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「母に持っていてもらう方が安心」父の遺産“4,000万円”を母に相続させるが→5年後、50代兄妹を待っていた“144万円”の大誤算

  • 2026.9.11
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは、マネーシップス代表 ファイナンシャルプランナー/IFAの石坂です。

相続税には、配偶者の負担を大きく抑える仕組みがあります。そのため、「父の財産は母に多く相続してもらえば安心」と考える人もいるでしょう。

ただし、その後に母が亡くなれば、今度は母から子への相続が発生します。最初の相続だけでは有利に見えても、2回目まで含めると結果が変わる場合があります。

「母に多く残せば安心」と考えた兄妹は、5年後になって思わぬ税負担の可能性を知ることになります。父の相続時には見えにくかった“二度目の相続”の落とし穴を見ていきます。

「母が4,000万円もらえば安心」最初の相続税は兄妹で約4万円

54歳の兄Aさんと51歳の妹Bさんは、5年前に78歳の父を亡くしました。

父が残した正味の遺産は、預貯金や有価証券など約5,000万円。相続人は73歳の母、Aさん、Bさんの3人でした。

話し合いのなかで兄妹が知ったのが、配偶者には相続税を大きく軽減できる仕組みがあることでした。

「母が多く相続すれば税金を抑えられる。それなら、母に持っていてもらう方が安心だよね」

そこで、5,000万円を次のように分けました。

母が4,000万円、Aさんが500万円、Bさんが500万円です。

相続人が3人の場合、相続税の基礎控除は4,800万円です。父の遺産は5,000万円なので、基礎控除を超えるのは200万円でした。

この条件で単純化して計算すると、相続税の総額は20万円。その税額を実際に取得した割合で振り分け、母には配偶者の税額軽減を使います。

結果として、母の納税額は0円。AさんとBさんはそれぞれ約2万円で、家族全体でも約4万円に収まりました。

なお、この事例では、母が配偶者の税額軽減を受けるために相続税の申告が必要です。

兄妹は「母に多く相続してもらって正解だった」と安心していました。

5年後、母の財産は約6,000万円に

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

ところが5年後、状況が変わります。

母は父が亡くなる前から、自分名義の預貯金など約2,500万円を持っていました。そこへ父から相続した4,000万円が加わったため、当初の財産は約6,500万円です。

その後は年金収入などで生活費をまかないながら、必要に応じて預貯金も取り崩していました。5年後に残っていた財産は約6,000万円です。

78歳になった母の今後について兄妹がFPへ相談すると、そこで「二次相続」という話を聞きました。

父から母や子への相続が1回目の「一次相続」。その後、母が亡くなって子どもが財産を相続するのが2回目の「二次相続」です。

母の相続では、相続人はAさんとBさんの2人だけになります。

そのため、基礎控除は1回目の4,800万円から4,200万円へ減ります。

仮に母の財産が約6,000万円残った状態で相続が発生すると、

6,000万円-4,200万円=1,800万円

が課税対象となります。

現在の制度を前提に、兄妹が半分ずつ相続する単純なケースで試算すると、相続税はAさん約90万円、Bさん約90万円。合計約180万円です。

「父のときは2人合わせても約4万円だったのに、このままだと次は約180万円になる可能性があるんですか?」

兄妹はここで初めて、最初の相続だけを見て判断していたことに気づきました。

もし母に4,000万円を集めていなかったら?

違いを分かりやすくするため、別の分け方も考えてみます。

仮に父の5,000万円を、母2,500万円、Aさん1,250万円、Bさん1,250万円と分けていたとします。

この場合、最初の相続税は兄妹合計で約10万円となり、実際の約4万円より6万円ほど増えます。

一方、母の財産はどうなるでしょうか。

もともとの2,500万円に父から受け取った2,500万円を加えると5,000万円です。その後も年金収入などで生活費をまかないながら、一部を取り崩し、5年後の財産が約4,500万円だったとします。

仮にこの状態で相続が発生すると、基礎控除4,200万円を超えるのは300万円です。現在の制度を前提に単純計算すると、兄妹の相続税は合計約30万円となります。

つまり、2回分を合わせると約40万円です。

一方、母に4,000万円を相続してもらったケースでは、1回目が約4万円、2回目が約180万円と試算され、合計は約184万円です。

今回の条件だけで比べれば、その差は約144万円となります。

もちろん、実際には母の生活費や財産の増減、不動産の評価などによって結果は変わります。それでも、「最初の相続税が少ない=家族全体でも得」とは限らないことが分かります。

相続は「今回いくら払うか」だけでは決められない

配偶者には、実際に相続した正味の遺産額が1億6,000万円または法定相続分相当額までであれば、原則として相続税がかからない「配偶者の税額軽減」があります。

ただ、今回の二次相続では母の配偶者である父がすでに亡くなっているため、この軽減は使えません。さらに、相続人が3人から2人に減ることで、基礎控除も小さくなります。

そのため、父の相続だけでなく、母がもともと持っている財産や今後の生活費まで含めて考えることが大切です。

相続では「今回いくら減らせるか」だけでなく、「2回の相続で合計いくらになるか」という視点を持つことが、後からの誤算を防ぐポイントです。


※本文の税額は、制度を分かりやすく説明するため、一定の条件を置いて単純化した概算です。実際の相続税は、不動産の評価、債務、非課税財産、各種特例、財産の増減などによって異なります。また、将来の税額は制度改正によって変わる可能性があります。

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