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美人女優が「感想なんてどうでもいい」と言い放った【感動のワケ】台風15号が直撃した15年前

  • 2026.9.28
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2011年11月、映画「ステキな金縛り」の大ヒット舞台あいさつに登場した深津絵里(C)SANKEI

15年前の2011年9月、首都圏を台風15号が直撃したその日、東京・六本木では映画『ステキな金縛り』の完成披露試写会が行われていた。交通機関は麻痺し、台風が吹き荒れる。劇場にたどり着けない人も続出するなか、それでも客席には約350人の観客が集まっていた。

壇上に立った主演の深津絵里は、嵐のなか駆けつけてくれた客席を見渡し、命がけで足を運んでくれたことへの礼を言った。そして、「映画の感想なんてどうでもいいです」とまで口にして、深く頭を下げた。

作品への評価より、来てくれた人への感謝を先に伝える。そんな深津絵里の姿勢に心をつかまれる。

栄冠の場ですら自分の手柄にしない人

深津絵里は、スポットライトを一身に浴びる場でも、自分の話を誇ろうとしなかった。『ステキな金縛り』が公開された2011年秋を迎えるまでに、彼女は俳優として一つの大きな頂点に立っていた。前年公開の映画『悪人』で、主演女優として国内外で高く評価を受けていたからだ。

2010年9月、モントリオール世界映画祭で最優秀女優賞に輝いたときは、授賞式の壇上で、深津はこの賞は『悪人』という作品を作ったすべてのスタッフにいただいた賞だと語った。授賞式のあとには、相手役の妻夫木聡の名を挙げて、妻夫木でなかったら取れなかった賞だとも口にしている。

さらに翌年2月、第34回日本アカデミー賞で最優秀主演女優賞を受賞した際も、口をついて出たのは監督やスタッフ、共演者への感謝だった。妻夫木さんと一緒に闘えたことは大きな財産になったとも語っている。

一度だけなら、奥ゆかしい謙遜のようにも映るかもしれない。だが、大きな賞の壇上で続けて周りを讃える姿を見ていると、彼女は本当に自分の手柄だとは思っていない人なのだろうと分かる。

「映画のことなんてどうでもいい」と共演者も続いた

だからこそ、あの台風の日の言葉にも嘘はなかったのだと思う。六本木の会場のステージには、三谷幸喜監督をはじめ、深津、西田敏行、竹内結子、中井貴一ら総勢10人が並んでいた。悪天候のため、客席には空席も目立っていたという。

そんな客席を見渡しながら、深津は真剣な表情で、来てくれたことが本当にありがたいと語りかけた。

中井貴一も客席を見渡し、「深津さんがおっしゃったとおり、映画のことなんてどうでもいいです!」と続けた。西田敏行は「みんな家、大丈夫?」と心配そうに観客を気遣った。竹内結子は、自分たちより、来てくれた皆さんに拍手を送ってほしいと呼びかけた。

壇上の俳優たちが口々に感謝を伝え、舞台挨拶は、台風のなかを来た観客を労い、包み込むような場になっていった。

凛とした真摯さとハプニングを味方にする軽やかさ

深津絵里のもうひとつの魅力は、そうした生真面目さや誠実さの裏にある、ユーモアとしなやかさだ。

『ステキな金縛り』は海を越え、同年10月にはニューヨークでプレミア上映が開催された。深津は三谷監督が舞台挨拶用に用意した台本どおり、女優になろうと思ったきっかけの映画は『猿の惑星』だという冗談を英語で披露し、場内の爆笑を誘っている。

そして迎えた10月末の公開初日、深津は、公開が近づくにつれ、早く観てもらいたい思いと、どう受け取られるのかという不安で落ち着かなかったと胸の内を明かした。そのうえで、たくさんの人が楽しみに待っていてくれたことを「自分の目で確かめることができて、安心しています」と、笑顔であいさつした。

この日は、司会者が「上映」を「えいじょう」と言い間違えるハプニングも起きた。すると深津は、「ニューヨークでの『えいじょう』はすてきな劇場でして……」と、わざと同じ言い間違いをトークへと組み込んでみせた。会場はさらに盛り上がった。

台風の日に観客へ向けた真剣な表情と、ハプニングすら愛嬌へと変えてしまうアドリブの機転が、同じ一人の中に同居している。

ロンドンの舞台に立った人へまた拍手を送りたい

今年2026年の春夏、深津はNODA・MAPの舞台『華氏マイナス320°』(作・演出:野田秀樹)に出演した。東京、北九州、大阪のみならず、ロンドンでも上演された。NODA・MAPの新作への参加は、実に14年ぶりだった。

上演が発表された際に寄せたコメントで、彼女は22歳の時に野田と出会い、それから30年になると振り返り、「こんなに長くご一緒している方は、他にいません」とつづっている。

15年前の台風の日、暴風雨を突いて駆けつけた約350人の観客へ、心からの感謝を伝えた人。その人が今年は、ロンドンの観客の前でも板の上に立った。次にいつ、どの舞台やスクリーンで彼女に会えるのかは分からない。その日が訪れたときには、客席のこちら側から、惜しみない拍手を思い切り返したいと思うのだ。


※記事は執筆時点の情報です

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