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イルカが「貝殻」を使って魚を捕らえる技を撮影

  • 2026.8.13

イルカは、高い知能の持ち主です。

しかし、その賢さは単に人間の指示を理解したり、複雑な鳴き声でやり取りするだけではありません。

野生では、周囲にあるものを巧みに利用して餌を捕るのです。

今回、オーストラリア東海岸で、ミナミハンドウイルカ(Tursiops aduncus)が巨大な貝殻を利用して魚を捕らえる珍しい行動が映像に収められました。

さらに映像には、母イルカが使った貝殻を、その数分後に子イルカが拾い上げ、同じように扱う姿まで記録されていました。

このことから、イルカの「貝殻漁」が母から子へ受け継がれている可能性も浮上しています。

研究の詳細は、豪サンシャインコースト大学(USC)により、2026年8月8日付で学術誌『Marine Mammal Science』に掲載されました。

目次

  • 魚を貝殻に追い込み、そのまま「器」にして食べる
  • シェリングは次世代に継承されている?

魚を貝殻に追い込み、そのまま「器」にして食べる

今回観察されたのは「シェリング(shelling)」と呼ばれる特殊な狩猟行動です。

イルカは小魚を追いかけ、大きな空の巻き貝の殻へ逃げ込ませます。

そして貝殻の口に自分の吻を差し込み、そのまま殻を水面まで持ち上げます。

最後に貝殻を傾けたり振ったりすることで、中の水と一緒に魚を自分の口へ流し込むのです。

今回利用されていたのは、バイラーシェル(Melo amphora)という大型の巻き貝でした。

貝殻は単なる餌ではなく、魚を閉じ込めて口まで運ぶための「道具」として利用されているため、シェリングはイルカの道具使用の一例と考えられています。

実際の映像がこちら。

ただし、どのイルカでも簡単にできるわけではありません。

空の大きな貝殻がどこにあるかを知り、魚をそこへ追い込み、さらに殻をうまく操作する必要があるからです。

これまでシェリングが科学的に報告されていたのは、西オーストラリア州のシャーク湾だけでした。

ところが研究チームは2025年、クイーンズランド州ハービー湾のグレート・サンディ海洋公園で、2回にわたってシェリングを観察しました。

7月6日には「スティーヴィー・ニックス(Stevie Nicks)」と呼ばれる成体メスが貝殻を操作する様子が撮影されました。

さらに調査を進めると、地元の観光船が2013年と2019年にも同じ地域でシェリングらしい場面を撮影していたことが判明しました。

つまり、この行動は最近突然現れたのではなく、少なくとも10年以上前から東海岸のイルカたちの間に存在していた可能性があります。

シェリングは次世代に継承されている?

研究でもっとも興味深かったのは、2025年10月1日に観察された母子の行動です。

「マセラティ(Maserati)」と呼ばれる母イルカが、魚の入ったバイラーシェルを水面まで持ち上げました。

ところが魚が殻から逃げ出したため、母イルカは貝殻を落とし、魚を追いかけていきました。

すると、その数分後です。

子イルカの「ベントレー(Bentley)」が、母親が落とした同じ貝殻を拾い上げ、水面まで持ち上げました。

研究者によると、子どもは母親と同じような方法で貝殻を保持していたといいます。

この場面が重要なのは、シェリングという技術が母から子へ伝えられている可能性を示しているからです。

こうした親世代から子世代への行動の伝達は「垂直的社会伝達(vertical social transmission)」と呼ばれます。

これまでシャーク湾の研究では、シェリングは主に仲間同士の社会的ネットワークを通じて広がる可能性が注目されていました。

今回の観察は、それに加えて母親を見ながら子どもが技術を習得する経路も存在するかもしれないことを示しています。

ただし、ここには注意が必要です。

今回確認されたのは限られた母子の観察例であり、この映像だけで「母親が子どもにシェリングを教えた」と証明されたわけではありません。

子イルカが以前から技術を学んでいた可能性もあれば、単に母親が落とした貝殻に興味を持って操作した可能性もあります。

論文でも「垂直的社会学習の可能性を示す証拠」と慎重に位置づけられており、技術がどのように伝わるのかを明らかにするには、今後さらに多くの母子を長期的に観察する必要があります。

それでも今回の発見は、貝殻を使った狩猟法がシャーク湾だけの特殊な行動ではないことを示しました。

遠く離れた東西のイルカが同じような道具使用を行っていることは、イルカが環境の中から使えるものを見つけ、新しい狩猟法を生み出せる柔軟な知性を持つ可能性を物語っています。

そして、その技がほかのイルカを観察することで受け継がれているのだとすれば、海の中にも人間とは異なる形の「文化」が存在しているのかもしれません。

参考文献

Incredible Footage Shows Dolphins Hunting With Shells Off The East Coast of Australia – And Possibly Passing The Skill on
https://www.sciencealert.com/dolphins-filmed-hunting-with-shells-and-possibly-passing-the-skill-to-their-offspring

Dolphins Filmed Using Sea Shells as Tools in Rare Sighting off Australia
https://www.sci.news/biology/dolphins-shelling-hervey-bay-australia-14988.html

元論文

Observations of Shelling Behavior and Potential Evidence of Vertical Social Learning by Bottlenose Dolphins in the Great Sandy Marine Park, Queensland Australia
https://doi.org/10.1111/mms.70252

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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