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娘に荷物を断られた私は、なぜ最後の箱を軽くしたのか

  • 2026.8.8
ハウコレ

「余ってるだけだから、気にしないで」そう答えながら、私は娘がまだ小さかった頃の台所を思い出していました。

ガムテープを箱の縁で止めかけて、私は詰めたばかりのレトルトを棚に戻しました。

娘に届ける段ボール

春から1人暮らしを始めた娘に、毎週のように荷物を送っています。缶詰、レトルト、洗剤、タオル。スーパーで安売りを見るたび、娘の顔が浮かんで手が伸びます。昔から心配ばかりの母親でした。遠足の前日には持ち物の確認を繰り返し、進学の時も就職の時も、口を出しては呆れられました。それでも、初めての1人暮らしで娘が困っていないか、確かめる方法が私には荷物しかありません。付箋に「ちゃんと食べてる?」と書き込む時間だけ、離れて暮らす娘の隣にいられる気がしたのです。

電話の向こうの硬い声

電話で娘に言われました。「荷物、もう送らなくていいよ」硬い声でした。重荷になっていたのだと、認めるのが怖くて、「余ってるだけだから、気にしないで」と返し、天気の話に変えてしまいました。通話のあと、次に送るつもりだった箱を寝室へ運びながら、考えていたのは娘を責める言葉ではありません。あの子はもう、自分の生活を自分で選べる。それを一番喜ぶべきなのは、私のはずでした。

小さな口に合わせて変えてきた味

思い出したのは、娘がまだ小さかった頃の台所です。肉じゃが、からあげ、豚汁。子どもの頃からあの子が一番好きだったおかずは、初めから今の味だったわけではありません。にんじんを残せば切り方を変え、味が濃いと言えば甘めに直して、あの子の舌に合うように、昔から何度も作り直してきた味です。だから、きっと娘が気に入ると思うのです。翌週から箱を小さくして、代わりにその作り方をカードへ書き写しました。分量の横に「うちの味。あなた好みに甘め」と添え、最後の1枚に「作れるようになったら、送るのはやめるね」と書いて、封筒の表の「困ったら開けてね」ごと箱の底に貼りました。

そして...

数日後、娘から電話が来ました。「今度、家帰るね」私が料理作れるの見せてあげる、と言うので、思わず笑ってしまいました。荷物を詰めるのはこれで終わりにします。その代わり、帰ってきた娘と台所に並んで、2人で料理を作るつもりです。心配は尽きませんが、想いの渡し方は変えられるのだと、娘に教えてもらいました。

(50代女性・パート)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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