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父の介護費“108万円”を負担してきた50代娘→「一時的に払っているだけ」と思いきや…死後、兄から放たれた“あり得ない一言”

  • 2026.9.18
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。社会保険労務士でファイナンシャルプランナーの小泉です。

家族のためにお金を出したとき、「あとで精算すればいい」「家族なら分かってくれる」と考えてしまうことはありませんか? 親の介護でも、毎月の費用を子どもが負担するケースがあります。

しかし、その負担が積み重なったとき、思わぬ問題に発展することも。今回は、3年間で108万円を負担した長女が、父親の死後に直面した「まさか」の事態を紹介します。

「3年間で108万円も払ったのに…」

82歳の父親が要介護4となり、介護施設を利用することになった50代Aさん(女性)。母親はすでに亡くなっており、家族は兄と弟の3人です。父親の年金などでは毎月の費用をすべて賄えず、Aさんは不足分として月3万円を負担していました。1年間で36万円。3年間では108万円です。

兄と弟には「今月も3万円足りない」と伝えていましたが、2人からは

「お父さんの財産から出せばいいんじゃないか」
「相続するときに考えればいいよ」

と言われていました。

Aさんも、「自分が一時的に払っているだけ」と考えていたのです。

ところが、父親が85歳で亡くなり、遺産分割の話し合いが始まると、兄から思わぬ言葉が出ました。

「その108万円って、お父さんがAに返すことになっていたの?」

Aさんは答えに詰まりました。実は、家族の中で「誰が負担するのか」を明確に決めていなかったのです。

「介護費用を払った=相続財産から返してもらえる」ではない

ここが重要なポイントです。

子どもが親の介護費用を支払ったとしても、その金額が当然に「親の借金」になるわけではありません。たとえば、親が「その3万円は後で返す」と約束し、実際に親が返済義務を負う立替金として扱われていたことを示す事情や証拠があれば、親に対する返還請求権が相続の問題になる可能性があります。

一方で、子どもが親を支えるつもりで負担していたのであれば、事情は異なります。

国税庁も、相続税の計算で遺産から差し引ける債務について、「被相続人が死亡した時点で負っていた債務」で、確実と認められるものとしています。単に子どもが介護費用を支払ったという事実だけでは、相続税の計算上、控除できる「被相続人の債務」にはなりません。

つまり、「介護費用を立て替えたから、相続財産から108万円を当然に返してもらえる」と決めつけることはできないのです。

介護負担は相続で考慮されないのか

ここで関係してくるのが「寄与分」です。相続人の中に、被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした人がいる場合、その貢献を相続分に反映させる仕組みがあります。裁判所も、療養看護などによって被相続人の財産の維持・増加に特別な貢献をした相続人について、寄与分が問題になると説明しています。

ただし、ここも誤解は禁物です。

「長女が一番介護したから、介護にかかった金額をそのまま相続財産からもらえる」という制度ではありません。

親族間で通常期待される程度を超えた「特別の寄与」であることや、財産の維持・増加との関係などが問題になります。単に兄弟より介護した時間が長かったというだけで、当然に寄与分が認められるわけではありません。

「誰がいくら払ったか」を残しておく

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

介護が始まったら、家族で「誰が何を負担するのか」を決めておくことが大切です。

たとえば、父親が82歳のときに、

  • 介護施設費用など月8万円
  • 父親の年金から月5万円
  • 不足する月3万円を長女が負担

という状況になったとします。

この月3万円についても、「長女が負担する」のか、「父親から後で返してもらう」のかによって意味は変わります。もし立替金として扱うのであれば、支払った日、金額、用途、誰のための支出なのかを記録し、可能であれば家族間でも認識を共有しておくことが重要です。

また、介護そのものについても、要介護状態になった時期、介護を行った期間、具体的な内容、仕事を休んだ日数などを記録しておけば、後になって「そんなに介護していたとは知らなかった」という争いを防ぐ材料になります。

なお、相続人ではない親族が無償で療養看護などを行い、一定の要件を満たす場合には「特別寄与料」という別の制度があります。これは相続人の「寄与分」とは別の制度で、請求には期間制限もあります。

親の介護は、「家族だから何とかなる」と考えやすい問題です。しかし、月3万円の負担でも3年間なら108万円。金額が大きくなればなるほど、「あのとき誰が負担すると決めたのか」が重要になります。

介護が始まったときこそ、家族で費用負担のルールを確認し、支払いと介護の記録を残しておく。

それが、親が亡くなった後の「言った、言わない」という兄弟間の争いを避けるための、現実的な備えになるのです。


執筆・監修:小泉@社労士ライター

20年以上の社労士経験を通じて、多くの相談者から「こんな制度があるとは知らなかった」「もっと早く相談しておけばよかった」という声を聞いてきた経験から、専門知識を、必要とする人に、正しく、わかりやすく届けることを大切にしている。社会保険・労働保険、公的年金をはじめ、暮らしや仕事に関わる制度について、専門家としての正確性と、生活者目線のわかりやすさを両立した情報を執筆・発信。保有資格は、社会保険労務士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、宅地建物取引士など。

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