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1週間で配信の再生数、民放“歴代最高”記録…!『Tシャツが乾くまで』脚本家デビュー作、4年前“熱狂を生んだ”木曜ドラマ

  • 2026.8.25
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川口春奈(C)SANKEI

TBS系 金曜ドラマ『Tシャツが乾くまで』で大きな注目を集める脚本家・生方美久。デビュー作から一貫して人の心の細部を掘り続けてきた書き手であり、いま最も期待されるテレビドラマの脚本家と言っていいだろう。

そんな彼女の連続ドラマデビュー作が、フジテレビ系木曜劇場『silent』だ。目黒蓮の代表作としても知られている本作は、2022年の放送時、第4話の見逃し配信がTVerで688万再生(放送後1週間)という民放歴代最高記録を打ち出し、聖地巡礼が起きるほどの熱狂を生んだ。一作目から非凡なセンスを魅せていた彼女がどんな物語を紡いだのか、振り返ってみたい。

※以下本文には放送内容が含まれます。

「好きな人がいる」という言葉のすれ違い

主人公の青羽紬(川口春奈)は、高校時代に佐倉想(目黒蓮)と恋人同士だった。しかし遠距離になった8年前、想から「好きな人がいる、別れたい」と、理由も告げられずメッセージだけで別れることになってしまう。想に対するわだかまりを抱えたまま、紬は高校時代の同級生だった恋人・戸川湊斗(鈴鹿央士)との同棲を決めた矢先、駅で想を見かける。再会した想は、若年発症型両側性感音難聴によって、もう紬の声を聞くことができなくなっていた。想が何も告げずに紬と別れたのは、自分では紬を幸せにできないと思ってしまったことが原因だった。

本作が描くのは、伝えることの難しさだ。健聴者と聴覚障碍者のコミュニケーションは確かに難しい。しかし、本作では聞こえる者同士でもすれ違うことが多々あることを描いてもいる。本質的に“伝える”とはどういうことかを深く掘り下げようと試みている作品だ。

象徴的なのが想が告げる「好きな人がいる」という言葉だ。紬は当然、新しい好きな人が“できた”と受け取った。だが想の本意は、紬という好きな人が“いる”から、その人のために別れたい、だった。言葉は気持ちを伝えるための手段なのに、すれ違いを生んでしまう。紬と湊斗の関係も、言葉を伝えられる者同士なのにすれ違いが生じていく。それは手話で会話する想と桃野奈々(夏帆)にも同様のことが言えるだろう。

それでも、だれかと言葉を交わしたい、障がいがあっても姿勢次第で乗り越えることができることを本作は描いてもいる。音声認識アプリ『UDトーク』が会話の道具として登場するのも印象的だ。開発者の青木秀仁氏は、これは聴覚障がい者だけが使うアプリではなく「話し手が相手に伝えたいことを伝えるアプリ」だと語っている(※1)。少しの工夫でコミュニケーションの壁を乗り越えられるということを本作は物語の中で自然に描いているのも特徴的だ。

目黒蓮が“声を封じて”見せたもの

本作で大きく注目されたのは、目黒蓮の芝居だ。想は、家族の前以外ではほとんど発話しないため、声のトーンや話し方で感情を表現することが封じられる役柄だ。しかし目黒蓮は、困ったように小首をかしげる仕草、微笑むと弧を描く目といった仕草が憎めないのだが、そうした細かい仕草に彼の人柄がにじみ出ているのがいい。当然、手話を使った芝居にも挑んでいる。中途失聴のため、手話が母語ではなく、数年前から覚え始めた人物のリアリティをきちんと体現していた。

さらに本作は、聴覚障がいのあるキャストも起用し、手話の質にこだわった作品としても評価された。YouTube『みゆみゆチャンネル』を運営する聴覚障がいのある夫・ととさんと聴者の妻・ゆうこさんは、インタビューにて、ととさんは中学生の頃に観た手話が登場するドラマを「“いますぐ覚えたて”のような手話だった」と振り返り『silent』については「とても頑張っていて、きちんと言語としての手話になっていました」と語る(※2)。

一方でゆうこさんは、「ドラマの中の健常者がみなさん優し過ぎて、そこにちょっと違和感がありました」とも述べている。実際には冷たい人もいるし、離れていく人も多いのではないか、と。とはいえ、その善人たちの優しい世界を描いたのも、本作が支持された理由の一つだろう。

スピッツの楽曲が繋いだ、音楽と言葉

本作には、紬と想を繋ぐものとしてスピッツの曲が使用されている。スピッツと生方美久といえば、最新作『Tシャツが乾くまで』では主題歌を担当している。生方美久とスピッツはなにかと縁がある。

実際、生方はスピッツファンだと公言しており、SNS企画「みんな、スピッツを待っていた」にもコメントを寄せている。

本作は声と同じく音楽も重要な要素だ。想にとって、音楽は失われたものの象徴だ。紬がバイトしているのがレコード・CDショップチェーンのタワーレコードであるのも、2人にとって音楽が重要なものだから。繋がりの象徴であり、同時に喪失の象徴でもある音楽も注目すべきポイントだ。

ただの再会ラブストーリーではない

本作は一貫して、言葉の大切さと分かり合うための努力の重要さを描いているといえる。いわゆる“難病者”ではなく、よくある三角関係でもなく、再会ものでもない奥深さを持った作品になっているのは、脚本が“言葉”という主題から一歩も逃げなかったからだ。『Tシャツが乾くまで』で生方美久に出会った人にこそ、その原点である本作を観てほしい。


※1 出典:『ドラマ「silen」に登場した「UDトーク」はただの音声認識アプリではない? スマホから広がるコミュニケーションの選択肢』(RealSound)
※2 出典:『「耳が聞こえない夫」と「聞こえる妻」の夫婦YouTuberが感じた『silent』への"共感と違和感" 「実際には割と冷たい人もいる」』(RealSound)

出典:木曜劇場『silent』フジテレビ公式サイト

ライター:杉本穂高
映画ライター。実写とアニメーションを横断する映画批評『映像表現革命時代の映画論』著者。様々なウェブ媒体で、映画とアニメーションについて取材・執筆を行う。X(旧Twitter):@Hotakasugi

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