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30歳ひきこもり長女、障害年金「500万円」を受給できず?20歳前に受診した人が陥る“時効5年”の落とし穴【社労士解説】

  • 2026.8.25
20歳よりも前に初診日を迎えた人が障害年金の請求時に陥りやすい落とし穴とは?(画像はイメージ)
20歳よりも前に初診日を迎えた人が障害年金の請求時に陥りやすい落とし穴とは?(画像はイメージ)

筆者のファイナンシャルプランナー・浜田裕也さんは、社会保険労務士の資格を持ち、病気などで就労が困難なひきこもりの人を対象に、障害年金の請求を支援する活動も行っています。

浜田さんによると、障害年金には5年の時効があるといいます。ただ、時効が5年だからといって、過去にさかのぼって請求できる期間が現時点から5年前までというわけではないということです。

では5年の時効はどのような時に適用されるのでしょうか。過去にさかのぼって請求するためには何が必要になるのでしょうか。ある家族を例に浜田さんが紹介します。

障害年金の請求方法は2パターンのみ

美羽さんの受診の経緯
美羽さんの受診の経緯

今回の相談者は、30歳の浦和美羽さん(仮名)の母親。障害年金の請求方法で相談があるとのことで、私は事情を伺いました。

美羽さんは中学生だった15歳の時にストレスで体調を崩し、児童精神科を受診したそうです。その後も体調が回復することはなかったため、高校は通信制に進学することにしました。しかし次第に勉強に集中することが難しくなり、17歳の時に高校を中退。

時を同じくして児童精神科の通院もやめてしまい、ひきこもりのような生活を送るようになりました。

自室からほとんど出ていない生活を続けてきたせいか、美羽さんのうつ状態はだんだん重くなっていきました。あまりのつらさから25歳の時に精神科を受診。30歳になる現在まで同じ精神科に通っているそうです。

美羽さんにはうつ病があり、働くことが難しい状態にあります。美羽さんの国民年金保険料は父親が代わりに納めていたとのことなので、障害基礎年金の請求が可能です。

しかし、美羽さんが20代の頃に請求することはありませんでした。どうやら、若くして障害基礎年金を受給することにためらいや負い目があったそうです。

そんな美羽さんも30歳になりました。依然として就労の見通しも立っていないため、母親や医師の勧めにより、障害基礎年金を請求することに決めたそうです。

しかし、ここで困ったことが起こってしまいました。美羽さんの場合、障害基礎年金は過去にさかのぼって請求することはできず、30歳になった現在から請求するしかないということだったのです。この請求方法に疑問を持った母親は、私に相談することにしたそうです。

そこまで事情を伺ったところ、母親は質問をしました。

「障害基礎年金の時効は5年と聞いたことがあります。だったら今から5年前の25歳の状態を証明した診断書を入手して請求することはできないのでしょうか」

「残念ながらそれはできません。確かに障害基礎年金の時効は5年ですが、それと請求方法は別物だからです」

私はそう言い、まずは障害年金(障害基礎年金および障害厚生年金)の請求方法を説明することにしました。

障害年金の請求方法は2パターンあります。

(1)障害認定日による請求(2)事後重症による請求

まずは(1)の障害認定日による請求です。その障害で初めて医師などの診療を受けた日を初診日といいます。その初診日から1年6カ月を経過した日を「障害認定日」といいます。

この1年6カ月を経過した日から3カ月以内の障害状態を証明した診断書を入手することで、障害認定日による請求ができます。

仮に障害認定日による請求が認められた場合、障害認定日の翌月分から障害年金が受給できます。

なお、障害認定日の診断書に有効期限はありません。一度入手しておけばずっと使用できます。

次は(2)の事後重症による請求です。これは障害認定日に法令に定める障害状態に該当しなかった、または障害認定日当時の診断書が入手できなかった場合に行う方法です。現在の障害状態を証明した診断書を入手することで、事後重症による請求ができます。

仮に事後重症による請求が認められた場合、請求日の翌月分から障害年金が受給できます。

なお、事後重症による請求の診断書には有効期限があるので注意しましょう。具体的には、現症日(障害状態を証明した日)から3カ月以内となっています。有効期限が過ぎてしまった診断書で事後重症による請求をすることはできません。

私はさらに補足しました。公的年金に加入する20歳よりも前に初診日があり、かつ初診日から1年6カ月を経過した日が20歳よりも前だった場合。例外として、障害認定日は20歳に達した日(20歳の誕生日の前日)となります。

以上のことを美羽さんに当てはめると、次のようになります。

・15歳の時に初診・17歳で受診中断・20歳の時に障害認定日を迎える。・25歳で受診再開

事後重症による請求の場合は速やかに請求することが望ましい

美羽さんの場合、17歳から25歳まで受診なし。20歳の障害認定日当時は受診していなかったため、当時の診断書は入手できません。そのため、認定日による請求はできません。

つまり、過去にさかのぼって請求することはできず、現在の状態をもとに事後重症請求する必要があります。

その説明を聞いた母親はさらに疑問を口にしました。

「では5年の時効はどのような時に適用されるのでしょうか?」

「仮にお嬢さまが20歳当時も受診しており、30歳になった現在に20歳当時の診断書(障害認定日の診断書)が入手できたとします。その結果、障害認定日による請求が認められた場合、障害基礎年金は20歳から30歳までの過去10年分をさかのぼって振り込んでほしいところです」

私は話を続けました。

「しかし、時効が5年のため『25歳から30歳までの過去5年分しかさかのぼって支給されない』ということになるのです」

「そうなのですね。時効が5年だから、今から5年前の25歳から請求できるものだと思っていました。ちなみに、長女の場合どのようにすればよかったのでしょうか」

「お嬢さまが25歳で精神科を受診した後、すみやかに事後重症による請求をしていればよかったということになります。もしそれが認められていれば、25歳から障害基礎年金が受給できていたことでしょう」

すると母親は残念そうな表情になりました。

「長女は5年分の障害基礎年金がもらいそびれてしまったのですね…。でも、過去のことを今さら悔やんでも仕方がないですよね。30歳になってやっと請求しようという気になったので、それでよしと考えるようにします」

母親の発言に私は黙ってうなずきました。

そして面談の最後に私は言いました。

「お嬢さまは事後重症請求をすることになります。よって、できるだけ早めに請求をすることが望ましいです。お嬢さまの同意が得られれば、私もご協力することができます。障害基礎年金に必要な書類は、診断書以外にもたくさんあります。ご家族だけで請求準備をすると時間がかかることもあるので、私のような専門家に手伝ってもらうこともご検討ください」

「分かりました。長女にも事情を話してみます。その際はぜひお願いいたします」

面談後、美羽さんから同意を得た私は、まず初診日の証明書(受診状況等証明書)を入手するところから始めました。幸いにも15歳の時に受診した児童精神科にカルテが残っており、無事、受診状況等証明書を入手することができました。

その後、主治医に診断書の作成依頼をするとともに、15歳から現在までの状況をまとめた書類(病歴・就労状況等申立書)を作成していきました。

その他の必要な書類も整備し、私は障害基礎年金の請求をしました。請求から3カ月がたった頃、美羽さんは無事に障害基礎年金の2級が認められました。金額は次のようになります。

【障害基礎年金2級】障害基礎年金 7万608円障害年金生活者支援給付金 5620円合計 7万6228円※金額は2026年度のものでいずれも月額。

もし美羽さんが25歳の時に障害年金を請求して認められた場合、5年間で約460万円を受給できていたことになります。

今回のように、障害年金が請求できる状態にあるにも関わらず、請求をしないまま時が過ぎてしまったというケースはしばしばあります。受給できるはずだった障害年金が時効により、受給できないこともあるため、請求はできるだけ速やかに行う方が望ましいと言えるでしょう。

社会保険労務士・ファイナンシャルプランナー 浜田裕也

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