1. トップ
  2. エピソード
  3. 「別にこれくらいいいだろ!」運動会で学校の備品に立って観覧していた夫婦→注意されたあとに見せた顔

「別にこれくらいいいだろ!」運動会で学校の備品に立って観覧していた夫婦→注意されたあとに見せた顔

  • 2026.8.3

後ろで金属の音がした

中学校の運動会の日でした。グラウンドの端に、保護者の観覧場所がロープで区切られています。競技は午前の後半、学年種目が始まるところでした。

私は前から三列目あたりに立っていました。背の高い人が多く、つま先立ちの人もいます。

それでも、ロープの内側には入らないという線だけは、全員が守っていました。

後ろで金属のこすれる音がしたのは、その時です。振り返ると、夫婦らしい二人がたたんだパイプ椅子を運んできたところでした。

校舎の壁ぎわに立てかけてあった、学校の備品です。

ご主人が椅子を開いて、そのまま座面に足をかけました。奥さんが下から背もたれを押さえています。

「見える見える。こっちのほうがずっといい」

周りの何人かが振り返りました。私も見上げる形になって、目のやり場に困ります。

先生は声を上げなかった

係の先生が小走りで来ました。

走ってきたわりに、声はとても静かです。

「そちらの椅子は、上に立たれると危ないので、降りていただけますか」

「別にこれくらいいいだろ!」

ご主人は下りません。先生は言い返さず、もう一度、順番を入れ替えて同じことを頼みます。

「座っていただくのは構いません。立たれると危ないので、そこだけ」

「こんなところに椅子を置いておくほうが悪いだろう」

奥さんも下から声を足しました。

「ほんと、むかつくわ。せっかく来てるのに」

自分から壁ぎわへ

そのあと、誰も何も言いませんでした。前にいた人たちが少しずつ振り返って、そのまま黙っています。放送だけが流れていました。

ご主人の声が止まりました。何か言いかけて、口を閉じます。奥さんが袖を引きましたが、その手も途中で下りました。

ご主人は座面から足を下ろすと、椅子をたたみました。金属の音が、来たときよりずっと小さく鳴ります。二人は誰とも目を合わせないまま、校舎の壁ぎわまで椅子を戻しに行きました。

「ありがとうございます。助かります」

先生は椅子のほうへ小走りで行き、そう言って頭を下げました。それだけで、あとは何も言いません。

戻ってきた二人は、観覧場所のいちばん後ろに立ちました。私の前にいた人が半歩ずれて、隙間を作ります。

「前、空きますよ」

ご主人はそちらへは行きませんでした。かわりに、聞き取れるかどうかの声でひとこと言いました。

「……すみません」

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ