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指名客の予約を動かし続けた私が、定型文を消して本当の理由を書くまで

  • 2026.8.5
ハウコレ

打ちかけの定型文を全部消して、私は初めて本当のことを書きました。

もっと早くこう書くべきだったと、鏡の前の椅子を拭きながら考えます。予約表のその方の名前を、私はまた別の日へ書き写していました。

定型文の裏側

指名をくださるお客様の中に、カラーの失敗を経験してから通い始めてくださった方がいます。初来店の日、前の店で色がまだらに残ったこと、それから鏡を見るのが憂うつだったことを話してくださいました。だから私は、その方の施術は薬剤の塗布から流しまで自分の手で終えると決めていました。

ただ、混み合う日は指名が重なり、途中をアシスタントに任せる決まりが店にはあります。私は理由を書かずに、同じ文面だけを送り続けました。

「その日は混み合いそうなので、別の日にご案内できますか」

言えなかった事情

理由を伏せていたのには、情けない事情もあります。人手が足りないことも、指名を受けきれないことも、店の内側の話です。口にすれば言い訳に聞こえる気がして、当たり障りのない定型文へ逃げていました。返信のお礼が回を追うごとに短くなっていることには、気づいていました。気づいていながら、次も同じ文面を送りました。

届いた一言

その方から短いメッセージが届いたのは、締め作業の途中でした。

「私、来ないほうがいいですか」

予約の変更を頼み続けた結果が、この一言でした。私は定型文を消し、理由を初めてそのまま伝えました。

「カラーの仕上がりまで、私が最後まで担当したいんです。混み合う日は、途中をほかのスタッフに任せることになってしまうので」

初来店の日に伺った話も添えました。送信後、鏡の前の椅子を拭きながら、事情を最初から伝えるべきだったと後悔しました。

そして...

次の来店の日、鏡越しに頭を下げると、理由は先に言ってほしかったと言われました。

「先に理由をお伝えするべきでした。すみません」

守っていたつもりで、この方の不安には手を付けていなかったのです。今は日程の相談をするときに、事情を一言添えるようにしています。それでも店の人手不足をお客様に背負わせている後ろめたさは、まだ消えていません。

(30代男性・美容師)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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