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「声優をずっとやってきた人のようなうまさ」ベテラン声優を唸らせた【イケメン俳優】の本気

  • 2026.9.29
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2011年9月、映画「劇場版 テニスの王子様」初日舞台挨拶に登場した大東俊介(C)SANKEI

15年前の2011年9月、ひとりの若手俳優がアニメ映画『劇場版 テニスの王子様 英国式庭球城決戦!』の初日舞台挨拶に立っていた。当時25歳だった大東俊介(現・大東駿介)にとって、これが声優初挑戦の舞台だった。

映画『クローズZERO』で不良高校生を演じていた彼だが、この日は様子が違っていた。原作者の許斐剛からサプライズで贈られた色紙を受け取り、感極まって言葉を詰まらせる。そこには役者としての鎧を脱ぎ捨て、愛読してきた漫画のいち読者に戻ってしまった青年の姿があった。

好きなカルチャーを前にすると、打算も遠慮もなく、自ら一歩踏み込んで飛び込んでいく。40歳を迎えた今も変わらない大東駿介の魅力は、あの夏にもうはっきり表れていた。

放課後の少年に戻ったアフレコ

大東が演じたのは、物語の舞台となる英国で主人公・越前リョーマをサポートする中国人選手、シウ。オファーを受けた大東は、生粋のアニメ好きであり、原作『テニスの王子様』の熱心な読者でもあった。しかも、リョーマと同じ左利き。連載が始まった頃には、そのリョーマのまねをしていたほどの筋金入りだ。

それだけに、アフレコ現場での興奮は隠しようもなかった。収録中はシウになりきっていても、少し時間があいて考えてみると、「俺、リョーマと喋ってた!」と気づいてうれしくなったと明かしている。子どもの頃に憧れ、まねをしていた主人公と、声を通じて背中を預け合っている。6月の公開アフレコで語られたそのエピソードは、プロの俳優の仕事論というより、学校帰りに駄菓子屋で興奮冷めやらぬまま語り合う少年の報告のようだ。

初挑戦の現場を振り返り、大東は声優という仕事に気持ちよさを感じたと話し、また機会があれば挑戦したいと意欲を燃やしていた。

録音ブースでの一礼

もちろん、単なるファン目線で現場に臨んでいたわけではない。むしろ、大好きな作品だからこそのストイックさと敬意が、彼を突き動かしていた。

8月の完成披露試写会で明かされたのは、その愚直なまでのアプローチだ。10年間愛されてきた作品へのリスペクトから、大東は「録音ブースに入るとき一礼しましたもん」と熱弁した。なかでも彼を悩ませたのが、ボールを打つときにもれる短い声だった。ブースに入る前から椅子に座り、「うっ!」という声をずっと言い続けていたと明かして、会場を笑わせた。

そんな完璧主義ゆえに、完成した作品を観るのは気が重かったという。もっとこうしておけばよかったと思うところがたくさんあって、最初はチラッと観るだけのつもりだった。ところが蓋を開けてみれば、3〜4回も観てしまっていた。役者としての厳しい批評眼を、作品を愛する純粋なファン心が軽々とノックアウトしてしまう。

迎えた9月3日の公開初日、大東はスポーツの熱を伝えたくて、「休憩はいらない」と頼んで一気に録ってもらったことを笑顔で振り返った。その演技には、長年リョーマを演じてきた声優・皆川純子も「普通に声優をずっとやってきた人のようなうまさ」と惜しみない賛辞を送っている。

原作者からの「ようこそ」と少年のような笑顔

初日舞台挨拶の終盤、原作者の許斐剛から大東へ、一枚の色紙がサプライズで贈られた。そこに描かれていたのは、リョーマの先輩・海堂薫のイラスト。さらに「テニプリファミリーへようこそ」という温かい歓迎の言葉と、演技への感謝が添えられていた。

色紙を手にした大東は言葉に詰まり、メッセージを読み上げながら感極まった表情を浮かべた。少年のような笑顔で喜ぶ姿もあった。何年も夢中でページをめくり続けてきた漫画の生みの親から、仲間として迎え入れられたのだ。

当時の大東のスケジュールを振り返ると、その熱量がどれほど特別なものだったかがよくわかる。この2011年、大東は年明けに三島由紀夫原作の舞台『金閣寺』に出演し、7月には同作のニューヨーク公演にも立っていた。映画公開の9月はTBS系ドラマ『桜蘭高校ホスト部』のレギュラー出演中で、翌年には大河ドラマ『平清盛』への出演も控えていた。役者として急勾配の階段を駆け上がっていた多忙な日々の真ん中で、彼は憧れの世界に飛び込んでいたのである。

40歳を迎えても変わらない好きなものへの直談判

あれから15年の月日が流れた2026年、大東は大河ドラマ『豊臣兄弟!』で前田利家を演じている。出演が決まったときには、「40歳を迎える今の自分を、この作品にしっかりと刻む」と覚悟を語った。さらに9月スタートの主演ドラマ『絶望できない男』(カンテレ)では、1億円の借金を背負い、怒濤のしゃべくりと泥臭いエネルギーでどん底から這い上がろうとする男を演じている。小学校からの幼なじみである金属バット・小林圭輔との共演も、このドラマで実現した。

確かなキャリアと深みを身につけた大人になっても、彼の中にある少年の火はまったく消えていない。象徴的なのが、2027年1月発売予定の新作ゲーム『STRANGER THAN HEAVEN』への声優としての出演エピソードだ。主人公の名前が「大東真」だったことから、本人が制作陣に直談判して決まった出演だった。

25歳のときは、スポーツの熱を伝えたくて休憩はいらないと頼んでマイクに向かい、40歳になった今も、名前が同じだからと迷わず手を挙げる。計算や体裁よりも先に、好きだという衝動とリスペクトが身体を動かしてしまう。

15年前、また機会があれば挑戦したいと語っていた声の仕事。次の現場でも彼はきっと、胸いっぱいの敬意を込めて、深く一礼しながらブースの扉を開けるに違いない。


※記事は執筆時点の情報です

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