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バンド解散1年前に放った【押し負けている男のうた】ソロを過熱させた人気ギタリスト

  • 2026.9.25
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hide-1997年12月撮影(C)SANKEI

X JAPANの新作を待つ時間が、いつ終わるのか誰にも見えなくなっていた。次のアルバム『DAHLIA』の制作は延びに延び、本当に出るのかも不安になる。その静けさの裏で、ひとりの名前だけが妙に忙しかった。hideである。

X JAPANのギタリストとしてではなく、ソロのhideとして、シングルが立て続けに切られ、野外イベントとツアーの告知が重なり、自前のブランドまで立ち上がる。本隊が止まっているぶん、ソロ側に熱が寄っていくような、いびつで、しかし面白い時期だった。その熱のいちばん濃いところに落ちてきたのが、この曲だ。

hide『Beauty & Stupid』(作詞・作曲:hide)ーー1996年8月12日発売

本隊の沈黙とソロの過熱がすれ違った季節

『DAHLIA』は結局この年の11月に発売され、翌年にはバンドそのものが解散を発表する。あとから振り返れば、本隊は長い減速の入口にいた。いっぽうでhideのソロは、9月に千葉マリンスタジアムで野外イベントを打ち、LEMONedを設立するところまで走っていく。ひとりの人間の活動量として見ても、あきらかに過剰だ。

8月に出たこの曲は、その渦のちょうど真ん中に置かれている。直前のシングル『MISERY』が6月に出たばかりで、間を置かずに次が来た。加速している人間の手つきが、そのまま盤に刻まれているように映る。

本隊の停滞とソロの過熱。その落差そのものが、この頃のhideを面白くしていた。曲の明るさは、その空気と地続きに聴こえる。

リフと掛け声が先に身体をつかむ

『MISERY』から2か月弱で届いた通算6枚目。この速さを、hideの側の勢いの証として置いていい。ただ、続けて出た2枚の顔つきはまるで違う。

鳴り出しから、切れのいいギターリフが前に立つ。重さで押すのではなく、短い音の刻みで前へ前へと転がしていくタイプのリフで、暗さがない。歌が始まる前に、身体のほうが先に揺れ始めている。

そこへ被さるのが掛け声だ。曲のタイトルをそのまま叫ぶ声が、要所で聴き手を呼び込む。ひとりで聴いていても、つい一緒に口が動く仕掛けで、ライブの客席を最初から想定して組まれた音に映る。呼びかけと応えを曲の中に組み込んでいるから、聴き手は自然に観客の側に立たされる。部屋で聴いていても、音のほうが勝手に会場を作ってしまう。

サビのメロディは一度で覚えられる。低いところで溜めてから、勢いよく上へ抜ける上がり方は、ヴィジュアル系の様式にある耽美や湿り気とは別の場所にある。派手で、軽くて、やたら明るい。

重さを抜いたまま、勢いだけを残す。この配合が、曲の面白さの半分を作っている。

勢いの頂点で歌われた男の負け

そして詞である。これだけ勢いに乗っていた男が、曲の中で何を歌っているかといえば、女性の前で押し負けている男の話だ。

「惚れちゃったら負けちゃってるよね」。この一言が置かれた時点で、歌の中の男はもう分が悪い。強がろうとして強がり切れない男のこっけいさが、ギターリフの威勢のよさと並んで走る。この落差を、hideは真顔で楽しんでいるように映る。歌い方も、負けを嘆く調子ではない。軽く、はねるように言葉を放って、情けなさを湿らせない。

ソロの活動量が頂点へ向かっていた8月に、本人がいちばん威勢よく鳴らした曲の中身が、情けない負け宣言だった。この取り合わせに、hideという人の茶目っ気を感じる。

強がりと脱力を一曲の中で同居させて、しかも重くしない。X JAPANの沈黙を埋めるように走っていたソロのhideが、走りながら片目をつぶってみせた。この曲を聴き直すたびに、あの過熱した時期のいちばん軽やかな顔が戻ってくる。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。

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