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25年前、ミュージカルの貴公子が自ら手がけた“瑞々しいデビュー曲”【18歳の実力派】が放った歌とは?

  • 2026.9.26
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2002年3月、初のホールライブで熱唱する中川晃教(C)SANKEI

いま、中川晃教の名前は、舞台の人として語られることが多い。ミュージカルの主演俳優、賞をいくつも持つ実力派。その肩書きは正しい。だが当時、この声を最初に受け取った聴き手は、その先を知らなかった。テレビのドラマの終わりに流れてくる、高いところまで迷いなく届く男性の声。詞も曲も本人が書いた、というひと言だけを添えて、それはお茶の間に届いていた。

中川晃教『I WILL GET YOUR KISS』(作詞・作曲:中川晃教)ーー2001年8月1日発売

ピアノの伴奏と、その上を伸びていく声。当時の日本のポップスには、女性シンガーを中心にブラックミュージックの影響を受けたラブソングが多く並んでいた。そのなかに、少年の面影を残した声で、しかも自分の言葉で歌う新人が現れたことの意味を、この曲は今あらためて教えてくれる。舞台で磨かれた現在の声から聴き直すと、この曲は起点として立っている。

高いところで力まない声とピアノの呼吸

この曲の聴きどころは、声がどこまで上がるかではなく、上がったあとにどう響くかにある。声量のあるハイトーンという形容があったが、実際に耳を打つのは、高い音域に入ってからの声が細くならず、丸みを保ったまま前へ出てくることだ。若い歌い手は高音で勢いに頼りやすい。この声はそこで力まない。息の量で押すのではなく、音そのものを持ち上げるように歌う。

その声を支えるのがピアノだ。伴奏は声の周りを埋め尽くさず、和音を置いては引き、声が上がる場面では道を空ける。声とピアノが交互に呼吸しているような作りで、その間合いがあるから、高い音がむき出しの技巧に聞こえない。海外の影響を感じさせるラブソングでありながら、日本語の母音がはっきり聞こえるのも、この余白のおかげに映る。

詞も曲も、当時18歳の本人が書いている。言葉に飾りは少なく、若さがそのまま残っている。ただ、その若い言葉を運ぶ旋律のほうは、高いところへ向かって段を踏むように上がっていき、頂点で一度ためを作る。言葉の若さと旋律の設計の落差が、この曲を単なる新人の自己紹介ではないものにしている。

妹と歌った番組の画面から見つけられた

デビューまでの道筋は、オーディション番組の激戦とも、路上の下積みとも違う。全国ネットの番組『親の目・子の目』に妹とデュオで出演し、その画面を見た音楽プロデューサーから声がかかった。もっとも、その画面に映る前から歌の積み重ねはあった。小学生の頃からピアノと作曲に親しみ、ヤマハのティーンズ・ミュージック・フェスティバルで入賞している。テレビで見つけられた高校生は、すでに自分の曲を持っている高校生だった。

そうして生まれたデビュー曲は、TBS系のドラマ『マリア』の主題歌としてお茶の間に届いた。ドラマの主題歌としてこの声が流れることで、曲名より先に高い声のほうが覚えられていく。その年の暮れには日本有線大賞の新人賞を受け、新人としての一年はひと区切りを迎える。派手な数字の物語ではないが、声で覚えられた新人という受け止められ方は、この曲の性格をよく表している。

歌手のまま舞台へ運ばれていったハイトーン

デビューの翌年、中川晃教は日本初演のミュージカル『モーツァルト!』に主演する。当時は歌手がミュージカルの舞台に立つことが、まだ当たり前には受け止められていなかった、と本人はのちに語っている。周囲に戸惑いが残るなかでの転身だった。

その初舞台で、文化庁芸術祭賞演劇部門の新人賞、読売演劇大賞の優秀男優賞、杉村春子賞の3つを受けた。ここで思い出したいのは、舞台で評価された声が、デビュー曲で聴かせた声とつながっていることだ。高い音域で細くならず、言葉をはっきり運び、ピアノとの間合いを保つ。それは劇場の後方まで届く歌の条件そのものでもある。

ドラマの終わりに流れていたときは技巧に映ったかもしれない高音が、舞台では物語を運ぶ道具になった。同じ声の、使われ方が変わっただけだ。

2016年には『ジャージー・ボーイズ』の日本初演で主演し、読売演劇大賞の最優秀男優賞を受けた。舞台の受賞歴を並べるより大事なのは、この曲で聴こえていたものが、そのまま舞台の声の芯になったという一点だ。

25周年の場で響く美しいボーカル

2026年11月、東京オペラシティでデビュー25周年記念コンサートが予定されている。発表された演奏予定曲には、このデビュー曲も名を連ねる。

25年を経て聴き返しても、若い声が力まず高音へ伸びていく鮮やかさは失われていないことだろう。その後の舞台経験を知るいまだからこそ、ここにすでに現在へつながる声の輪郭があったことに気づく。劇場で鍛えられた歌声によって、この曲がどんな表情を見せるのか。変化を受け止めるだけの芯が、最初の一曲に刻まれていたことは確かだ。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。

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