1. トップ
  2. エンタメ
  3. アントニオ猪木の「闘魂注入ビンタ」を受けた【美少女アイドル】ギャル役で主演を張った“清純派”

アントニオ猪木の「闘魂注入ビンタ」を受けた【美少女アイドル】ギャル役で主演を張った“清純派”

  • 2026.9.28
undefined
2011年9月、映画「ランゴ」試写会でタンザニア産のデレカメレオンと鑑賞した松井玲奈(C)SANKEI

本物のカメレオンを腕に乗せ、映画を一緒に鑑賞してしまうアイドルが他にいるだろうか。15年前の2011年9月、映画『ランゴ』の試写会イベントに登場したSKE48の松井玲奈の姿は、いま振り返っても鮮烈だ。触ると意外にやわらかいと話し、初めて触れるカメレオンが腕の上でなついてくれたことを、彼女は笑顔で喜んでいた。

同じ年の秋、松井は初めての連続ドラマ主演という大きな挑戦の渦中にいた。あの頃から彼女は、驚くほど嘘がつけず、どこまでも表現に対して誠実だった。

飾らない本音と研ぎ澄まされた観察眼

イベント中、松井の腕にはずっとカメレオンが乗っていた。朝のうちは落ち着きなく動いていたのに、一緒に映画を見ているうちになついて、体にピタリと張り付いてきた。

松井は「うちの犬はツンデレなので、デレデレなカメレオンのほうがいい」と飼い犬と比べて笑い、飼ってみたいとはしゃぎながらも、エサになる虫が苦手なのだけがネックだと苦笑いしてしまう。気取らない本音が、さらりとこぼれ落ちる。

さらにこの日は、わずか8日前に日本武道館で行われたAKB48の選抜じゃんけん大会での珍事にも話が及んだ。松井はなんと、アントニオ猪木の「闘魂注入ビンタ」を自ら志願していたのだ。「挑戦することはいいことだなと思って」と振り返り、叩かれたときは頭が真っ白になり、翌日は顔が腫れたことまで明かしてみせた。「あれ以来、顔が小さくなった気がします」と笑いを誘う度胸にも唸らされる。

だが、この日のトークで最も彼女の表現者としての芯を感じさせたのは、映画そのものに対する着眼点だった。

主人公ランゴの目線や歩き方、物を持つときの指をチラチラさせるしぐさにまで、声を担当したジョニー・デップの芝居が宿っていることを、松井は見逃していなかった。カメレオンをなでる無邪気さの裏で、その瞳はスクリーンの奥にある微細な演技を鋭く捉えていた。

叱られてデコピンされて噛み締めた自分の変化

そんな鋭い観察眼を持つ彼女が、主演として自身の芝居と向き合ったのが、同年10月に配信が始まったケータイドラマ『オシャレに恋したシンデレラ~おかりえが夢を叶えるまで~』だった。実在の人気ブロガー、おかりえをモデルにしたギャル役で、連続ドラマ初主演を飾った。

清純派のイメージから一転、人生初の茶髪につけまつげとコンタクトで、いつもと違う自分になれるのが楽しかったと語る一方で、求められるコミカルな芝居には大いに苦戦した。どうしても恥ずかしさが先に立ち、自分を捨てきれない。

全話を駆け抜けた12月、松井は公式ブログに撮影の日々への思いを綴っている。話をもらったときは、自分におかりえが務まるのかと強い不安を抱えていた。初対面の日から寝ても覚めてもおかりえのことを考え、雑誌をチェックしては役の息遣いを探した。

現場ではカメラが回るたびに監督から怒られたが、彼女はそれを作品と自分のためだったと真正面から受け止めた。張り詰めた緊張を解こうと、共演の国生さゆりが撮影のたびにデコピンをしてくれたことも、温かな記憶として刻まれていた。

何より胸を打つのは、自分の演技を見て、だんだん良くなっていくのが分かったと書いた一節だ。誰かに褒められたからでも、叱責を乗り越えた達成感からでもなく、自分自身の内なる変化を素直に喜んでいた。

演じる楽しさ、協力して作り上げていく楽しさ、完成したときのうれしさ、見てくれた人がいるうれしさを、彼女はひとつずつ愛おしむように数え上げていた。

50点と笑った20歳から土に触れる現在へ

翌2012年3月、ファースト写真集『きんぎょ』の発売記念イベントで、松井はいつ話をもらってもいいように、いろんな映画や芝居を見て準備を整えたいと、芝居への渇望を口にしている。写真集の出来を聞かれると、100点と言いたいけれど伸びしろがなくなってしまうからと、これから先のことを考えて50点をつけた。

自分を過大評価しない厳しさを持ちながら、未来の自分を決して疑っていない。

あの秋から15年がたった今年2026年1月、松井は初の書き下ろしエッセイ集『ろうそくを吹き消す瞬間』を上梓した。茹でたかまぼこの味にうっとりするような日常の断片から、痛みを伴う切ない記憶までをすくい上げた一冊だ。20歳の頃、ブログに感情の機微を書き留めていた少女は、今や人生の陰影を綴る書き手となった。

そして2026年10月26日からは、NHKの夜ドラ『青の花 器の森』で主演を務める。彼女が演じるのは、長崎県波佐見町で波佐見焼の絵付けに生きる職人・馬場青子。器や波佐見焼をもっと知ろうと実際に陶芸を始め、土を触るなかで、器が手に馴染む感覚を肌で感じたとコメントを寄せている。

かつてギャルを演じるために雑誌をめくり、画面の中の指先の動きを観察していた彼女は今、役の心に触れるために自らの手で土を触っている。

腕の上の小さな命を優しくなでていたあの人が、次はどんな手つきで、どんな青子の人生を見せてくれるのか。楽しみだ。


※記事は執筆時点の情報です

の記事をもっとみる

注目コンテンツ