1. トップ
  2. エピソード
  3. 60代男性の搬送中、救急車内で鳴り続ける“携帯電話”→違和感に気づいた救急隊員がかけた一言とは…

60代男性の搬送中、救急車内で鳴り続ける“携帯電話”→違和感に気づいた救急隊員がかけた一言とは…

  • 2026.9.13
undefined
出典:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。ライターのとしです。

救急車の中は、傷病者だけでなく、付き添う家族にとっても緊張する場所だと思います。

今回は、胸の苦しさを訴えた60代男性を搬送する際、同乗していた妻の様子が気になった事案をご紹介します。

胸の苦しさを訴えた60代男性

あるとき、60代男性が体調不良を訴えているとのことで、妻から救急要請が入りました。

現場へ到着すると、男性の意識はしっかりしており、救急隊からの質問にも答えることができました。

ただし、本人は胸の苦しさを訴えていたため、救急隊は症状や既往歴、発症時の状況などを確認しながら観察を進めました。

その後、男性を救急車内へ収容。

受け入れ可能な医療機関への連絡を行い、搬送先も無事に決まりました。

あとは医療機関へ向けて出発するだけというタイミングでした。

そのとき、同乗していた妻の携帯電話が鳴り始めました。

鳴り続ける携帯電話を見つめる妻

一度電話が切れても、少しするとまた着信がありました。

妻はそのたびに携帯電話の画面を確認していましたが、電話には出ようとしません。

ただ、画面を見つめる表情はどこか不安そうでした。

救急車の中という特殊な状況だったため、電話に出てもいいのか迷っているようにも見えました。

そこで私は、

「大事な電話でしたら、出ても大丈夫ですよ」

と声をかけました。

妻は少し迷ったあと、電話に出ました。

相手は夫婦の息子でした。

息子は父親が救急車で搬送されることを知り、現在どのような状態なのか、どこの医療機関へ向かうのかを知りたかったようです。

妻は電話口で、

「今、救急車の中で……」

と説明しようとしていました。

しかし、夫の状態を心配している中で、現在の状況や搬送先について順序立てて説明するのは難しそうでした。

言葉に詰まったり、救急隊の方を見たりしながら、どのように伝えればいいのか迷っている様子でした。

「こちらから説明することもできますよ」

そこで妻に、

「よければ、こちらから説明することもできますよ」

と伝えました。

妻から了承を得て、携帯電話を代わります。

電話口の息子に、まず救急隊が父親を観察していることを伝えました。

そのうえで、意識はしっかりしていること、胸の苦しさを訴えているため救急搬送することになった経緯を説明しました。

息子からも、

「父は大丈夫なんでしょうか」
「どこの病院へ向かえばいいですか」

といった確認がありました。

救急隊として分かる範囲の状況を説明し、搬送先の医療機関を伝えました。

必要な情報を伝え終えたあと、電話を妻へ返しました。

妻も息子と話ができたことで、少し安心したように見えました。

救急車内では、傷病者の観察や処置が最優先です。

ただし、それに支障がない状況であれば、家族が必要な連絡を取ることまで禁止しているわけではありません。

今回のように、付き添っている家族自身が不安の中にいて、離れた家族へうまく状況を説明できないこともあります。

そのような場合には、状況に応じて救急隊が説明を手伝うこともあります。

無事に医療機関へ

電話でのやり取りを終えたあと、救急車は受け入れ先の医療機関へ向けて出発しました。

搬送中も男性の状態を継続して観察しましたが、大きな容態変化はありませんでした。

その後、無事に医療機関へ到着。

現場からの経過や観察した内容を医師へ申し送り、無事に引き継ぎを終えました。

救急搬送では、どうしても傷病者本人の状態に目が向きます。

しかし、その隣にいる家族も、突然の出来事に大きな不安を抱えていることがあります。

「電話に出てもいいのだろうか」

「家族にどう説明すればいいのだろうか」

そうした戸惑いに気づいたとき、救急活動に支障がない範囲で声をかけたり、必要な説明を手伝ったりすることも大切だと感じた事案でした。


ライター:とし

元救急隊員。消防で17年、主に救急隊として活動し救急救命士資格を取得。現場経験をもとに、救急の分かりにくい部分を一般向けに噛み砕いて発信しています。


【エピソード募集】日常のちょっとした体験、TRILLでシェアしませんか?【2分で完了・匿名】

の記事をもっとみる

注目コンテンツ