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「この前は、ちゃんと挨拶できなくてごめん」と送るまでに、俺は3日かかった

  • 2026.8.12
ハウコレ

信号が変わるまでのわずかな間に、俺は挨拶よりも先に足を動かしていました。感じが悪かったのは百も承知です。それでも、隠したいものがありました。

別れた彼女にもらった紺色の手袋を、俺はまだ通勤の鞄に入れたままにしています。

交差点で目をそらすまで

あの日、駅前の信号待ちで顔を上げると、正面に彼女が立っていました。3年ぶりでした。目が合った瞬間、俺は自分の両手を見ました。つけていたのは、付き合っていたころに彼女がくれた紺色の手袋です。とっさにポケットへ両手を突っ込んで、横の路地へ歩き出していました。そのまま角を曲がるまで、一度も振り返りませんでした。

捨てられなかった手袋

別れを切り出したのは俺のほうでした。残業続きで約束を何度も流し、彼女を駅で待たせてばかりでした。きちんと謝る勇気がなくて、先に関係のほうを終わらせたのです。最後に言えたのは「ごめん、俺が悪いから」だけでした。思い出の品を整理したときも、手袋だけは処分できませんでした。冬になるたびに使って、ほつれた指先を自分で縫って、3年が経ちました。

送るまでにかかった3日間

未練だと言われれば、そのとおりだと思います。ただ、あの逃げ方はさすがに感じが悪すぎました。文面を何度か打ち直して、送ったのは3日後です。「この前は、ちゃんと挨拶できなくてごめん」。返ってきたのは「元気そうでよかった」という短い返信でした。責める言葉がないぶん、あの日の自分の背中が余計に情けなく思えました。

そして...

さらに数日迷って、もう一度だけ送りました。「あの日、君にもらった手袋をつけてた。見られたのが気まずくて逃げた」。既読はついたまま、返信はまだありません。それでも、手袋は今も鞄の中にあります。次に会えたら、今度こそ足を止めるつもりです。

(20代男性・営業職)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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