、2009年の『アメトーーク!』で冠企画が組まれるなど、遅咲きのブレイクを果たしたあとだった。30歳のときにコンビ解散し、ピン芸人として再スタートを切った苦労人でもある。低くかすれた声で笑いを取りながら、ひと月後の映画『クロサワ映画2011』の舞台挨拶では、前作に続いてアンニュイを担当していると自己紹介した。

洋楽好きとソロデビュー

当時の彼女が半ば冗談めかして口にしていた洋楽好きは、その場しのぎのネタでは終わらなかった。

彼女が愛してやまない歌への情熱は、やがて本物の音楽シーンへと結実していく。藤井隆が主宰する音楽レーベル「SLENDERIE RECORD」から、2018年にソロアルバム『IVKI』をリリースした。堂島孝平を音楽プロデューサーに迎え、架空のアニメの劇中歌集として作り込んだ1枚で、本人は発売にあたり「念願叶ってソロデビューする事が出来ました!」とコメントを寄せている。

15年前のあの年にも、得意のボン・ジョヴィを営業先の子どもたちの前で歌っていた彼女は、いつしか本気で歌う場所を自分の手でしっかりと耕していたのだ。

今年もツアーの舞台に名を連ねて

今年2026年の7月から9月にかけて回った同レーベルの全国ツアーでも、鬼奴は大阪や仙台、愛知、そして東京・LINE CUBE SHIBUYAでの千秋楽に、その名を連ねた。さらに俳優としても、2025年公開の映画『平場の月』で、堺雅人が演じる主人公の中学の同級生で、同じ印刷所で働く安西知恵を演じている。

自分の手柄や実績には執着せず、弓道は惰性だったとからりと笑い飛ばす。けれど、自分が心から愛するもの、胸が高鳴る表現に対してだけは、どれほど遠回りになっても背を向けない。

15年前の9月、網タイツ姿で弓を引いていた椿鬼奴が「惰性」の裏側に抱えていた不器用な本気は、いまもステージの上に残っている。


※記事は執筆時点の情報です

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