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学者も「奇妙」と呼ぶ巨大恐竜の仲間を中国で発見

  • 2026.9.30
学者も「奇妙」と呼ぶ巨大恐竜の仲間を中国で発見
学者も「奇妙」と呼ぶ巨大恐竜の仲間を中国で発見 / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

爪切りをサボったままキーボードを打つと、カチカチと音がして、ちょっとした猛獣になった気分になるものです。

恐竜の中には、古生物学者から「解剖学的に奇妙」とまで言われてしまう変わり者のグループがいます。

長い首に小さな頭をのせ、小さな腕の先に巨大な爪を持つ「テリジノサウルス類」です。

そんな中、中国北東部の地層から、この仲間の新種の化石が報告されました。

では、新たに名前がついたこの恐竜は、どんな体を持ち、どんな暮らしをしていたのでしょうか。

研究内容の詳細は2026年7月3日に『Journal of Systematic Palaeontology』にて発表されました。

目次

  • 腕の先に巨大な爪を持つ「奇妙な恐竜」テリジノサウルス類
  • 新種カイラサウルスは、仲間とどこが違っていたのか?
  • 同じ地域に「走る派」と「かむ派」がいた?

腕の先に巨大な爪を持つ「奇妙な恐竜」テリジノサウルス類

腕の先に巨大な爪を持つ「奇妙な恐竜」テリジノサウルス類
腕の先に巨大な爪を持つ「奇妙な恐竜」テリジノサウルス類 / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

テリジノサウルス類は、獣脚類(じゅうきゃくるい:ティラノサウルスのような肉食恐竜と、一部の草食恐竜を含むグループ)の仲間です。

ところが、このテリジノサウルス類は、主に植物を食べていたと考えられています。

見た目も独特で、長い首に小さな頭をのせて2本足で歩き、比較的小さな腕の先に巨大な爪を備えていました。

体は羽毛におおわれ、おなかは少しぽっこりしていたとされます。

海外の科学メディアは、その姿を「ダチョウとグリズリー(ハイイログマ)をかけ合わせて、爪をもっと大きくしたようなもの」とたとえています。

爪は長いもので3フィート(約91センチ)を超え、恐竜で最も長い爪だった可能性もあるといいます。

化石を元にイメージされた画像です(画像1)。

こうしたちぐはぐな特徴のせいで、この仲間が恐竜の家系図のどこに入るのかは、長いあいだはっきりしませんでした。

その謎を解く手がかりになったのが、進化の早い段階で枝分かれした仲間の化石の発見です。

今回の化石が見つかったのは、中国北東部・遼寧省西部の「義県層(ぎけんそう)」という白亜紀前期の地層で、恐竜化石の名産地として知られています。

この地域で見つかる当時の生き物たちは、まとめて「熱河生物群(ねっかせいぶつぐん)」と呼ばれています。

化石はほぼ全身がそろっており、骨がまだ大人になりきっていない若い個体のものでした。

研究チームは、早い段階で枝分かれした仲間の1つとなるこの新種を「カイラサウルス・チャンリエンシス(Kayrasaurus changliensis)」と名づけました。

では、この若い恐竜は、仲間たちと比べてどこが違っていたのでしょうか。

新種カイラサウルスは、仲間とどこが違っていたのか?

新種カイラサウルスは、仲間とどこが違っていたのか?
新種カイラサウルスは、仲間とどこが違っていたのか? / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

まず目を引くのが、その体の大きさです。

熱河生物群のテリジノサウルス類で2番目に大きいのはベイピャオサウルスですが、カイラサウルスはそれと比べても少なくとも1.6倍の大きさがありました。

報道によると、体重は250ポンド(約113キロ)から600ポンド(約272キロ)超と見積もられ、大人のオスのグリズリーに近い重さです。

全長は12フィート(約3.7メートル)近くあり、小さな引っ越しトラックほどの長さだったといいます。

しかもこれは成長途中の若い個体なので、大人になればさらに大きかった可能性があります。

もう1つの大きな特徴が、口の中です。

カイラサウルスのあごには、とても小さな歯がぎっしりと詰まって並んでいました。

報道によれば、歯は下あごに45本、上あごに32本あり、下あごが大きく前に出た受け口だったそうです。

ほかの大型のテリジノサウルス類では、上下どちらのあごでも歯は40本を超えなかったとされ、この数はかなり多い部類です。

さらに下あごの横には三角形の穴が、上あごの鼻先近くには大きな穴が開いていましたが、これらが何の役に立っていたのかは分かっていません。

このほか、首の骨が背中の骨よりずっと長いことや、手の爪の1つに上へ張り出した「くちびる」のような部分があることも含め、ほかの種には見られない特徴の組み合わせを持っていました。

研究チームは、比べる特徴と種の数を増やしたデータを使い、この新種が恐竜の家系図のどこに入るのかも調べ直しました。

その結果、テリジノサウルス類の中の「テリジノサウルス科」というグループが、手の爪の形の違いによって2つの小グループに分かれることが、暫定的に示されました。

あわせて、ベイピャオサウルスを見分けるための特徴の定義も見直されています。

では、この大きな体と歯の多いあごで、カイラサウルスはどのように暮らしていたのでしょうか。

同じ地域に「走る派」と「かむ派」がいた?

同じ地域に「走る派」と「かむ派」がいた?
同じ地域に「走る派」と「かむ派」がいた? / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

研究チームは、骨の形、体重の見積もり、体の動きの力学的なデータを組み合わせて、熱河生物群のテリジノサウルス類の暮らし方を推定しました。

すると、少なくとも2つの異なる暮らし方があった可能性が浮かび上がりました。

1つは、かむ力が強く、がっしりとした体つきで、走るのはあまり得意でないタイプです。ベイピャオサウルスがこのグループに入り、カイラサウルスもここに入る可能性があります。

もう1つは、ジャンチャンゴサウルスやリンユアノサウルスのように、走るのに向いた体を持ち、前あしを使ってエサを集めることに頼っていたとみられるタイプです。

つまり同じ時代・同じ地域のテリジノサウルス類でも、「走る派」と「かむ派」に分かれていたかもしれないのです。

もっとも、かむ力が強いといっても、カイラサウルスが肉をかみちぎっていたとは考えにくいようです。

研究チームは、そのあごと歯について「草食恐竜のグループをより思わせる」と述べています。

ただし研究チームは、こうした見方を厳しく確かめるには、さらなる分析と、より完全で保存状態のよい化石の発見が欠かせないとしています。

巨大な爪と聞くと獲物を引き裂く姿を想像しがちですが、その持ち主たちは植物を食べる恐竜で、しかも同じ場所で「走る者」と「かむ者」に分かれて暮らしていたのかもしれません。

奇妙に見える体のひとつひとつには、それぞれの暮らしに合わせた意味が隠れていた可能性があるのです。

参考文献

Giant, feathered dinosaur with massive claws and tons of teeth found in China (Popular Science)
https://www.popsci.com/science/new-dinosaur-big-claws-therizinosaurus/

元論文

A new therizinosaur from the Early Cretaceous Jehol Biota and ecomorphological patterns among early therizinosaurians
https://doi.org/10.1080/14772019.2026.2710287

ライター

山下 浩介: むずかしい研究を、なるべく分かりやすく伝えたい。専門の言葉はふだんの言葉に置きかえて、身近な例で例える。それで「わかった」「楽しかった」と言ってもらえたら嬉しいです。 好きなのは、通学路や台所や日常の中にある科学。眠っているあいだに記憶が整理される話や、虫の鳴き方に意味がある話のように、読み終わったあとに誰かへ話したくなる研究を探しています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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