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「絶対に減らしたくない」“退職金500万円”を個人向け国債に入れるが…→3年後、60代男性を待ち受けていた“29万円”の大誤算

  • 2026.9.3
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは、マネーシップス代表 ファイナンシャルプランナー/IFAの石坂です。

「老後のお金だから、絶対に減らしたくない」

そう考えて、個人向け国債を選ぶ人は少なくありません。満期まで保有すれば額面金額で償還されるため、「元本が減らないなら安心」と思いやすい商品です。

ただし、500万円という数字がそのまま残っていても、物価が上がれば、その500万円で買えるモノやサービスは少なくなります。

今回は、退職後の500万円を個人向け国債に移した60代男性の事例から、「元本が守られること」と「お金の価値が守られること」の違いを見ていきます。

「これで500万円は守れる」と安心していた64歳男性

64歳のFさん(仮名)は、長年勤めた会社を退職し、約1,800万円の退職金を受け取りました。

住宅ローンはすでに完済しており、65歳以降は年金も受け取る予定です。Fさんが考えていたのは、「どう増やすか」ではなく、「どう減らさずに残すか」でした。

Fさんはこれまで本格的な投資をした経験がなく、株式など値動きのある商品には「損をしそうで怖い」という抵抗感がありました。退職後の大切なお金だからこそ、できるだけ値下がりを気にせず持てるものを選びたいと考えていました。

「もう大きく増やす必要はない。老後に使うお金が減らなければいい」

そこで選んだのが個人向け国債です。Fさんは退職金約1,800万円のうち500万円を個人向け国債に移し、残りは普通預金などに置きました。

「国が発行しているし、元本割れもしない。500万円はこれで守れる」

購入後も、Fさんにとってこの500万円は「減らない老後資金」でした。

3年後、同じ暮らしなのに年間18万円の負担増

ところが3年ほど経つと、家計に違和感を覚えるようになります。

以前は夫婦2人の食費や光熱費、日用品などで月18万円ほどだった支出が、19万5,000円前後になる月が増えていました。

月1万5,000円の差でも、年間では18万円です。外食や旅行を増やしたわけでもありません。むしろFさんは支出を抑えようと、安い商品を選び、外食も減らしていました。それでも、預金から出ていくお金は以前より多く感じます。

「ぜいたくしていないのに、なぜこんなに減るんだろう」

不安になったFさんは、老後資金がこの先どれくらい持つのか確認するため、FPへ相談しました。その際、Fさんは個人向け国債について、「500万円は国債にしているので、そこは大丈夫です。元本は減っていません」と話しました。

するとFPから、思いもよらない指摘を受けます。「500万円という数字が残っていることと、500万円の価値が守られていることは別です。物価が上がれば、その500万円で買える量は減っていきます」

Fさんは、一瞬意味が分からなかったといいます。元本は500万円のままです。残高だけを見れば1円も減っていません。

しかし、3年前に500万円で買えたモノと同じ量を買おうとすれば、今はより多くのお金が必要になります。

「元本が減らなければ、老後資金は守れていると思っていました」

Fさんにとって、「元本が減らない=安心」という前提が崩れた瞬間でした。

物価が年2%なら、3年後の500万円は実質「約471万円相当」に

仮に物価が毎年2%ずつ上昇した場合、現在500万円で買えるモノと同じ量を3年後に買うには、単純計算で約531万円が必要です。逆にいえば、3年後の500万円は、現在の価値に換算すると約471万円相当になります。

※物価が毎年2%上昇すると仮定した単純計算で、個人向け国債の利子などは考慮していません。

個人向け国債では利子を受け取れますが、税引後の利率が物価上昇率を下回る状態が続けば、実質的な購買力が下がる可能性があります。

「変動10年なら安心」とも限らない

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個人向け国債の「変動10年」は、半年ごとに適用される利率が見直されます。市場金利が上昇すれば利率も上がる可能性がありますが、物価上昇率に直接連動する商品ではありません。

つまり、物価が2%上がったからといって、利率も自動的に2%になるわけではありません。

なお、個人向け国債は原則として発行から1年経過後に中途換金できます。その際は、直前2回分の各利子相当額に一定割合を掛けた金額が差し引かれます。そのため、「変動金利だから物価高にも対応できる」と思い込むのは注意が必要です。

老後資金は「減らない」だけで決めない

個人向け国債は、値動きを抑えて資金を置きたい場合の選択肢の一つです。

ただし、老後資金では「元本が減るかどうか」だけを見るのは十分ではありません。近いうちに使うお金、数年後に使うお金、さらに先まで使わないお金を分け、それぞれに合った置き場所を考える必要があります。

「500万円が残っているか」だけでなく、「その500万円で将来どれだけ暮らせるのか」。老後資金では、この視点も欠かせません。

※本記事の事例は制度を分かりやすく説明するため、内容を一部調整しています。


執筆・監修:石坂貴史
証券会社IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー・証券外務員)、マネーシップス代表。累計1,200件以上の相談対応に加え、金融記事の制作・校正・監修の対応を行っています。専門は「金融・経済、不動産、保険、相続、税制」。資産運用やライフプラン設計では、分散投資の考え方と人の心理を踏まえた行動設計をもとにサポートしています。
保有資格:証券外務員一種、2級FP技能士、AFP、NISA取引アドバイザー、日本証券アナリスト協会認定 資産形成コンサルタント、金融リテラシー検定

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