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「細いねえ、ちゃんと食べてるの」初めて妻の実家へ挨拶。待っていた義両親の対応に心温まった瞬間

  • 2026.8.2

押す前に開いたドア

結婚が決まって、初めて妻の実家へ挨拶に行った日のことです。駅から乗ったタクシーの中で、手土産の紙袋を三回持ち直しました。

坂の途中の一軒家で、表札の下に朝顔の鉢が並んでいます。インターホンに指を伸ばした、そのときでした。

内側から、勢いよくドアが開きました。

「玄関開けたよ、ようこそ来たね」

近所まで届きそうな声でした。妻の母が、サンダルを履くのももどかしそうに三和土へ降りてきます。

「はじめまして。本日はお時間をいただき…」

電車の中で三十回は繰り返した挨拶が、そこで止まりました。腕を取られたからです。

廊下を引かれていく

「細いねえ、ちゃんと食べてるの」

そう言って、私の腕を軽く叩きます。昔から知っている相手にするような手つきでした。初対面のはずです。

「い、いえ、こちらこそ、その」

靴を脱ぎきらないうちに、そのまま廊下を引かれていきました。後ろで妻が笑っています。

「言ったでしょう。うちの母、こういう人だから」

手土産を渡す間もなく居間に通されて、座布団の上に座らされます。用意してきた言葉も、順番も、全部どこかへ行ってしまいました。それなのに、肩から力が抜けていくのが自分でも分かります。

「まあまあ、まずは麦茶」

グラスが目の前に置かれた頃には、緊張はほとんど残っていませんでした。

台所から出てきた人

顔を上げて、今度は別の意味で言葉が出ませんでした。居間のテーブルに、鉢と皿がすき間なく並んでいます。里芋の煮っころがし、甘くない卵焼き、鶏の唐揚げ。どれも、私が好きだと話した覚えのあるものばかりでした。

台所から、エプロン姿の妻の父が味噌汁の椀を運んできます。

「好きだと聞いたもんだけ、並べといた」

それだけ言って、目も合わせずに椀を置きました。耳のあたりが少し赤くなっています。

「三日前から、この人ずっとそわそわしてたのよ」

「よけいなことを言うな」

妻がこらえきれずに吹き出しました。私は箸を持ったまま、しばらく何も言えませんでした。

帰り際、玄関先で妻の父が見送りに出てきて、鍋の残りを詰めた容器を紙袋ごと押しつけてきます。

「次は、何が食いたいか先に言いなさい」

坂を下りながら、紙袋の重みが手のひらに食い込んでいました。

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、30代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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