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「最後に見られてよかった」上野動物園の東園パンダ舎が解体前に特別公開。8月16日まで延長されたパネル展と共に辿る“半世紀”のパンダ飼育《解体工事の図面あり》

  • 2026.8.8
東園パンダ舎の屋内放飼場(運動場)。左から、ジャイアントパンダのユウユウ、フェイフェイ、トントン、ホァンホァンのパネル。(2026年7月25日、筆者撮影)

「最後に見られて、本当によかった」「思い出がこみ上げてきました」。7月25日(土)、上野動物園で長らく立入禁止だった東園の旧パンダ舎(東園パンダ舎)の特別公開が始まった。猛暑の中を訪れた人々は、懐かしそうに眺めたり、写真や動画を撮ったりしながら、思い思いの時間を過ごしていた。

東園の初代パンダ舎は1973年に完成し、その近くに第2代パンダ舎が1988年に完成した(初代パンダ舎は解体)。第2代パンダ舎の屋外放飼場(運動場)の一部は、初代パンダ舎を受け継いでいる。

第2代パンダ舎の解体開始を筆者が7月18日(土)に報じると(参照:《上野動物園のパンダ舎が間もなく解体》約40年間の歴史に終止符……パンダたちが登った樹木や愛用した遊具はどうなる?)、SNSでは悲しむ声とともに、最後に中に入りたいと願う声が相次いだ。筆者も子どもの頃に初代パンダ舎を福岡から訪れ、第2代パンダ舎には30年以上前から通ってきたので、同じ気持ちだ。7月20日(月・祝)の夕方、東園パンダ舎へ行くと、立入禁止を示す柵の前で、10人ほどが名残惜しそうにたたずんでいた。

翌日の7月21日(火)、上野動物園は東園パンダ舎の解体を発表し、併せて観覧通路の公開とパネル展の開催を発表した。パネル展は、初代パンダ舎から約50年間に及ぶ東園パンダ舎の歩みと、同園のパンダ飼育をふり返る内容だ。

東園パンダ舎の入口。パンダがいた頃は「暑い日も寒い日も行列に並びました」「パンダのレリーフが見えてきたら、もうすぐ会える!とドキドキしました」といった声も。(2026年7月25日、筆者撮影)
「屋内放飼場4」(放飼場の数字は図面と対応、以下同)のパネル。左はランラン、右はカンカン。(2026年7月25日、筆者撮影)
「屋内放飼場4」にいたシャンシャン。(2023年2月19日、筆者撮影)
「屋内放飼場3」のパネル。左からユウユウ、フェイフェイ、トントン、ホァンホァン。(2026年7月25日、筆者撮影)
「屋内放飼場3」にいたシャンシャン。(2023年2月19日、筆者撮影)
「屋内放飼場2’」のパネル。左はリンリン、右はシュアンシュアン。(2026年7月25日、筆者撮影)
「屋内放飼場2」のパネル。左からリーリー、シャンシャン、シンシン。(2026年7月25日、筆者撮影)
「屋内放飼場2」にいたシャンシャン。(2023年1月21日、筆者撮影)
左から「屋内放飼場3」「屋内放飼場4」「屋外放飼場B」。(2026年7月25日、筆者撮影)
長年にわたり使い込まれた扇風機が風を送っている。(2026年7月25日、筆者撮影)

初代パンダ舎が残る場所

公開された東園パンダ舎の見どころの一つは、最後の居住者となったシャンシャンの痕跡。シャンシャンが何度も栓を抜いた水場の前で、当時の光景を思い出しながら、語り合う来園者の姿もあった。

屋外放飼場の地面の一部はレンガ色になっている。これは初代パンダ舎の屋内の床。ちなみに屋外放飼場の水場も「初代パンダ舎のものでは?」との見方も出ているが、上野動物園によると違うそうだ。

「屋外放飼場B」。シャンシャンの前足の跡?(2026年7月25日、筆者撮影)
「屋外放飼場D」。水場やハンモックなどがある。(2026年7月25日、筆者撮影)
「屋外放飼場D」のハンモック。(2026年7月25日、筆者撮影)
「屋外放飼場C」。中央付近の手前に、初代パンダ舎の屋内の床が残っているのが見える。(2026年7月25日、筆者撮影)

ジャイアントパンダの毛はワシントン条約の規制対象

屋外放飼場の土や、解体後のがれきがほしい、といった声もあがっている。これらの無料配布、懸賞、公式グッズの特典としての付与(コロナ禍の2021年、シャンシャンが食べ残した竹の葉などを特典にして、ぬいぐるみが販売された)、クラウドファンディングを実施する予定があるか、上野動物園に尋ねたところ、いずれも予定はないそうだ。

なお、ジャイアントパンダはワシントン条約(CITES)で国際取引の規制対象とされているため、ジャイアントパンダの毛も厳重に管理・処分することになっている。土、樹木、床、遊具などにジャイアントパンダの毛が付いていない場合、この規制はどうなるのだろう。上野動物園に確認すると、ジャイアントパンダの「毛」がワシントン条約の規制対象なので、付いていないなら規制対象外とのことだ。

「屋外放飼場D」。右はパンダ舎の建物。(2026年7月25日、筆者撮影)
高い樹木が残る。左は「屋外放飼場C」、右は「屋外放飼場D」。(2026年7月25日、筆者撮影)

図面に「木製遊具撤去 5基」

筆者は、東園パンダ舎の解体工事(上野動物園正門前広場周辺再整備準備工事)の図面を7月31日(金)に入手した。

「配置図・撤去範囲図」。(東京都「上野動物園正門前広場周辺再整備準備工事」図面より)
「パンダ舎 1階平面図」。観覧者からは見えない「寝小屋」「調理室」などの位置も記載されている。(東京都「上野動物園正門前広場周辺再整備準備工事」図面より)

数十枚の図面のうち、「仮設計画図(参考図)」には、「旧パンダ舎入り口 モザイク装飾壁の記載」がある。これはエントランスにある、石造りの通称「逆立ちパンダ」のこと。図面には「残置の上、本解体工事後 一般観覧を想定」と記されているが、この場所で保存・公開するか、あるいは別の場所とするかは決まっておらず、変更の可能性がある。

「仮設計画図(参考図)」。仮囲いの位置も分かる。(東京都「上野動物園正門前広場周辺再整備準備工事」図面より)

一方で、「外構撤去図1」の「パンダ舎屋外仮設・撤去・移設 一覧表」には、「木製遊具撤去 5基」「サイン(パンダ)撤去」などが記されている。この「木製遊具」は木組みやハンモックのこと。図面には、それぞれの位置が掲載されている。「サイン(パンダ)」は、2010~2011年の改修工事でエントランスに設けられた、タイル製の5頭のパンダのことだ。

「外構撤去図1」には、「移植・撤去樹木一覧表」もある。この樹木のほとんどは、解体工事で使う搬入路を仮設する際に支障となる樹木で、移植または撤去(伐採)の予定。場所は、仮設門の跡地の北側、東京都美術館の近くだ。

パンダがいた屋外放飼場の樹木は、7月18日(土)の記事で伝えたとおり、この解体工事では移植または撤去されない予定だ(東園パンダ舎の跡地に建設予定の動物園ホールの敷地面積は未定)。ただし例外として、「幹周397cm、樹高16.5m」と表に記されているケヤキは、屋外放飼場の非公開エリアにある。都によると、樹木診断で不健全との判定になり、状態が悪いため撤去する予定だ。

「外構撤去図1」。右側に「パンダ舎屋外仮設・撤去・移設 一覧表」「移植・撤去樹木一覧表」がある。左側の図で「撤去」と記された樹木が多い長方形の一帯に、解体工事用の搬入路が仮設される予定だ。その一帯から外れているのは、記号GとHの樹木で、いずれも状態が悪いため撤去される予定。また、図の「サインA 8ヵ所撤去」は、従来からエントランスの辺りにある、パンダについて解説したパネルの撤去を示す。(東京都「上野動物園正門前広場周辺再整備準備工事」図面より)
「Giant Thanks! 東園パンダ舎」。(2026年7月25日、筆者撮影)
東園パンダ舎の出口付近。西園パンダ舎で生まれ育ったシャオシャオとレイレイのパネルが設置されている。(2026年7月25日、筆者撮影)

東園パンダ舎の公開とパネル展の開催は7月25日(土)~8月11日(火・祝)の予定だったが、8月16日(日)まで延長することを上野動物園が7月29日(水)に発表した。8月16日(日)までなら、お盆休みで遠方から来園できる人が増えるかもしれない。しかも最終日はリーリーの誕生日だ。

パネル展の最後に設置されているのは、西園パンダ舎で生まれ育ったシャオシャオとレイレイのパネル。東園パンダ舎で培われた飼育や繁殖の経験と技術が、西園パンダ舎へ着実に引き継がれていることを示唆しているように見える。

解体工事の期間は8月17日(月)~2027年2月の予定。最初は、高さ約3mのフラットパネルによる仮囲いを設置するための試掘や埋設管の有無の調査をして、終わり次第、仮囲いを設置していく予定だ。既報のとおり、上野動物園は、東園パンダ舎を再度確認して、保存できるものがあれば保存することも検討している。パネル展の終了後、都と確認しながら判断したい意向だ。場合によっては、図面で「撤去」となっていても、もしかしたら保存されるものがあるかもしれない。劣化の激しさなどから、たとえ保存ができなくても、東園パンダ舎に思い出がある人にとって、ここは大切な場所であり続けるだろう。

中川 美帆(なかがわ みほ)

パンダジャーナリスト。早稲田大学教育学部卒。毎日新聞出版「週刊エコノミスト」などの記者を経て、ジャイアントパンダに関わる各分野の専門家に取材している。訪れたパンダの飼育地は、日本(4カ所)、中国本土(17カ所)、香港、マカオ、台湾、韓国、インドネシア、シンガポール、マレーシア、タイ、オーストラリア、カナダ(2カ所)、アメリカ(4カ所)、メキシコ、ベルギー、スペイン、オーストリア、ドイツ、フランス、オランダ、イギリス、フィンランド、デンマーク、ロシア。近著に『パンダワールド We love PANDA』(大和書房)がある。
@nakagawamihoo

パンダワールド We love PANDA

定価 1,650円(税込)
大和書房

文・撮影=中川美帆

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