1. トップ
  2. ビジネス・マネー
  3. 「預金1,200万円があるから大丈夫」父の口座から葬儀代200万円を下そうとするが…→後日、50代息子が直面した“想定外の壁”

「預金1,200万円があるから大丈夫」父の口座から葬儀代200万円を下そうとするが…→後日、50代息子が直面した“想定外の壁”

  • 2026.9.19
undefined
出典元:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは、マネーシップス代表 ファイナンシャルプランナー/IFAの石坂です。

親が亡くなると、葬儀代などでまとまったお金が急に必要になることがあります。そんなとき、親の口座に十分な預金があれば「そこから出せばいい」と考えがちです。

ところが、相続が始まったあとの預金は、家族だからといって自由に引き出せるわけではありません。

父の預金1,200万円から葬儀代200万円を出すつもりだった50代男性も、実際に払い戻せる金額を知って驚くことになります。

「父の預金1,200万円があるから大丈夫」葬儀代200万円を出すつもりが…

50代男性のUさんは、70代の父を亡くしました。

父が亡くなったあとは、親族への連絡や葬儀会社との打ち合わせ、役所への届け出などが続き、お金のことまで落ち着いて考える余裕はなかったといいます。

数日後、葬儀会社から見積もりを受け取りました。葬儀費用に飲食代や返礼品などを加えると、必要な金額は約200万円。Uさんにとって、自分の預金からすぐに出すには大きな負担でした。

それでも、Uさんは当初、それほど心配していませんでした。父の銀行口座には、約1,200万円の預金が残っていたからです。

相続人は、母とUさん、妹の3人でした。
「父の葬儀に使うお金ですし、父の預金から払えばいいと思っていました。長男の自分が手続きをすれば、200万円くらいは出せるだろうと考えていたんです」
母も、父の預金から葬儀代を払うことに特に疑問は持っていませんでした。

Uさんからすれば、1,200万円のうち200万円を使うだけです。預金はまだ1,000万円残ります。
「勝手に自分のために使うわけではなく、父の葬儀に必要なお金を払うだけ」
そんな感覚だったといいます。

「150万円までじゃないの?」長男が知った“100万円”の壁

ところが、今後の相続手続きについてFPに相談したところ、Uさんは思っていたのとは違う説明を受けました。

亡くなった人の預貯金は相続財産になるため、遺産分割が終わる前に、相続人の一人が好きな金額を自由に払い戻せるわけではありません。ただし、一定の範囲であれば、遺産分割前でも一人の相続人だけで預金を払い戻せる制度があります。

Uさんは「150万円までなら出せる制度ですよね」と確認しました。
しかし、実際に計算すると、Uさんがこの制度で払い戻せる金額は100万円でした。

「1,200万円もあるのに、この制度だと自分一人で出せるのは100万円なんですか」
Uさんはここで初めて、口座に残っている金額と、この制度を使って自分一人で払い戻せる金額は別だと知りました。

預金1,200万円でも、長男が払い戻せるのは100万円

undefined
出典元:photoAC(※画像はイメージです)

家庭裁判所を通さずに一人の相続人が払い戻せる金額は、原則として次の計算で決まります。

相続が始まった時点の預貯金額(口座ごと)×3分の1×その人の法定相続分

法定相続分とは、民法で定められた相続割合です。この制度では、払戻し額を計算する際にもこの割合を使います。

Uさんの場合、相続人は母と子ども2人なので、母が2分の1、Uさんと妹がそれぞれ4分の1です。

父が亡くなった時点で、一つの口座に1,200万円あったとすると、

1,200万円×3分の1×4分の1=100万円

となります。

つまり、この制度を使う場合、Uさんが一人で払い戻せるのは100万円です。

「150万円まで」でも、全員が150万円出せるわけではない

この制度には、同じ金融機関から一人が払い戻せる金額は150万円まで、という上限があります。ここで注意したいのは、「相続人なら誰でも150万円まで出せる」という意味ではない点です。

先ほどの計算で100万円となれば、払い戻せるのは100万円です。
一方、母の場合は計算上200万円になりますが、この制度を使って同じ金融機関から払い戻せるのは150万円までです。

また、この制度で払い戻したお金は、遺産とは別にもらえるものではありません。遺産の一部を先に受け取ったものとして、その後の遺産分割で考えることになります。

実際に利用する場合は必要書類もあるため、預金のある金融機関に確認が必要です。

「1,200万円ある」より「今いくら使えるか」が重要

相続では、「親がいくら財産を残したか」に目が向きやすくなります。
しかし、相続直後には葬儀代や病院代など、すぐにまとまったお金が必要になることもあります。

今回のUさんも、父には1,200万円の預金がありました。それでも、この制度を使ってUさん一人がすぐに払い戻せるのは100万円でした。

親が元気なうちから、葬儀費用を誰が一時的に負担するのか、どのお金から出すのかまで考えておくと安心です。相続では「いくら残っているか」だけでなく、「必要なときに、誰がいくら使えるのか」まで考えておくことが大切です。


執筆・監修:石坂貴史
証券会社IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー・証券外務員)、マネーシップス代表。累計1,200件以上の相談対応に加え、金融記事の制作・校正・監修の対応を行っています。専門は「金融・経済、不動産、保険、相続、税制」。資産運用やライフプラン設計では、分散投資の考え方と人の心理を踏まえた行動設計をもとにサポートしています。
保有資格:証券外務員一種、2級FP技能士、AFP、NISA取引アドバイザー、日本証券アナリスト協会認定 資産形成コンサルタント、金融リテラシー検定

の記事をもっとみる

注目コンテンツ