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思春期に睡眠時間が短いと”脳のつながり方”が変化する

  • 2026.8.11
思春期の睡眠時間が短いと、脳に変化が生じる / Credit:Canva

近年、「短時間睡眠でも活動できるショートスリーパー」という言葉を耳にする機会が増えました。

しかし、生まれつき短い睡眠で十分な人と、本来必要な睡眠時間を削っている人は同じではなく、とりわけ脳が発達途中にある思春期では睡眠不足の影響を軽視できません。

米ミシガン大学(University of Michigan)の研究では、睡眠時間が減った子どもほど、約2年間で「短時間睡眠に特徴的な脳のつながり方」が強まることが確認されました。

研究成果は2025年12月31日付で科学誌『Developmental Cognitive Neuroscience』にオンライン掲載されています。

目次

  • 睡眠が短い子どもの脳にはどんな特徴があるのか
  • 寝不足になると「運動や身体感覚に関わるネットワーク」の結びつきが変わる

睡眠が短い子どもの脳にはどんな特徴があるのか

睡眠不足と聞くと、翌日の眠気や集中力の低下を思い浮かべるかもしれません。

しかし、脳が発達途中にある子どもでは、睡眠時間の違いが脳内の情報のやり取りにも関係している可能性があります。

脳では、離れた場所にある複数の領域がネットワークを作り、互いに連動しながら働いています。

研究では、安静にしているときの脳をfMRIで調べ、各領域の活動がどの程度一緒に変化するかを見ることで、この「脳のつながり方」を測定できます。

これまでにも睡眠時間と脳のつながりとの関連は報告されてきましたが、多くはある一時点だけを比較した研究でした。

そのため、睡眠が短いから脳が変わるのか、それとも、もともとの脳の特徴が睡眠時間に関係しているのかは、よく分かっていませんでした。

そこで研究チームは、米国の大規模な青少年追跡研究「ABCD研究」のデータを利用して、短時間睡眠の影響をもっと詳しく調査することにしました。

まず11〜12歳の2991人について、保護者と本人による睡眠時間の報告に加え、Fitbit(腕時計型の活動量計で睡眠時間や体の動きを記録できるデバイス)による計測も組み合わせ、安静時fMRIから脳全体のつながりを解析しました。

すると、睡眠時間が短いほど現れやすい特徴的な脳ネットワークのパターンが特定されました。

さらに、このパターン作成には使っていない別の1574人について、9〜10歳時点と約2年後の11〜12歳時点を比較。

この縦断分析ではベースラインにFitbitなどのデータがなかったため、睡眠時間の変化には保護者による報告が用いられています。

その結果、2年間で睡眠時間が減った子どもほど、「短時間睡眠に特徴的な脳パターン」が強くなっていました。

では、具体的に脳のどこで、どのような変化がみられたのでしょうか。

より詳しい結果を次項で見ていきます。

寝不足になると「運動や身体感覚に関わるネットワーク」の結びつきが変わる

解析で特に目立ったのが、体の動きや身体感覚に関係する「体性運動ネットワーク(somatomotor network)」です。

睡眠時間が短い子どもでは、このネットワーク内部の結びつきが強い傾向がみられました。

一方、目から入った情報の処理に関わる「視覚ネットワーク」では、内部の結びつきが弱くなっていました。

体性運動ネットワークという名前からは、単に手足を動かすための脳回路を想像するかもしれません。

しかし近年、このネットワークは運動だけでなく、行動を計画し、それを目的に沿った行動へつなげる働きにも関係すると考えられています。

そのため今回の結果は、なぜ睡眠不足が思考や行動に影響するのかを考える手がかりになる可能性があります。

さらに研究チームは、「もともとこのような脳だから睡眠時間が短いだけ」という可能性を検討するため、別の睡眠実験にも目を向けました。

使用したのは、成人76人が通常通り眠った後と、睡眠を3時間に制限した後の両方でfMRIを受けた「Stockholm Sleep Brain Study」のデータです。

子ども2991人から見つけた短時間睡眠の脳パターンをこれら成人に当てはめると、同じ参加者でも通常睡眠後より睡眠制限後の方が、そのパターンが強く現れました。

さらに成人の睡眠不足データだけから作った脳パターンと、子どもの短時間睡眠パターンを比較すると、脳内で変化する場所の分布にも有意な共通性がみられました。

とりわけ両者に共通していたのが、体性運動ネットワーク内部の結びつきが強まることでした。

この結果は、脳の特徴が睡眠時間を左右するだけでなく、睡眠不足そのものが脳のつながり方を変える方向も存在する可能性を支持します。

ただし、子どもたちに対して睡眠不足を実験的に起こして2年間追跡したわけではないため、因果関係が完全に証明されたわけではありません。

また、睡眠時間は日ごとや週ごとにも変動しますが、今回の縦断データではそうした細かな変化を十分に捉えられていないという限界もあります。

それでも、大規模な子どもの追跡データと、成人を実際に睡眠不足にした実験の両方が似た方向を示したことは重要です。

思春期の睡眠時間は、単に翌日の眠気だけでなく、発達途中の脳がどのように情報をやり取りするかにも関係しているようです。

参考文献

Decreased sleep in adolescents is linked to lasting changes in how the brain communicates
https://www.psypost.org/decreased-sleep-in-adolescents-is-linked-to-lasting-changes-in-how-the-brain-communicates/

元論文

Decreased sleep is linked longitudinally and directionally to alterations in the brain’s intrinsic functional architecture
https://doi.org/10.1016/j.dcn.2025.101668

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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