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あえて王道から外れた“巧妙”な構造「とんでもない」「斬新すぎる」ただのギャグじゃなかった楽曲の仕掛け【火曜ドラマ】

  • 2026.8.22
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火曜ドラマ『君の好きは無敵』第5話より(C)TBS

松本若菜主演ドラマ『君の好きは無敵』で、思わぬ伏線回収が話題を呼んでいる。草壁杏奈(松本)への胸の痛みを肋間神経痛だと思い込んだ瀬尾深月(佐野勇斗)。そんな彼が恋心を自覚するきっかけとなったのは、なんと杏奈の元恋人・小板橋麦(金田哲)が熱唱した筋肉アイドルの楽曲だった。SNS上でも「とんでもない伏線回収」「斬新すぎる」と驚きの声が。笑いのための小ネタに見えた一言が“恋”へ変わるまでの、鮮やかな仕掛けを振り返る。

※以下本文には放送内容が含まれます。

キーワードは「肋間神経痛」?

敏腕コンサルタントの杏奈と、キャラクターデザイナーの深月。キャラクターに対する“かわいい”の感覚を自覚したばかりの杏奈と、恋愛感情に疎い深月のコンビはまさにデコボコだ。

物事を論理的に分析することに長けている杏奈だが、自分自身が抱く“かわいい”や“好き”の感情については掴みきれない。一方の深月は、“かわいい”への情熱なら誰にも負けない猪突猛進っぷり。それなのに、自分の内側に芽生えた恋愛感情となると、途端に鈍感になってしまうのが興味深い。

杏奈との距離が近づくにつれて、深月は胸の痛みを感じるようになっていた。ラブコメのお約束に当てはめれば、その正体は明白。杏奈を見るとなぜか胸が痛む。それは恋心以外にない。

ところが深月は、その痛みを杏奈に対する恋心の芽生えだとは考えない。洋食店の店主・迫田(髙嶋政伸)から「肋間神経痛」と言われると、深く考えることもなく納得してしまう。

ロマンチックなはずの恋の兆候を、まさかの診断名で処理する。この解釈のズレこそ深月らしく、視聴者にとっても思わずツッコミを入れたくなるコミカルな展開だった。

そして巧妙なのは、この時点では肋間神経痛が、深月の鈍感さを表現するための小ネタにしか見えなかったことだ。まさか、深月が恋心を自覚するための伏線だったとは。

斬新すぎる伏線回収となった歌唱シーン

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火曜ドラマ『君の好きは無敵』第5話より(C)TBS

その伏線を回収することになったのが、杏奈の元恋人・麦だった。

麦に好きな人ができたことが示され、さらに菅井友香演じる謎の前髪金髪美女が現れたことで、もうすでに新しい関係性が出来上がっているのでは……と予想されていた。しかし、それは鮮やかに裏切られる。

麦が好きになった相手とは、武田真治と杉浦太陽が演じる筋肉アイドル・アーノルド&シルベスターだったのだ。そして謎の美女の正体も、二人のマネージャー・芽瑠だったことがわかる。

麦は彼らと出会った瞬間、その筋肉に心を奪われた。いてもたってもいられず芽瑠のもとを訪ね、ついには弟子入り。弁護士まで辞めてしまうほど、新たに見つけた“好き”へ一直線に突き進んでいたのである。

なかなかにぶっ飛んだ展開ではある。しかし、そんな麦を杏奈は否定しない。自分の“好き”に正直になり、新しい夢を見つけた元恋人を素直に応援する。

そして麦は「一曲聴いてください」と、アーノルド&シルベスターの楽曲『マッスルラバーズ』を歌い始める。その歌が、もう一つの“好き”を目覚めさせることになる。

雷に打たれたようなときめきも、胸に走る痛みも、別の何かではなく恋なのだ……そんな内容が歌われていくなか、深月にとって決定打となったのが「肋間神経痛なんかじゃない、恋さ」という歌詞だった。

ここで、以前の胸の痛みが一気につながる。自分が感じていたものは肋間神経痛ではない。杏奈への恋心だったのだ。まさか、麦の歌唱が深月の恋心の自覚を促すとは。

しかも麦は杏奈の元恋人だ。本来なら恋のライバルにもなり得る男が、筋肉アイドルに夢中になり、その歌を熱唱した結果、深月に“杏奈が好きだ”と気づかせる。これほど回りくどく、それでいて鮮やかな恋の自覚シーンも珍しい。

あえて王道から外れる強さ

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火曜ドラマ『君の好きは無敵』第5話より(C)TBS

一般的なラブコメなら、深月が杏奈の笑顔を見つめたり、ほかの男性に嫉妬したりすることで恋心に気づいても不思議ではない。しかし本作は、そんな王道を選ばなかった。

筋肉アイドルに人生を変えられた元カレが、そのアイドルの曲を熱唱し、それを聞いた男が自分の恋に気づく。文字にするとさらにシュールなのだが、ここまで積み上げてきた物語のなかでは、不思議なほど一本の線につながっている。

麦は、アーノルド&シルベスターと出会った瞬間、自分の“好き”を信じて走り出した。安定した弁護士という仕事さえ手放すほど、その感情に正直だった。そんな麦の姿を杏奈は応援し、その麦が歌った曲によって、今度は深月が自分の“好き”に気づく。

“好き”の気持ちが人から人へ伝播していくような構造になっているのだ。

思えば『君の好きは無敵』では、さまざまな“好き”の形が描かれてきた。深月が“かわいい”を愛することも、誰かがキャラクターを推すことも、麦が筋肉アイドルに人生を懸けることも、深月が杏奈に恋をすることも、その根っこにある感情は同じである。

“好き”の気持ちに優劣はない。心が動いたのなら、それはその人にとって紛れもない本物なのだ。

深月はもう、胸が痛む理由を病気のせいにはできない。その痛みが恋だと知ってしまった彼は、杏奈を好きな気持ちとどう向き合っていくのか。物語はいよいよ、もう一段甘酸っぱい場所へ踏み込んでいきそうだ。


出典:@TVer_official TVer公式X
TBS系 火曜ドラマ『君の好きは無敵』毎週火曜よる10時〜

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X:@yuu_uu_

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