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あと一度だけ、あなたに触れたい…言葉では届かない思いを「最後のふれあい」に託す。大人のための甘くほろ苦いオムニバスストーリー【書評】

  • 2026.8.20

【漫画】本編を読む

『あなたに触れたいだけなのに』(つぐみ屋/KADOKAWA)は、「触れたい」という、ごくささやかな願いを描いたオムニバス形式のコミックエッセイだ。恋人や夫婦、友人など、さまざまな関係の登場人物たちを通して、人はなぜ誰かに触れたいと思うのか? という感情を描いている。

本作には、それぞれ異なる人生を歩んできた人々が登場する。子どもを授かることができず、長年レスのまま離婚を迎えた40代夫婦。仕事や育児に追われ、すれ違いながらも人生をともに歩んできた老夫婦。男性経験がないことに長年コンプレックスを抱え続けてきた女性。そして、高校時代から同性の友人へ抱き続けた恋心に区切りをつけようとする女性。どの物語にも共通しているのは、「あと一度だけ触れたい」という、言葉だけでは届かない思いである。

「触れる」という行為は恋愛だけに限ったことではない。手をつなぐこと、肩に触れること、そばに寄り添うこと。その行為が作り出す小さなぬくもりには、愛情や感謝、後悔、別れなど、言葉では言い表せない思いが込められている。本作のひとつひとつのエピソードは、そんな心の機微を描いているためにじんわりと胸に残る。

登場人物も決して特別な人たちではない。ありふれた日常の中で、誰にも打ち明けられない悩みを抱え、人生の節目で迷い、それでも前へ進もうとしている。年齢や性別、立場は違っても、「誰かを大切に思う気持ち」は変わらないということを本作は優しく伝えてくれるだろう。ビターな結末を迎える物語もあるが、不思議と読後には心地よい余韻が残るはずだ。

人生には「もっと早く伝えればよかった」「もう一度だけ触れたかった」と振り返る瞬間がある。本作は、その後悔も否定せず、人と人とのつながりの尊さを描いているのだ。誰よりも大切に思う存在がいる人は、ぜひ手に取ってほしい作品だ。

文=七井レコア

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