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民藝と旅が育てた、吉野瞬のランプと器

  • 2026.5.7
SHUN YOSHINO

広島を拠点に世界で活動する陶芸家・吉野瞬。『エル・デコ』のために制作された“灯台ランプ”とマグカップ、カップ&ソーサーは、いずれも日常にやさしい彩りを添えてくれる存在だ。器でありながら空間までを視野に入れて設計されるその仕事には、民藝の思想と、世界を巡る旅から得た感覚が息づいている。

食卓の記憶から始まったものづくり

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吉野の原点には、幼少期の食卓の風景がある。親戚が集まり、大皿の料理を囲んで分け合う時間が日常にあった。「大きな器に料理があって、それをみんなでシェアするのが当たり前でした」。その体験が、器と人の関係性への関心を育てていった。

益子で学んだ、使いやすさという思想

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高校卒業後、益子へ。濱田庄司の流れを汲む「佐久間藤太郎窯」で8年間の修行を積む。

「美大に行くと知識はつくけれど、知恵は現場でしか学べないと思った」。そう語るように、若いうちに現場に身を置くことを選んだ。

そこで徹底して叩き込まれたのが、使いやすさだ。「とにかく使いやすくないと意味がない」と吉野は語る。手に取った時に感じる重さや口当たり、持ったときの感覚。見た目以上に、日常で繰り返し使われることを前提とした設計が求められた。

計算された表現としての釉薬

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吉野の作品を特徴づけるのが、釉薬を幾層にも重ねた表現だ。ストライプや流れるような模様は、すべて試作と検証を繰り返した結果生まれている。

「基本的に偶然はないんです。ほとんど計算してつくっています」。その言葉通り、形や模様はコントロールされたものだ。

一方でデザインについては「頭の中の引き出しから、いろんなものが出てきてこうなる。思想のコラージュみたいなもの」とも語る。計算と直感、その両方が作品の表現を支えている。

旅と人がもたらすインスピレーション

2024年夏に訪れたメキシコ・オアハカ。多くの人との出会いは忘れられない旅の記憶となり、その後の制作にも影響を与えている。 Hearst Owned

インスピレーションの源は、世界を巡る旅と人との出会い。「その国の色や空気、日常の器の形が自然と入ってくる」という。

近年は特に人を通した体験が大きい。「人との会話そのものが、その土地を知るための手がかりになっている」。土地に生きる人の価値観や言葉が、新たな視点として作品に取り込まれていく。

空間から考える、“灯台ランプ”と器

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今回『エル・デコ』限定で用意したコレクションも、器単体ではなく空間から発想されている。「まずテーブルを想像して、そこから空間全体を考えるんです」

象徴的なのが“灯台ランプ”だ。「ダイニングは人生の対話が生まれる場所」。その考えから生まれたのが、帰る場所をやさしく示す目印としての灯りだ。仕事や子育て、日々の出来事が交差する食卓は、過去を語り、未来を思い描く場でもある。そんな時間を静かに照らしながら、人がまたここへ戻ってきたくなるような存在として、灯台のかたちを選んだ。

“灯台ランプ”で吉野が採用した土は透光土。点灯すると内側からやわらかく光がにじみ、強く照らすのではなく、寄り添う光が特徴だ。「空間の温度と、人の心の温度を少しだけ上げてくれるようなものをつくりたかった」と吉野は語る。

マグカップやカップ&ソーサーには、旅の記憶が映し出されている。「同じものはつくらない」と語る通り、すべて一点もの。釉薬の重なりによるリズムある表情が、それぞれの個性を際立たせる。

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つくり続けること、そのものが生き方

「つくることは、食べることと同じなんです」。吉野にとって制作は特別な行為ではなく、生きることそのものだ。

ほぼ毎日手を動かし続けるなかで、「つくっているほうが生き生きする」と語る。旅もまた制作の延長線上にあり、そこから得た感覚が次の作品へとつながっていく。

民藝の思想、旅の記憶、確かな技術。吉野瞬の器は、日常にそっと入り込みながら、ふとした瞬間に心をほどくような高揚感をもたらしてくれる。

「ELLE DECOR限定・吉野瞬のランプと器」
抽選販売の申し込みは5月7日(木)10 時から5月31日(日)17 時まで。

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吉野瞬(よしの・しゅん)
広島生まれ。バーナード・リーチや濱田庄司に影響を受け、高校卒業後に益子の「佐久間藤太郎窯」にて約8年間修行し、独立。民藝の思想を背景に、使いやすさを重視した器づくりを軸としながら、釉薬を幾層にも重ねた独自の表現で注目を集める。現在は広島を拠点に国内外で活動し、各地で個展やプロジェクトを展開。今後はメキシコシティでの滞在制作やソウルでの展示、さらにカリフォルニアや上海での個展を予定。日本国内でもギャラリーやショップでの発表が控えている。

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