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「相続税対策になる」“毎年110万円”を子どもに渡してきた60代母→後日、税理士に言い渡された“予想外の事実”に戸惑ったワケ

  • 2026.10.4
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。FPで相続や贈与の相談を数多く受けてきた柴田です。「贈与は年110万円までなら税金がかからない」という情報を知っている方も多いでしょう。

しかし、相続や贈与のルールはここ数年で大きく変わり、昔の常識のままでは損をすることがあります。今回は、その知識のアップデート漏れに気づいた60代のAさんのお話です。

毎年110万円ずつ子どもに渡してきた

Aさん(60代女性)は数年前から、2人の子どもにそれぞれ毎年110万円ずつ贈与してきました。

「110万円までなら非課税だから、元気なうちに少しずつ渡しておけば相続税対策になる」。雑誌で読んだ知識を、きっちり実践していたのです。

ある日、ご主人の確定申告を頼んでいる税理士さんとの雑談で、贈与の話になりました。「毎年110万円ずつですか。今からなら、相続時精算課税のほうがいいかもしれませんね」。聞き慣れない言葉に戸惑ったAさんは、私のところへ相談に来られました。

暦年贈与の「持ち戻し」は3年から7年へ

私はまず、Aさんが使ってきた「暦年贈与」のルール変更からお伝えしました。暦年課税には、贈与を受ける人1人につき年110万円の基礎控除があります。ただし、その人が贈与者から相続や遺贈などで財産を取得した場合、亡くなる前の一定期間に受けた贈与は、原則として相続税の計算に加算されます。年110万円以下で贈与税がかからなかった分も対象です(一般に「持ち戻し」と呼ばれます)。

この期間が、税制改正で3年から7年に延びました。2024年1月1日以後の贈与が対象で、延長は段階的に進みます。2026年中の相続まではこれまでどおり3年ですが、2027年以降の相続から少しずつ延び、2031年1月1日以後の相続で完全に7年になります。なお、延長された期間の贈与については、合計100万円までは足し戻さなくてよいことになっています。

つまり、元気なうちにコツコツ渡していても、亡くなる前の数年分は相続税の計算に戻ってくる。「110万円ずつ渡せば、そのぶん確実に相続税が減る」というAさんの前提は、改正で崩れつつあったのです。

相続時精算課税に「年110万円の基礎控除」ができた

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

一方、同じ改正で注目されるようになったのが「相続時精算課税」です。これは原則として、贈与した年の1月1日時点で60歳以上の父母・祖父母などから、同日時点で18歳以上の子や孫などへの贈与について選べる制度です。累計2,500万円までの特別控除があり、その代わり、贈与した財産は原則として相続のときに相続財産へ合算して精算します。

これまでは使い勝手が悪いと言われてきましたが、2024年1月1日以後の贈与から、年110万円の基礎控除ができました。この基礎控除の範囲内の贈与は、贈与税の申告が不要で、贈与者が亡くなったときも相続税の計算に加算されません。

ただし、110万円は贈与を受ける人1人あたりの年間合計です。相続時精算課税を選んだ父母の両方から贈与を受けても、父から110万円、母から110万円と別々に使えるわけではありません。

私が試算すると、Aさんのように高齢になってから毎年の贈与を続けるケースでは、精算課税の110万円枠を使ったほうが相続税の面で有利になる可能性が見えてきました。

精算課税には「戻れない」などの注意点も

ただし、精算課税は万能ではありません。最も大きな注意点は、一度選ぶと、その人からの贈与は暦年贈与に戻せないことです。制度を選ぶ場合は、相続時精算課税を初めて適用する贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに、原則として、贈与を受けた子ども側が「相続時精算課税選択届出書」と必要な添付書類を税務署に提出します。

なお、制度を切り替える前に暦年課税で受けた贈与まで、相続時精算課税に変わるわけではありません。過去の贈与は、引き続き暦年課税の生前贈与加算のルールで確認する必要があります。

また、基礎控除を超えた部分は、相続のときに「贈与したときの価額」で相続財産に加算されます。贈与した後に値下がりしても、贈与時点の高い価額で計算されるわけです。

さらに、自宅の土地をこの制度で贈与すると、相続で取得していれば使えたはずの小規模宅地等の特例が使えなくなります。どちらが有利かは、財産の額や内容、家族構成によって異なります。相続に関連するルールは複雑なので、詳細に知りたい場合は、税理士に試算してもらうことが欠かせません。

まとめ

「年110万円以内なら贈与税がかからない」という知識だけでは、相続税まで含めた有利・不利は判断できません。相続税がかかる見込みがあるかを確認したうえで、贈与する相手や金額、財産の種類に合わせて制度を選ぶことが大切です。

昔覚えた相続の知識は、改正のたびに少しずつ古くなっていきます。Aさんはその後、税理士と一緒に財産を洗い出し、今のルールで贈与の計画を組み直しました。親が元気なうちに、最新のルールで一度点検しておくことが、本当の意味での生前対策です。


参考:
No.4103 相続時精算課税の選択(国税庁)
No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)(国税庁)

執筆・監修:柴田 充輝
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,500記事以上の執筆実績あり。

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