1. トップ
  2. 食いしん坊な友と旅をして新潟の奥深さを知る[山路美佐さん今月のおすすめ]

食いしん坊な友と旅をして新潟の奥深さを知る[山路美佐さん今月のおすすめ]

  • 2026.8.9
Hearst Owned

山路美佐さん、森脇慶子さん、門上武司さん、秋山都さん他、食通のジャーナリストや編集者が毎月ひとつのテーマから着想した3軒をまとめてご紹介する小誌連載「ガストロノミーの杜 極私的店案内」。

今回は編集者の山路美佐さんが、新潟の3店をご紹介します。

新潟市内から村上、そして燕三条まで、車で一日旅

食いしん坊は食いしん坊を呼びます。仕事柄、国内外問わず旅をするにつけ、気がつけば食事をともに楽しむ友人が各地に何人もできました。その一人、新潟に住む友人から"最近面白いお店ができたよ"と誘いを受け、急遽1泊2日で行った食旅がとても楽しかったのでご紹介します。

初日には、2025年冬に開業した新潟市本町通の「宇呀(うが)」に向かいました。シェフを務めるのは、居酒屋からイノベーティブ、寿司まで国内外のさまざまな場所で研鑽を積んだ諏佐(すさ)尚紀さん。この店が楽しいのは、新潟出身の諏佐さんの地元愛溢れる眼差しを通して、当地の知られざる文化や風土を感じられることです。

使う食材は、単なる地産のものではなく、"未来につなげたい"と思うものを厳選。例えば、新潟唯一の無農薬蓮根は、その端と"中トロ"と呼ばれる真ん中を食べ比べる仕立てで登場しますが、食感や味がまるで違うことにびっくり。

終盤の米料理も面白い。コシヒカリの祖先にあたる農林1号といった失われつつある品種から始まり、赤米など数種が登場。新潟の米の品種改良の歴史を、食卓で体験できます。

撮影=前川明範

翌日、村上まで車を飛ばして向かったのが、老舗の日本料理店「新多久」。5代目を継ぐ山貝(やまがい)真介さん、亮太さんの兄弟が、地元・村上の旬の食材を生かし、カウンターでもてなします。魚は目の前の村上の海で揚がったものしか使いません。けれど、コースを通してじつに多種の魚が登場し、村上の海が豊かなことが語らずとも伝わります。

締めは新潟駅構内にある「燕三条 酒麺亭 潤」へ。背脂たっぷりのクリアなスープに海苔がのった、燕三条の職人文化が生んだラーメンを。見た目よりしつこくなく、深みのあるスープなのでペロリと食べられてしまいます。

食を中心にする旅は、ただ「おいしい」だけでなく、その土地の歴史や文化を、体ごと五感で知る楽しさに満ち溢れています。いま、ちょっと面白い新潟、ぜひ一度足を運んでみてください。

撮影=前川明範

「宇呀うが」(新潟・本町通)

新潟の魅力を食で発信する"湊町新潟ガストロノミー"

薪火を使った調理が主体。コースの2品目「潮目」は、旬の魚(この日はコウイカ)と薪火が出合うひと皿です。コースを通し、新潟の古きよき食文化や歴史をガストロノミーの視点で現代的に表現します。食材は99%新潟産を使用。残り1%は北前船が遠方の食材を運んだ歴史を背景に県外から仕入れています。

DATA
おまかせコース16,500円。
営業時間/12時~ 18時30分〜(昼は土・日曜のみ)※要予約 予約はこちら
不定休
tel.非公開
Google mapで確認
新潟県新潟市中央区本町通9番町1326

宇呀

写真提供=新多久

「新多久しんたく」(新潟・村上)

地元村上の食材を生かし、一皿ずつこまやかに季節感を伝える

創業は1868(明治元)年。かつては宴会・接待が中心の料亭でしたが、コロナ禍をきっかけに盛り合わせ料理をやめ、出来立ての料理を一品ずつ出すスタイルに。日々変化する食材を生かし、器とともにこまやかに季節感を表現します。調味料まで村上産にこだわり、30キロ先の湧き水「吉祥清水」で炊く土鍋ご飯も滋味深い。

DATA
昼夜共通のコース10,000円~。
営業時間/11時30分~14時30分 17時~21時30分
定休日/火・水曜
tel.0254-53-2107
Google mapで確認
新潟県村上市小町3-38

新多久

写真提供=燕三条 酒麺亭 潤

「燕三条 酒麺亭 潤(しゅめんてい じゅん)」(新潟・燕三条)

燕の職人の味を全国へ。新潟駅で出合う伝統の一杯

工場で働く職人への出前で、冬でも冷めないよう、スープを背脂で覆ったという燕三条のラーメン。多加水の太麺が澄んだスープによく絡みます。岩海苔を合わせた「岩のり中華」はこの店が発祥で、いまや全国に十数店舗を展開し、ドイツにも暖簾を広げる人気店です。新潟駅構内でこの一杯を手軽に味わえます。

DATA
中華そば960円。
営業時間/11時~22時30分(L.O.)
定休日/施設の定休日に準ずる
tel.025-288-6556
Google mapで確認
新潟県新潟市中央区花園1-1-1 CoCoLo新潟EAST SIDE 2F

燕三条 酒麺亭 潤

教えてくださったのは……

山路美佐さん(編集者)
やまじみさ●編集者として婦人誌、ファッション誌に長く携わったのち、グルメ検索サイト「ヒトサラ」副編集長を経て、2021年からフリーランスに。2020年から2拠点生活を開始、食と旅のコンテンツ制作のために日本各地を旅し、365日奔走中。 幅広い食の経験から発せられる情報や解説は信頼が厚い。

文=山路美佐 撮影=前川明範 編集=平田剛三(婦人画報編集部)

『婦人画報』2026年9月号より

〇選りすぐりの記事を毎週お届け。

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ