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「ゴミ箱がないから置いとくんだよ」車両内でゴミを置いたままの乗客。だが、車掌の対応に思わず絶句

  • 2026.8.2

朝の車内に響いた声

二年前の朝、いつもの通勤電車でのことです。

ドアが閉まってすぐ、車両の真ん中あたりから大きな声が聞こえてきました。周りの人が一斉にそちらを見ます。

「あ?今どこって、電車だよ」

座席に浅く腰かけた男性が、スマートフォンをスピーカーにして話しています。

「うるさい?知るか、そっちが聞こえないんだろ」

声は車両の端まで届いていました。近くに立っていた学生が、そっとイヤホンを押さえます。

男性は通路に長く足を投げ出したまま、コンビニの袋を膝の上で広げました。

おにぎりの包みを開け、食べ終わると、その袋を足元の床にそのまま置いたのです。

「あの、それ…」

誰かが言いかけて、やめました。私も同じでした。

男性の周りだけ、人が半歩ずつ離れていきます。

次の駅で車両を変えようかと、吊り革を握り直したときでした。

通路を歩いてきた車掌

連結部の扉が開いて、車掌が巡回に入ってきました。

投げ出された足をまたぐこともなく、その手前で静かに立ち止まります。

視線が、床の袋に落ちました。

先に口を開いたのは、男性のほうでした。

「ゴミ箱がないから置いとくんだよ」

通話をしたまま、顎で袋を指します。

周りの空気が固まったのが分かりました。

近くの人が、そろって目を伏せます。

けれど車掌は、責める顔をひとつも見せません。

制服のポケットから小さなゴミ袋を取り出して、そっと差し出したのです。

「よろしければ、こちらへ入れてお持ちください。降り口にゴミ箱がございます」

穏やかな声でした。言い聞かせることも、声を張ることもありません。

自分から伸びた手

男性は、差し出された袋をしばらく見ていました。

「…いや、それは」

言いかけて、口を閉じます。

車掌はただ、袋を持った手をそのままにしていました。急かす言葉はひとつもありません。

男性は通話を切って、スマートフォンをポケットに押し込みました。

投げ出していた足を引き、体を起こします。

そして、床の袋を自分の手で拾い上げたのです。

差し出されたゴミ袋に、おにぎりの包みが押し込まれました。

「ありがとうございます」

車掌はそれだけ言うと、軽く頭を下げて次の車両へ歩いていきました。

車内のあちこちで、小さく息をつく音がしました。

男性はもう電話をかけ直しません。足も、座席の下にきちんと揃えたままでした。

私は次の駅で、車両を変えずに済んだのです。

降りるとき、その人はゴミ袋を手に提げて立ち上がり、ホームのゴミ箱へまっすぐ歩いていきました。

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、50代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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