1. トップ
  2. ヘルスケア
  3. 「生理が遅れているしお腹が痛む…」鎮痛剤を飲んで放置→数日後、30代女性を襲った“悲惨な事態”に「早く病院に行っていれば…」

「生理が遅れているしお腹が痛む…」鎮痛剤を飲んで放置→数日後、30代女性を襲った“悲惨な事態”に「早く病院に行っていれば…」

  • 2026.9.2
undefined
出典元:photoAC(※画像はイメージです)

周術期管理や救急・全身管理において、多様な疾患をお持ちの患者さまの安全管理に携わっている麻酔科専門医の松岡雄治です。

「生理が少し遅れているし、お腹がチクチク痛むけれど、いつもの生理不順や生理痛だろう。痛み止めを飲めば大丈夫」。仕事や家庭、日々の忙しさに追われ、つい健康を後回しにしがちな30代のAさん。

しかし数日後、これまでにない突然の強い腹痛が襲いました。救急搬送されて告げられた病名は、受精卵が子宮以外の場所に着床してしまう「異所性妊娠の破裂」。

手術によって一命は取り留めたものの、片方の卵管を失い「早く病院に行っていれば…」という後悔を抱えています。
なぜ、ただの生理の遅れや痛みが、数日のうちに命に関わる出血へと発展してしまったのでしょうか。

異所性妊娠の破裂は、お腹の中で静かに進行する

なぜ、正常な妊娠とは異なり、卵管などに着床すると重大な事態を招くのでしょうか。卵管破裂に至るメカニズムは、以下のように進行します。

【お腹の中で異常が進行するフロー】

  • 異常な着床:受精卵が、卵管の癒着や損傷などを原因として子宮にたどり着けず、狭い卵管内に迷い込むようにして定着(着床)して発育を始めます。
  • 限界までの成長:子宮と異なり、卵管は胎児を育てるように伸びる構造ではありません。受精卵が成長するにつれて壁が極限まで引き伸ばされます。
  • 卵管の破裂(腹腔内出血):妊娠6〜16週頃に卵管が限界を迎え、耐えきれずに破裂します。周囲の血管を巻き込み、お腹の中に大量の血液が漏れ出します。
  • ショック状態(生命の危機):持続的な出血により急速に血圧が低下し、自覚のないまま突然の失神やショック状態に陥ることもあります。
     

「生理なんて不順で当たり前」「仕事があるから多少のお腹の痛みは乗り切らなきゃ」。毎日を一生懸命に生きる皆さんが、体の異変をいつものことと受け流し、様子を見ようとするのはごく自然な心理です。

しかし、本症例を通じてぜひお伝えしたい「注意すべき境界線」があります。実は、異所性妊娠はすべての妊娠の約1〜2%に発生する、決して珍しくない病気です。
通常、生理は、子宮の強固な筋肉に守られた内膜が剥がれる生理現象で、破裂を伴うことはありません。一方、卵管などの子宮外の組織は、育ちゆく命を支える構造を持っていません。特にクラミジアなどの性感染症や子宮内膜症による卵管への影響、骨盤内手術の経験がある方は、受精卵が通り道で引っかかりやすくなります。体外受精などの不妊治療中であっても発生頻度が高くなることが知られています。

さらにこの病気の最大の落とし穴は、「妊娠している自覚(月経の遅れ)」がない無防備な状態で起こることです。ただの生理痛や胃腸炎、あるいは不正出血だと思い込んでいるその裏で、お腹の中では静かに出血へのカウントダウンが進んでいることがあるのです。

重症化する前に、確認すべき3つのサイン

undefined
出典元:photoAC(※画像はイメージです)

ただの生理不順や生理痛と、お腹の中で重大な事態が起きているサインを見分けるために、以下の3つの特徴をご確認ください。

1. 妊娠検査薬が陽性なのに、超音波検査で「子宮内に胎嚢(袋)が見えない」

妊娠の事実があるにもかかわらず、子宮の中に胎児が見えない場合は、直ちに異所性妊娠を疑う最重要サインです。

2. ある瞬間から始まる「突然の激しい下腹部痛と不正出血」

卵管が引き伸ばされて破裂しかけると、通常の生理痛とは明らかに異なる、持続的で鋭い激痛が突発的に生じます。

3.お腹の激痛と前後して起きる「肩や首のあたりの奇妙な痛み(放散痛)」

お腹の中に漏れ出た血液が横隔膜を刺激すると、自律神経を介して、なぜか「肩が重痛い」という放散痛として現れることがあります。

お腹の違和感を感じたら

「少し生理が遅れただけで、お腹の中でこれほど重大な状態になるなんて」と考えるのは無理もありません。

もし一度異所性妊娠を経験して片方の卵管を失ったとしても、もう片方の卵管が健在であれば、あるいは不妊治療の力を借りることで、再び新しい命を授かる道は十分に開かれています。

予防の第一歩として、妊娠の可能性がある場合には、「生理が予定より1週間以上遅れたら、お腹の痛みがなくてもまずはドラッグストアで妊娠検査薬を試してみる」、そんな簡単なことから始めてみましょう。(※なお、強い下腹部痛や大量の出血、めまいなどの症状がある場合は、検査薬を待たず、ただちに産婦人科の受診や救急搬送を行ってください。)

突然の激痛と未来への不安を取り除き、あなたの健康な身体と穏やかな日常をこれからも一緒に守り抜くためにも、ぜひお気軽にお近くの産婦人科へご相談ください。


監修者・執筆:松岡 雄治
総合病院や大学病院、小児専門医療機関での勤務を通じて、幅広い診療科の周術期管理に従事。現在は急性期病院の麻酔科医として最前線の医療に携わっている。専門医としての高度な医学的知見を活かし、医療・健康・美容分野でのコラム執筆や医学論文の解説などを幅広く手掛ける。医療AI技術開発プロジェクトへの参画など多岐にわたる実績を持ち、読者に寄り添った分かりやすい医療解説に定評がある。保有資格は麻酔科専門医、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級など。

の記事をもっとみる

注目コンテンツ