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25年前、化粧品のCMに映った【美しい青年】KinKi Kidsの後ろでピアノを弾いていた“アーティスト”とは?

  • 2026.9.26
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2001年8月、『neue MEN'S』のCM撮影現場より(C)SANKEI

テレビの画面に、整った顔立ちの若い男が映る。男性化粧品のCMだ。そして流れているのは、その本人が歌う曲だった。顔を覚えるのと、声を覚えるのが、ほとんど同時だった。

ソロとして歩き出してまだ日が浅かった頃のGACKTは、とにかく勢いがあった。細く長い髪、色の薄い瞳、ひとつひとつの仕草まで作り込んだ佇まい。そこから出てくる声は、見た目の耽美な印象を裏切るように張りがあって、高いところまでまっすぐ伸びた。画面の前の多くの人には、この秋に初めてきちんと出会った顔と声だったはずだ。

その出会いの入口になったのが、短く、速く、駆け抜けるように終わる1曲だった。

GACKT『ANOTHER WORLD』(作詞・作曲:Gackt.C)ーー2001年9月5日発売

駆け抜けて終わるから何度でも戻ってくる

この曲の良さは、まず速さにある。鳴り出した瞬間から前へ前へと進み、立ち止まる場面がほとんどない。歌が始まってサビへたどり着くまでの距離が短く、聴き手が身構える前にいちばん高いところへ連れていかれる。そして気がつくと終わっている。

その短さが、この曲を何度も聴かせる。長く重いバラードなら一度で満腹になるところを、この曲は物足りなさを少しだけ残して終わる。だからもう一度、と手が伸びる。

歌詞の世界は、大切な誰かと一緒に、いま居る場所とは別の世界へ向かおうとする。その願いを、湿った調子ではなく、走りながら叫ぶように歌うのがこの曲の顔だ。詞も曲も本人の手による。編曲にはギタリストのCHACHAMARUが連名で加わっている。自分の声がいちばん映える速さと高さを、自分で決めて書いた曲だからこそ、歌と演奏の熱が同じ方向を向いている。

顔と声がいっぺんに画面から届いた秋

この曲は、資生堂の男性化粧品『neue MEN'S』のCMソングだった。しかもCMには本人が出ている。歌っている人の顔がそのまま画面に映り、その人の歌が流れる。曲と人が一度に覚えられる構図は、CMソングとしてこれ以上ないほど強い。

2001年の秋は、まだテレビが音楽を運ぶ主役だった時代だ。CMの合間にサビだけを何度も浴び、歌番組でフルサイズを聴いて、翌週にはまたCMで出会う。その繰り返しのなかで、耽美な世界観の歌い手というそれまでの印象は、いつのまにか「高い声で走る歌の人」に塗り替えられていった。

面白いのは、映像の側が明るい顔だけを見せていなかったことだ。この曲のミュージックビデオは香港で撮影され、抗争に巻き込まれた男が復讐へ向かう物語仕立てだった。CMでは化粧品の顔として整った表情を見せ、ビデオでは夜の街を走る。同じ曲の上に、まったく違う二つの顔が乗っている。若いソロ歌手が、自分の見せ方をひとつに絞らず、両方まとめて世に投げてみせた時期だった。

日曜の夜に楽器を持って笑っていた

この年、GACKTは毎週日曜の夜にもテレビにいた。フジテレビ系の音楽バラエティ『堂本兄弟』のレギュラーとして、2001年4月から2003年3月まで出演していたのだ。

番組の中心にいたのはKinKi Kids(現・DOMOTO)の2人。その後ろで、GACKTはピアノを弾き、トークの輪に加わっていた。ステージで見せる張りつめた表情とは違い、そこにいたのは楽器を持って笑う、まだ若い音楽好きの青年だった。

年の暮れに大きな舞台へたどり着く。GACKTはこの曲で、第52回NHK紅白歌合戦に初めて出場した。ソロとして歩き出してからそれほど経っていない歌い手が、自分で書いた曲を持って大晦日の舞台に立つ。緊張する暇を与えないまま、サビの高いところへ駆け上がって、あっという間に終わる。この曲の形そのものが、大舞台に立つ若い歌い手にいちばん似合っていた。

走り出した人にしか出せない勢い

あらためて聴き直すと、この曲にはひとつだけ、後から足せないものが閉じ込められている。走り出したばかりの人の勢いだ。

声はまだ荒削りなところを残しながら、サビで高いところへ跳ぶ瞬間だけは迷いがない。うまく歌おうとする前に体が先に出ている、その一点の迷いのなさが、この曲を聴いて鳥肌が立つ正体だ。

GACKTの曲のなかで、いちばん凝った曲でも、いちばん深い曲でもないかもしれない。だが、いちばん若い曲だ。いま聴いても、サビへ跳ぶ直前にこちらの背筋がひとりでに伸びる。跳んだ先で声が伸びきる一瞬、聴いている側の喉までつられて開く。頭で追いつくより先に、体のほうが応えてしまう速さだ。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。

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