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ヴェネチア・ビエンナーレ帰国展「毛利悠子 Recompose」が横浜美術館で開催中

  • 2026.8.27
毛利悠子 撮影:竹久直樹

2年に1度開かれる「ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展」では、主要な国々がパビリオンを構え、その国の代表となるアーティストが展示を行う。横浜美術館で開かれている「毛利悠子 Recompose」は、2024年の第60回ヴェネチア・ビエンナーレの日本館で展示を行った毛利悠子の帰国展だ。

ヴェネチアでの展示と帰国展には2年の時間と、ヴェネチアと横浜との間の距離という違いがある。ヴェネチアでの展示のタイトルは「Compose」だった。「Compose」には作曲、構築の意味があるが、comは「ともに」、poseは「置く」という意味がある。共存、共生の意味を問いかけるタイトルだ。その言葉が横浜では再構築を意味する「Recompose」へと変化している。

空間と密接に関わる作品を制作している毛利にとって、展示空間がどのような場であるのかは重要だ。ヴェネチアの日本館はル・コルビュジエに師事した吉阪隆正が設計した、やや特異な建築になる。

「日本館自体、ある種ワイルドな空間で、床に穴が空いていたりするんです。そこから風や虫が入ってきたりする」(毛利)

第60回ヴェネチア・ビエンナーレ日本館「Compose」展示風景(2024)(主催:国際交流基金) 撮影:久家靖秀

一方、横浜美術館での会場となっている「ギャラリー9」は2024年の改修で新しく展示空間となった場所だ。もともとは外部空間だったところにガラスの壁をたてて内部空間としている。三方がガラスなので内外に視線が通る。

ヴェネチアでも横浜でも毛利は「モレモレ」と「Decomposition」という2つのシリーズを展示している。「モレモレ」はバケツなど日用品を組み合わせて水の循環システムを構築するというもの。「Decomposition」はフルーツに電極を刺したものを中心にしたオブジェだ。水は流れていくし、フルーツも日が経つにつれて熟し、変化していく。

「『モレモレ』はスケッチを描いてその通りつくるというよりも、その場所で手に入れた日常的なアイテムで水を漏らすということから始めて、その漏れてきた水にどう対応するかというゲームのような感覚で水を循環させていく彫刻です。『Decomposition』は展示している間にフルーツが朽ちて、乾燥していく。そのフルーツに電極を刺して電気が流れる抵抗値を測定したり、その信号を使って電球を光らせたり音を鳴らしたりしています。フルーツの信号を使ってcompose(作曲)する作品です。こんなふうに固定されない、変化していく素材とどうコラボレーションできるか、ということに興味がある」

横浜美術館で開催中の「毛利悠子 Recompose」展示風景。 撮影:竹久直樹
展覧会「毛利悠子 Recompose」より、「Decomposition」の展示風景。 撮影:竹久直樹

ヴェネチアでは「compose」、ともに置くという言葉のとおり現地で材料を集めて即興的につくり上げたという。そこで使ったフルーツはコンポストで処理して土にして、ビエンナーレ会場の庭に撒いてきたのだそう。

「会期中もフルーツは変化しているから、ヴェネチアですでに『recompose』は始まっていたんです。この『recompose』という言葉はそもそも私がやりたかったことに近いものだと思いました」

それを毛利は「共同体」という言葉で表現する。

「私自身が100パーセント構想してつくり上げるというよりも、偶然出合ったものや状況と小さな交渉を続けながら地道につくっていく。変化だったり思いもよらないできごとを受容したり拒否したりしながらできていくもの、自分で見つけたものを少しずつ集めて建物の中で構成するもの、こうして生まれたものが“共同体”だと思いました」

その“共同体”には水の流れや乾燥していくフルーツ、虫や土も含まれる。その中には予想もしない振る舞いをするものもあって、私たちはいつもそれにどう向き合うのかを問われている。

ヴェネチアでの展示から2年、その間に世界ではさまざまな事件が起きた。

「2年前には想像し得なかった社会の動きに絶望しているので、そんなときに自分にできることって何だろう、と思った。トップダウン的な考え方ではない、自分の周りで何かできることで抵抗していくというボトムアップ的なやり方の方がしっくりくるところがある」

横浜美術館での毛利の展示は入場無料であり、ガラス張りの展示室の外から中の作品が見えるということにも意味がある、と毛利はいう。

「美術に興味がない人も子どもも、何度でも来ていい場所だし、絵を描かないといけないということもない。遊び感覚でつくること自体も一つの抵抗なのかな、といったことも考えています」

ヴェネチアも横浜もともに港町であり、外部からのものや情報がいち早くもたらされる場所だ。

「コロナ禍で盛んに言われた『隔離』(quarantine)という言葉ができたのがヴェネチアなんですよね。外から来たものを隔離しながら輸入するというシステムがあったところです。横浜も外国からもたらされたものや外国由来のものがいっぱい残っていたりしますが、同じ港町といっても一様ではない。テンポが違うように思うし、日本とイタリアとでは水との関係も違うように思います」

内外からさまざまなものが行き交う地で展示される、共同体を暗示する毛利のアート。ヴェネチアで生まれて横浜にやってきた、移り変わる水やフルーツが観客とともにさまざまな和音や不協和音を奏でる。

「毛利悠子 Recompose ー 第60回ヴェネチア・ビエンナーレ日本館帰国展」

〜2026/11/23、横浜美術館 ギャラリー9(神奈川県横浜市西区みなとみらい3-4-1)

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