1. トップ
  2. エピソード
  3. 「前は手数料を取られなかったわよね」手続きの途中でレッスンへ急いだ客→受付が静かに示した正論

「前は手数料を取られなかったわよね」手続きの途中でレッスンへ急いだ客→受付が静かに示した正論

  • 2026.8.4

夕方の受付カウンター

会員制のジムで受付をしています。

平日の夕方は、一日でいちばん人が動く時間帯です。

四十代くらいの女性が、入会の手続きに来られました。

「前もここ、使ってたのよ。書くところだけ教えて」

「ありがとうございます。ご住所とお名前をお願いします」

記入はすぐに終わり、次は料金のご案内です。

月会費、ロッカー代、それから入会時の手数料。

「入会手数料として、3300円を頂戴しております」

ペン先が、用紙の上で止まりました。

「前は手数料を取られなかったわよね」

数年前まで、手数料をいただかない期間があったのは事実です。その後の改定で、いまはどなたにも同じご案内をしています。

「現在は、ご入会の方全員に同じ金額でご案内しております」

「そんなのおかしいでしょ」

「ご意見として、必ずお伝えいたします」

レッスンまであと十分

壁の時計は六時二十分。彼女が出たいレッスンの開始まで、あと十分です。

「もういいから、早く。レッスン行きたいの、時間ないんですけど」

「規約のご確認とご署名が、まだ残っております」

「後で書くって言ってるでしょ」

用紙を押し返し、彼女はスタジオのほうへ体を向けます。ロッカーの鍵も会員証も、まだお渡ししていません。

「恐れ入ります。手続きを最後まで済ませないと、ご利用いただけません」

声は張りません。張る必要もありませんでした。

押し返された用紙

彼女の足が、スタジオの手前で止まります。

「……は?私、もう会員でしょ」

「ご署名をいただいて、会員証をお渡ししてからになります」

言いかけた言葉を、彼女は一度飲み込みました。

時計とスタジオの扉を交互に見て、それから受付の列へ目をやります。後ろには、会員証を手にした方が三人。

彼女の視線が、カウンターの木目に落ちました。戻ってくる足音は、来たときよりずっと静かです。

「……どこに書けばいいの」

「こちらとこちらに、お願いいたします」

署名は五分もかかりません。レッスンには間に合いませんでしたが、彼女はスタジオの前で中の様子を見ています。

「来週から、出ます」

「お待ちしております」

会員証を財布にしまうとき、彼女は小さく頭を下げました。3300円の領収書も、同じ場所へ入っていきます。

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、30代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ