1. トップ
  2. コペンハーゲンのデザインフェス「3daysofdesign」、2026年の注目ブランドをリポート

コペンハーゲンのデザインフェス「3daysofdesign」、2026年の注目ブランドをリポート

  • 2026.8.10
Hearst Owned

デンマークの首都コペンハーゲンで開催されるデザインイベント「3daysofdesign」(通称3days)が、2026年6月10〜12日に開催。13年目となる今年は「Make This Moment Matter」という公式テーマが掲げられ、37の国と地域からブランド・出展者が参加し、展示の数はおよそ570以上に。来場者数は12万5000人と、昨年の6万人の倍以上に増大。大盛況に終わったデザインイベントの中で、北欧の100年以上の歴史ある老舗やニューウェーブ、初の出展で話題を呼んだ日本のブランドを厳選して紹介する。

Index
・Carl Hansen & Søn(カール・ハンセン&サン)
・IITTALA(イッタラ)
・Bang & Olufsen(バング&オルフセン)
・eilersen(アイラーセン)
・Louis Poulsen(ルイスポールセン)
・Audo Copenhagen(オドー・コペンハーゲン)
・&Tradition(アンドトラディション)
・A-POC ABLE ISSEY MIYAKE(エイポック エイブル イッセイ ミヤケ)
・IXC(イクスシー)

Hearst Owned

Carl Hansen & Søn(カール・ハンセン&サン)

ウェグナーのアトリエを思わせる空間で披露

コペンハーゲン中心部にあるフラッグシップストアで企画展「Balanced Principles」を開催。高いものづくりの技によっていかに素材と形、機能を融合させ、時代を越えるデザインを導き出してきたかをインスタレーション形式で披露。ブランドといくつもの名作を世に送り出してきた巨匠ハンス・J・ウェグナーのアトリエをイメージした空間を展開した。

<写真>ウェグナーのアトリエをイメージした展示。上にはメンセンがこの展示のために作成したモビールが下がる。

Hearst Owned

今年の新作は、ファブリシャス・カストホルムが1964年にデザインした湾曲した脚が特徴的な“FK64 シミターチェア”のほか、ナナ&ヨルゲン・ディッツェルの“ND550F フットスツール”、さらに、ベゴニアの花弁を彷彿させる幾何学パターンの連続構造を持つオイヴィン・スロットによる照明“OS111 ベゴニアペンダント”など。

<写真>奥に見えるのが“FK64 シミターチェア”。上から下がるランプが“OS111 ベゴニアペンダント”。

Hearst Owned

ハンス・J.ウェグナーの“CH24P”レザーシート仕様も初めてお披露目され話題を呼んだ。

また、ロンドンを拠点とする櫻井靖幸と佐野梨沙によるデザインユニット、メンセンの協力を得て、家具の製造過程で生まれる端材を再利用して有機的なモビールをつくるワークショップも開催した。

<写真>レザーシート仕様の“CH24P”。

Hearst Owned

IITTALA(イッタラ)

“アアルトベース”が高さ7mのアルミ建築に

フィンランドのライフスタイルブランド「イッタラ」は、アルヴァ・アアルトがデザインした名作“アアルトベース”の誕生90周年を記念し「アアルト 90 パビリオン」を展開した。

コペンハーゲンを拠点とするデザインスタジオ「タブロー」が手掛けた、高さ約7mにおよぶパビリオンが出現。アアルトが1936年にデザインした“アアルトベース”の有機的なシルエットがそのまま立ち上がったようなユニークな建築だ。

Hearst Owned

ノルウェーのアルミニウムメーカー「ハイドロ」との協働により実現したこの構造は、軽量性と強度を兼ね備えると共に、イベント終了後は分解・再組み立てが可能。ガラスの印象が強いイッタラが、アルミニウムという素材のパビリオンを立ち上げた点が新鮮な驚きをもたらした。名作と現代のサステナブルな素材・技術が見事に融合した姿勢が高く評価された。

Hearst Owned

また内部の壁面には、90周年を記念して発表された新作“アアルト シティ ベース”コレクションが展示された。東京、ヘルシンキ、コペンハーゲン、ニューヨークなど、6都市からインスピレーションを得た特別なカラーリングのプロダクトだ。歴史的アイコンを立体的な体験へと拡張したイッタラの試みは、北欧デザインの伝統が進化し続けていることを提示してみせた。

<写真> 90周年のアニバーサリーイヤーのために特別に開発された、虹色にきらめくラスター仕上げ。写真の“Tokyo ベース ”は8月から日本でも発売。

Hearst Owned

Bang & Olufsen(バング&オルフセン)

デンマークと日本のクラフツマンシップが共鳴

2025年に創業100周年を迎えたバング&オルフセンは、3つの展示で構成。オーダーメイドのサウンド環境や先進的な音響技術、建築やインテリアデザインとの関係を探った「アトリエ・エクスペリエンス」、アイコニックな名作を修復し販売する「リラブド・アンド・リクリエイト・クラシックス」、デンマークと日本の職人技に着目した「ジャパニーズ・クラフツマンシップ・コラボレーションズ」だ。

特に注目を集めたのが、日本の優れた伝統工芸と対話する「ジャパニーズ・クラフツマンシップ・コラボレーションズ」だ。


<写真>「ジャパニーズ・クラフツマンシップ・コラボレーションズ」の一角。下段の“ベオラブ 8”のボディには「名尾手すき和紙」が用いられている。

Hearst Owned

会場には、新潟・燕の伝統技術を継承する「玉川堂」の彫金が施された“ベオサウンド 2”や、佐賀の「名尾手すき和紙」の伝統技法「一閑張り」を施した“ベオラボ 8”、サウンドバー“ベオサウンド プレミア”のために製作された「カリモク家具」によるテレビボードなど、職人技が光る逸品が並んだ。

会期中には玉川堂による彫金のライブデモンストレーションも行われ、100年という歴史が培ってきた「バング&オルフセン」の技術と、日本の職人技が響き合った。

<写真>「玉川堂」の彫金が施された“ベオサウンド 2”。花の模様は日本人に馴染み深い菊にも、デンマークの国花のマーガレットにも見える。

Hearst Owned

<写真>ルーを基調とした「バング&オルフセン」の展示空間。歴史ある邸宅が会場になった。

Hearst Owned

eilersen(アイラーセン)

ソファに加えて愛犬のための新作も

1895年に創業、馬車製造から始まり、上質なソファ・ブランドとして知られる「アイラーセン」。フラッグシップストアにてソファを中心に新作を発表。展示を「アイラーセン・ハウス」と名付け、スタイリングでそれぞれのデザインからリアルな居心地の良さを感じさせた。

まず目に留まったのがコンパクトで美しいカーブを持つ“コーン・ソファ”。「アイラーセン」創業家3代目のイエンス・ユール・アイラーセンがデザインしたラウンジチェア“コーン”を発展させたソファだ。背もたれからアームへの特徴的なカーブを引き継ぎつつ、形は小ぶりに仕上げられていてスモールスペースにもフィットする。

<写真>ストアでの“コーン・ソファ”の展示。

Hearst Owned

創業家の4代目、現共同代表でありデザイナーとしても活躍するニルス・ユール・アイラーセンが手掛けた“ビーン・ソファ”は、彫刻的なフォルムが魅力。可動式の背もたれによって、くつろぎ方の自由度が高められている。

Hearst Owned

「アイラーセン」の心地よさを愛犬に、と考えられた“モリー・ドッグ・バスケット”も発表。そのかわいらしさに多くの人がにっこりと目を細めていた。

<写真>“モリー・ドッグ・バスケット”、写真は3つのサイズを重ねている。

Hearst Owned

Louis Poulsen(ルイスポールセン)

“PHコレクション”で革新性を見つめ直す

ポール・ヘニングセンが曲面からなる3枚シェードのグレアフリーランプを開発して、今年でちょうど100年。それを記念し、代名詞でもある“PHコレクション”を中心に据えたプログラムを多様に展開した。

従来よりも小ぶりな、樹脂製の“PH 5 320 オパール”のほか、ステムに4色のバリエーションをそろえたテーブルランプ。そして、100周年の特別モデル“PH センテナリー コレクション”に新たに追加されるペンダント&ウォールランプなどを展示。

<写真>“PH 5 320 オパール”の展示風景。日本では今秋発売予定。

Hearst Owned

屋外スペースには、“PH”の特徴的なシェードからインスピレーションを受け、風に揺らぐ旗が光と影の移ろいを表す大型インスタレーション「Into the Shades」が登場。また、1870年創業の老舗菓子店、ラ・グラスとコラボレーションによるポップアップカフェも中庭に展開し、“PH”を模したスイーツで来場者の舌を喜ばせていた。

Hearst Owned

さらに期間中は、全4回のトークイベントも開催。ポール・ヘニングセンのひ孫で、俳優として活躍するマッズ・ヴィレや、建築家・アーバンデザイナーのヤン・ゲールなどが登壇するなど、盛りだくさんの内容だった。

<写真>ヴァーナー・パントンの生誕100年を記念し、パントンがデザインした“パンテラ”をフィーチャーしたコーナー。

Hearst Owned

Audo Copenhagen(オドー・コペンハーゲン)

ブランドのヘリテージと新作を「ハウス」で体感

2023年に「メニュー」「バイ ラッセン」「オドー」の3社を統合して誕生した家具ブランド、「オドー・コペンハーゲン」。伝統を携えつつ、現代のクリエイターを起用し、静かな独自の世界観の漂うデザインで人気を博している。

展示の舞台は、ブランドの拠点であり、ホテル、レストラン、店、ショールーム、オフィスが一体となった「オドー・ハウス」。

<写真>「オドー・ハウス」のエントランス。

Hearst Owned

建築家フレミング・ラッセンがデザインし1935年に発表された“ザ・タイアード・マン”の90周年展示と、「Quiet Grandeur(静かなる荘厳)」と題した新作の展示が行われた。

<写真>フレミング・ラッセンの“ザ・タイアード・マン”90周年の展示。“ザ・タイアード・マン”はホッキョクグマの赤ちゃんが母クマに抱かれるような心地よさを追求してデザインされた。展示では多彩な張地のものを披露。

Hearst Owned

新作は、ダイニングやリビングなど、シーンごとに展開。ミラノのトラットリアに着想を得てクロイヤー・ゼッター・ラッセンがデザインした “マウロ ダイニングチェア”や、コペンハーゲンのレストラン「Bobe」のためにアトリエ・アクソが手掛けたテーブルを製品化した“パフィンダイニングテーブル”など、親密なムードが漂う家具が穏やかな調和を見せていた。

展示のほかにホテルも公開され、家具やオブジェのスタイリングを熱心にチェックする人々が列を成す場面も。カフェはデザイン巡りのひと休みスポットとしても人気で、「オドー・ハウス」全体が多くの人でにぎわった。

<写真>新作「マウロダイニングチェア」と「パフィンダイニングテーブル」を合わせた展示。


Hearst Owned

&Tradition(アンドトラディション)

柳原照弘と初コラボ、照明“ナンブラ”を発表

2010年にコペンハーゲンで設立された「アンドトラディション」は、北欧デザインの伝統を大切にしつつ、現代のクリエイターによるデザインを融合させている。フラッグシップショールームを舞台に「Traces(痕跡)」と題したインスタレーションを展開。住宅やホテルのような空間で新作を提示した。

注目は、今回初のコラボレーションを果たした柳原照弘の照明シリーズ、“ナンブラ”だ。日本の伝統的な木造建築や、空間を分かつ「線」の概念から着想を得ており、美しいオーク材のフレームが紡ぎ出す幾何学的なシルエットが特徴。細いスリットからこぼれ落ちる繊細な光と影が重なり合い、空間に静寂と奥深い情緒をもたらす。

<写真>ペンダントランプの“ナンブラ TY1”。コレクションにはポータブルランプの“TY3”もある。

Hearst Owned

名作の周年を祝う特別なプロダクトも登場。巨匠ヴァーナー・パントンの生誕100周年を記念した“フラワーポット VP1 アニバーサリーエディション”だ。パントンが愛したポピーレッドやペールブルーといったカラフルな色彩から一転、粗野で重厚な質感を持つピューターカラーの“フラワーポット”。これまでのイメージを覆すインダストリアルな風合いは、名作照明に現代的な解釈をもたらした。

<写真>“フラワーポット VP1 アニバーサリーエディション”。上部のシェード裏面にパントンのサインがレーザー刻印されている。

© ISSEY MIYAKE INC.

A-POC ABLE ISSEY MIYAKE(エイポック エイブル イッセイ ミヤケ)

木や石の質感をモチーフに、ファブリックの照明が進化

スイスのデザインスタジオ、アトリエ・オイと共に、昨年のミラノデザインウィークで照明「TYPE-XIII Atelier Oï Project」を発表した「エイポック エイブル イッセイ ミヤケ」 。熱を加えることで部分的に布を収縮させる技術「Steam Stretch(スチーム・ストレッチ)」を使い、楕円形の細いワイヤーフレームで布を立ち上げることで、環境に合わせてさまざまに可変できるポータブル照明が進化を遂げてコペンハーゲンで初めて披露された。

<写真>木の質感をモチーフにしたシリーズ。インスピレーションの元となった木片が置かれた。

© ISSEY MIYAKE INC.

昨年のミラノで白だったシェードに、コペンハーゲンでは淡いグレーやベージュのカラーバリエーションを追加。同シリーズを単なる照明器具としてではなく、より日常の暮らしに馴染むかたちで、美しい光景と心地よい時間を創造するものに昇華させたいとの思いがあったという。

<写真>石の質感をモチーフとしたシリーズの展示。

© ISSEY MIYAKE INC.

カラースキームのベースとなったのは、自然素材の木や石の表情。点灯するとプリーツのひだの形や凹凸によって陰影がより際立ち、まるで木肌や石目のように目に映る。光を消した時に自然光が透けて見える様子も印象的だった。

Hearst Owned

IXC(イクスシー)

ブランドが掲げる「エモーショナル・ミニマリズム」が静かに響く

コペンハーゲンを拠点とする国際的なデザイン雑誌『アークジャーナル』がキュレーションした展示「デザイン/ダイアログ」の中で発表。ガムフラテージをアートディレクターに迎え、2025年にリブランディングされた「IXC(イクスシー)」のラインアップを海外に向けて初披露した。

Hearst Owned

大きな注目を集めたのは、ヴィコ・マジストレッティが1980年代半ばに構想し、IXCに託されていたデザインが初めて製品化されたアームチェア“オヅ(OZU)”だ。カンチレバー構造のフレームにふわりとブランケットがかけられたようなシンプルな姿はくつろぎのイメージそのもので、座り心地もいい。

そのほか、倉俣史朗、安藤忠雄、デヴィッド・チッパーフィールドなど、個性を放つデザインが、自然光が降り注ぐ下で穏やかな表情を見せていたのが印象的だった。会場である歴史的な木造建築の白い空間が、「IXC」の新しいコンセプト、「エモーショナル・ミニマリズム」の器としてぴたりとはまっていた。

<写真>アームチェア“オヅ(OZU)”。名前はマジストレッティが小津安二郎の映画が好きだったことにちなんでいる。




元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ