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医師から『認知症』と診断された70代母→数年前から起きていた“身体の異変”に「あのとき放置しなければ…」家族が後悔したワケ

  • 2026.9.1
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

みなさま、こんにちは。認知機能を含め日々患者さんと向き合う麻酔科専門医の松岡雄治です。

「音による刺激」が届きにくくなることで脳への情報入力が減少し、認知機能の低下につながる事実をご存じでしょうか。

「テレビの音量が上がっているよ」と家族から指摘されても、「生活に困っていないから」と補聴器の利用を拒み続けていた70代女性のAさん。

しかし数年後、会話の辻褄が合わなくなり外出頻度も減ったAさんは、医師から認知症の進行を告げられます。家族と笑い合いながら過ごしていた穏やかな日常は失われ、「あのとき放置しなければ」と家族が後悔しても、一度低下した脳の機能を取り戻すことは困難です。今回は「聞こえの低下」がどのようにして脳の機能を奪っていくのかについて詳しく解説します。

耳が遠くなることが、なぜ脳の機能低下につながるのか

耳からの信号が途絶えることで、脳の聴覚に関わる領域への刺激が減り、脳全体の働きの低下を引き起こしやすくなるためです。

なぜ「耳が少し遠いだけ」の油断が、認知機能の低下に直結するのでしょうか。これは、難聴がもたらす事態が連鎖して脳の働きを落としていく「カスケード仮説」というドミノ倒しのような仕組みが関連しています。

【難聴が認知機能に影響を与えるメカニズム】

  • 入力信号の途絶:聴力が落ちると、耳から脳へ送られる音声信号が減少します。
  • 認知的負荷の増大:少ない音から無理に言葉を推測しようと、脳が過剰なエネルギーを消費します。このとき思考や記憶に回す余力が奪われます。
  • 脳への刺激減少:聞こえないことで刺激が届かなくなった脳の聴覚ネットワークは、活動が減り、次第に情報の処理能力が低下していきます。

「まだ大丈夫」という心理と、補聴器がもたらす未来

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

「補聴器はピーピー鳴って煩わしい」「年をとれば耳が遠くなるのは当たり前だ」。ご本人がそう主張したり、ご家族も「本人が嫌がるなら」と見て見ぬふりをしてしまうのは、人間としてごく自然な心理です。高価で扱いが難しそうな補聴器を敬遠するお気持ちを、誰も責めることはできません。

しかし、加齢性の難聴をそのまま放置すると、聞き取りの疲れから会話が億劫になり、次第に「社会的孤立」を招くリスクもあります。この孤立が脳への刺激をさらに奪い、認知機能の低下を早めてしまう要因になるのです。

世界保健機関(WHO)のレポートでも、難聴は認知症の予防・対策において見直すべき大きなリスク因子として位置づけられています。補聴器の早期装用は、認知機能への悪影響を軽減し、生活の質を保つ可能性があるのです。補聴器は単なる「音を大きくする機械」ではなく、社会との繋がりと脳の健康を保つための大切なツールとなる可能性があります。

進行を防ぐために、確認すべき3つのサイン

認知機能低下を招く前に、ご家族の「聞こえ」を振り返ってみてください。以下のサインがある場合、脳への入力信号が減り、負担がかかっている可能性があります。

1. 何度も聞き返したり、適当に相槌を打つ

音が脳に正しく届いておらず、会話の文脈を推測することに疲れ、コミュニケーションを諦め始めているサインです。

2. 複数人の会話に入れず、黙り込むことが増えた

周囲の雑音の中から、人の言葉だけを聞き分ける脳の処理能力が衰えている状態です。

3. テレビの音量が以前より目立って大きくなった

加齢により、高い周波数の音(電子音や女性の声など)から徐々に聞き取れなくなっているサインです。

聞こえの衰えを放置せず耳鼻咽喉科を受診して脳の健康を守る

加齢に伴う難聴を放置すると、脳への音声情報入力が途絶えて聴覚ネットワークの活動が低下するだけでなく、過度な聴取ストレスや社会的孤立を招き、認知機能の低下を早めてしまうおそれがあります。

聞き返しが増える、テレビの音が大きくなる、複数人での会話についていけないといったサインは、脳へ届く信号が滞っている警告です。

「歳だから」と自己判断して放置せず、聞こえに違和感を覚えた際は補聴器店へ直接行く前に耳鼻咽喉科を受診しましょう。適切な診療を受けることがコミュニケーションを豊かに保ち、将来の認知機能低下を予防する第一歩となります。


監修者・執筆:松岡 雄治
総合病院や大学病院、小児専門医療機関での勤務を通じて、幅広い診療科の周術期管理に従事。現在は急性期病院の麻酔科医として最前線の医療に携わっている。専門医としての高度な医学的知見を活かし、医療・健康・美容分野でのコラム執筆や医学論文の解説などを幅広く手掛ける。医療AI技術開発プロジェクトへの参画など多岐にわたる実績を持ち、読者に寄り添った分かりやすい医療解説に定評がある。保有資格は麻酔科専門医、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級など。

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