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夫の浮気相手とサレ妻がSNSで仲良くなった!? 「ありえない友情」が日常をゆっくり壊していく、戦慄の不倫サスペンス【書評】

  • 2026.8.4

【漫画】本編を読む

『気がつけば地獄』(岡部えつ:原作、ゆむい:漫画/KADOKAWA)は、夫婦間の冷え込みと不倫、そしてSNSならではの奇妙な人間関係を描いたサスペンスコミックである。

主人公・紗衣は、イタリアンレストランでパートをしながら、ほぼワンオペでひとり息子・拓哉の育児をこなす主婦。夫・祐一との関係は冷え切っていて、日々の彩りは失われていた。そんな生活に少しでも潤いを与えようと、紗衣は夫に内緒で5万円超の高級美顔器を購入する。だが、その荷物は誤ってマンションの別の部屋へ届いてしまう。

しかしその誤配達は祐一の浮気相手・夏希による仕組まれたものだった。紗衣が荷物を取り戻そうと奔走するうちに夏希とSNSでつながり、ふたりは少しずつ距離を縮めていく。妻と浮気相手という本来ならば最悪な関係であるはずのふたりが、正体を明かさぬまま交流を深めていく構図が不穏で目が離せなくなるだろう。

本作が面白いのは単なる不倫暴露劇にならないところである。夫に裏切られた妻、妻の存在を知りながら近づく不倫相手、冷え切った家庭と不倫相手との間を行き来する夫。それぞれの立場が絡み合い、悪者をあぶり出すだけでは片づけられない複雑さがある。特に夏希はただの略奪女として描かれるだけではない。SNSという匿名性のある場所で、紗衣と少しずつ親密になっていく過程には、奇妙な友情めいたものすら漂ってくる。本作はSNS時代ならではの人間関係の恐ろしさまでも描いているのかもしれない。スマホの画面越しで相手の顔も正体も知らないからこそ本音が言える。そのつながりが夫婦関係や家庭を大きく揺るがしていくのだ。

地獄はある日突然始まるわけではなく、いつの間にか地獄に立っていたというタイトル通りの展開に引き込まれていく本作。そして「地獄」と呼ぶにふさわしい衝撃のラストシーンまで、その緩慢にも思える巧妙な罠に読み手も翻弄される作品だ。

文=練馬麟

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