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パリ・オペラ座バレエ団芸術監督ジョゼ・マルティネスが考える、エトワールにふさわしいクオリティ。

  • 2026.9.22

パリ・オペラ座バレエ団の階級社会の階段をダンサーたちは毎年開催される昇級コンクールで上がってゆく。カドリーユに始まり、コリフェ、スジェ、プルミエと続く。最高位のエトワール(生涯称号)については芸術監督が提案し、総裁が任命する仕組み。ピラミッドの頂点に立てるダンサーの数はごく一握り。2022年12月の芸術監督就任以来、ジョゼ・マルティネスは女性3名、男性3名を任命した。彼が考える、エトワールにふさわしいクオリティは何なのだろうか。

©Julien Benhamou/ OnP

エトワールとは特別な磁力を持つダンサー。

「最近、あらためて考えていたところです。それはほかの人にはない特別なものを持っていること。クラシックかコンテンポラリーかといったことではなく、特殊な磁力の問題なんです。たとえばマチュー・ガニオが若い頃、ステージに彼が登場しただけで観客は息をのみました。これなんです。あらゆる人の視線を惹きつける魅力を持っていることです」というのがジョゼの答えだった。

ギヨーム・ディオップの任命から3年以上が経過。女性に比べて男性のエトワールが少ない状況でもジョゼの任命速度は減速気味だったところ、6月21日、『ラ・バヤデール』でソロル役を踊ったトマ・ドキールをエトワールに任命した。

「過去を振り返ると、僕が任命される前、5年の空白がありました。だから3年間何もないというのは珍しいことではない。僕は自分の選択に確かでありたいといつも思っています。たとえば若すぎる任命は、そのタイトルを背負う重みやプレッシャーに押し潰されることなくダンサーが進化していけるかどうか、そのダンサーのキャリアに危険があるのでは、と慎重になります。それでここのところプルミエ・ダンスール、スジェ、コリフェまで主役に配役して、カンパニーの男性ダンサーたちをしっかりと見るようにしていました」

大勢にチャンスを与えることによって、カンパニーにポジティブな結果をもたらすことも彼は見逃していない。それが任命を減速気味にしていた理由でもあるようだ。

「エトワールが増えるとプルミエたちの出番がなくなってしまう。この配役法だと『もしかしたら自分が?』という思いから多くのダンサーが200%の力を出すことで、とても美しいエネルギーが舞台に生まれます。彼らが無意識のうちに一層の努力をすることによって、カンパニー全体が引き上げられることになります。ダンサーたちに期待を与えることは、バレエ団を活性化するひとつの手段になりますね」

彼にとってパリ・オペラ座は21世紀のカンパニー。古典作品、コンテンポラリー作品、クラシックのテクニックを用いた今日のクリエイションを踊るカンパニーだ。最近のオペラ座にはコンテンポラリー作品目当てで足を運ぶ新しい観客も増えている。

これまでコンテンポラリー系のダンサーにとっては、クラシック作品の課題曲が高いハードルとなり、コンクールで昇級しにくい現実があった。昨年、ジョゼは課題曲をクラシック、ネオクラシック、コンテンポラリーの3種からの選択という方式を試してみた。その結果、いまやコンテンポラリー作品に欠かせないダンサーであるルー・マルコー=ドゥルアールが、入団7年目にコリフェに昇級した。

「ダンサーにチョイスを与えたのは良いことでした。希望する芸術面での踊りをプレゼンする機会が得られ、ダンサーたちからも好評で受け入れてもらえました」

ポアントで踊る現代作品を未来へ。

彼が団員だった時代、コンクールによって昇級してオペラ座のヒエラルキーを上がってゆくことは刺激的だったと振り返る。自分の限界を超え、より遠くへいたりたいという願いがそこにあった、と。パリ・オペラ座といったらイコール、クラシックバレエのカンパニーだった時代のことだ。いまはコンテンポラリー作品を目指してオペラ座にやってくる観客もいる時代である。コンクールが変われば、彼が作る年間プログラムも進化している。

「さまざまなタイプのコンテンポラリー作品があり、新しい客層が生まれています。このままフォローし続けてほしいですね」

こう期待するジョゼ。来シーズンのプログラムはガルニエ宮が工事に入る前の最後のシーズンである。バスティーユとオペラ座の外の劇場での公演となるその翌シーズンも見据えてのプログラム制作という、通常版とは異なる作業となったが、シーズンすべてが自慢の出来だと語る。過去の優れた女性振付家や若い振付家による、観客にもダンサーにも発見してもらいたい作品を彼は含めた。特にカティ・マルソンによる創作については要注目だ。

「これは僕の就任以来、ポアントで踊るストーリー性のある初のクリエイションなんです」と。パリ・オペラ座の伝統と格式を護りつつ、いまを生きるカンパニーとして輝き続けるためのプログラムであることを示した。オペラ座バレエ団、来シーズンの公演も楽しみだ。

ジョゼ・マルティネス
José Martinez

2022年12月、パリ・オペラ座バレエ団芸術監督に就任。24年に設立されたジュニアバレエ団の芸術監督も兼任。彼がエトワール時代に創作したクラシックバレエの技術を用いた『天井桟敷の人々』が、来シーズン再演される。

*「フィガロジャポン」2026年9月号より抜粋

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