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「玄関のポストを、勝手に開けるな」距離感が近すぎる友人。親切心を装った友人にぶつけた正論

  • 2026.8.3

なぜ知っているのか

その友人は、いつも私の予定を先に知っていた。週末に日帰りで出かける話も、平日に帰りが遅くなる日も、こちらが口に出す前から、なぜか当ててくるのだ。

飲みに誘えば「その日は病院だろう」と、行く前から言い当てられたこともある。

「なんで知ってるの」

訊いても、まともな答えはなかった。にやにやと笑って、そのまま話をそらしてしまう。

気味は悪かった。それでも長い付き合いだったから、悪いやつではないと思い込もうとしていた。予定くらい、どこかで小耳に挟んだのだろうと、無理に納得していたのだ。

ポストの前の人影

ある晩、仕事が急に早く終わって、いつもと違う時間にアパートへ帰った。ふだんなら、まだ職場にいるはずの時刻だった。

建物の入口で、郵便ポストの前に人影があった。私の部屋の段に手を入れて、中の封筒を一枚ずつ確かめている。

「あのー」

声をかけると、振り返ったのはあの友人だった。逃げも隠れもせず、私の郵便物を手にしたまま、平然と口を開いた。

「これ、そろそろ締切だから払ったほうがいいよ」

親切のつもり、という顔だった。人の家のポストを勝手に開けている、その自覚が、表情にはまるでない。

予定を知っていた理由が、ここで一本につながった。郵便が届く前提の話も、私の帰りの時間も、この人はずっとここで見ていたのだ。

線を引いた夜

「玄関のポストを、勝手に開けるな」

できるだけ静かに、それでもはっきりと言った。

声を荒げれば、かえってこの人の理屈に巻き込まれる気がしたからだ。

友人は封筒を段に戻し、それでもまだ笑っていた。

「べつに、悪気はないよ」

その一言で、私は決めた。悪気がないと本人が本気で信じているぶん、この相手には何を言っても話が通じない。

翌週、私はその部屋を引き払った。更新も待たず、電話番号も変えた。長々と理由を説明する気は、はじめからなかった。

迷いはなかった。むしろ、引っ越すと決めた瞬間に、肩がすっと軽くなったのを覚えている。

新しい部屋では、玄関の鍵を開けても、振り返らなくなった。ポストの中身を誰かに先回りされることも、もうない。

あの人が今どうしているかは知らない。知りたいとも思わない。自分の生活の線は、自分で引く。ただ、それだけのことだった。

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、40代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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